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スタローン、衝撃の“ランボー・タイプライター”の背後にあるビリー・ワイルダーとの意外なつながり

シルヴェスター・スタローンのInstagramより
シルヴェスター・スタローンのInstagramより

 2024年4月6日、シルヴェスター・スタローンがInstagramにとある動画を投稿した。相変わらずのガッシリとした体と、波乱に富んだ人生を歩んできた男特有の温かい笑顔で、スタさんは語り始める。「かつて素晴らしい映画監督がいた。名前はビリー・ワイルダー」。

 ビリー・ワイルダーと言えば、『七年目の浮気』(1955年)、『お熱いのがお好き』(1959年)などを監督し、今なお多くの映画ファンに愛される名匠である。動画の中のスタさんは『ランボー』(1982年~)シリーズのフィギュアが陳列された棚を背にして、話を続ける。「ワイルダーは天才だ。そして彼は、俺にタイプライターを作ってくれたんだ」……スタさんとワイルダー?……その意外な接点に驚くが、しかし2人には共通の過去がある。脚本家としてキャリアをスタートさせ、泥水をすする日々を経験していたのだ。

 ワイルダーとて、初めから巨匠だったわけではない。若き日に脚本家を志して仕事を始めるが、当初はまったく稼げず、ホームレスに近い暮らしをしていたという。それでも小規模な作品に参加しながら、徐々にキャリアを積んでいったが……時は第二次世界大戦。ユダヤ系のワイルダーは、ナチスの台頭によって、活動拠点のドイツのベルリンからアメリカに亡命する。その後は再び脚本家としてイチから努力することになるが、それでもワイルダーはめげずに頑張って、華々しい成功を掴んだ。まさに時代に翻弄された大変な苦労人なのである。

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 一方のスタさんも、相当な苦労人だ。俳優志望だった若き日のスタさんは、ホームレス同然の生活をしながら、映画の脇役の仕事をしつつ、その合間に脚本を書いていた。そして実際に見たボクシングの試合にヒントを得て『ロッキー』(1976年)の初稿を書き上げ、映画会社に売り込んだ。脚本は業界内で話題となり、大手の映画制作会社がスタさんに高額で脚本を買い取ると話を持ち掛ける。しかし、このとき会社側は脚本にしか興味を示しておらず、主演はスタさん以外の有名俳優を使うつもりだった。対してスタさんは俳優志望であるから、「俺が演じなければならない!」と譲らなかった。戦いの末に結局は会社側が折れるも、スタさんの俳優としての知名度の無さゆえに、制作費は大幅に削られた。試練の撮影となったが、結果はご存じの通りである。あの日から今日に至るまで、スタさんはアクションスターとして活躍する一方で、『ロッキー』『ランボー』『エクスペンダブルズ』(2010年)など、監督・脚本家としても働き続けている。

 スタさんとワイルダー。ジャンルこそ違うが、2人には若き日に泥水をすすりながら脚本を書いた過去がある。それを踏まえて考えると、脚本家の商売道具と言えるタイプライターを贈るとは、さすがワイルダー。粋なプレゼントである。そう思いながら動画を見ていたら……スタさんの視線の先にあるタイプライターは、普通ではなかった。タイプライター本体を迷彩柄に塗り、さらにおもちゃのヘリコプター、戦車、兵隊の模型が飾り付けられた衝撃の“ランボー・タイプライター”だったのである。その後ろには、子どものような笑顔でタイプライターをランボー仕様に改造しているワイルダーが見えるような気がした。そして茶目っ気たっぷりのプレゼントを紹介するスタさんの笑顔もまた、少年そのものだ。

 ハリウッドと言えば、エンターテインメントの街であり、欲望や醜聞が常に渦巻いている。しかし苦労をしても腐らずに、常に童心を忘れない大人たちもいて、そういった人たちが必死に映画を作り、歴史を紡いでいる街でもある。ワイルダーから託されたランボー・タイプライターを手に、スタさんがこれからどんな映画を作るのか? 引き続き、注視していきたい。(加藤よしき)

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