最速レビュー:トム・クルーズの肉体が躍動!間違いなくシリーズ集大成『ミッション:インポッシブル/ファイナル・レコニング』

還暦を迎えてなおトップスターの輝きを放ち続けるトム・クルーズが、すご腕スパイを演じる『ミッション:インポッシブル』シリーズ。その8作目となった最新作『ミッション:インポッシブル/ファイナル・レコニング』は、タイトルに“ファイナル”と冠した通り、俳優トム・クルーズの歩みをも総括するような、シリーズの集大成的な位置付けの一本となった。(※以下、一部内容に触れています)
【画像】ポム・クレメンティエフが大胆すぎるドレスで都庁に!『ミッション:インポッシブル』来日フォトギャラリー
宙吊りシーンで世界中の観客に絶大な印象を残した1作目『ミッション:インポッシブル』(1996)は、トムが初めてプロデューサーに挑んだ作品でもあった。俳優の枠を越えた、トムのフィルムメーカーとしてのキャリアは本作からスタートしたとも言えるだろう。「自分がプロデューサーだから、危険なスタントに挑戦しても文句は言われない」という理屈のもとにアクションのレベルはどんどん高度になり、やがて、トムの生身のスタントはシリーズの醍醐味に。さらに年齢と反比例するようにトムの技術も向上していった。
そして、“ファイナル”の名を冠した本作で、還暦を過ぎたとは思えない、トムの肉体の酷使ぶりは極まった。イーサンたちが立ち向かう人工知能“エンティティ”は、情報網を自在に操り、世界を滅ぼすことも可能な見えざる脅威だ。テクノロジーと距離を置くことを余儀なくされたイーサンたちは、何も信じられない状況のなか、知恵と肉体、そして仲間との絆を武器に、まさに裸一貫の戦いへと突入していく。その姿は、CG全盛の世の中で、体をはった生身のアクションにこだわってきたトムに重なる。同時に今、AIに熱狂している人類に警鐘を鳴らすメッセージを含んでいるかのように思え、単なるアクションではない物語に深いテーマ性を感じさせる。
そして、本作で目を見張るのがトムの過去イチの脱ぎっぷりだ。鍛え上げたプロのアスリート級の肉体を堂々と披露し、腕を勇ましく振り上げる“全力ダッシュ”はおそらくシリーズ最長距離に達し、複葉機の翼にしがみついたまま展開する空中アクションは観ているだけで足がすくみ、息が止まるような緊張感に満ちている。また『トップガン マーヴェリック』での俳優という枠を超越した経験が反映されたことも見てとれ、トムの映画作りにかける命懸けの本気が、ひしひしと伝わってくる。
しかし『ミッション:インポッシブル』がこれほど長い間、人々を惹きつけ続けてきた理由は、アクションだけではない。高度なアビリティーを持ちながらも、個性がさく裂する人間くさい仲間たちがたまらなく魅力的だということ。イーサン・ハントは、決して孤高のヒーローではない。幾度も世界を救ってきた“不可能を可能にする男”であるイーサンは、どんなミッションでも信頼する仲間たちとともに挑み、時にはその深い情が敵に利用されることもあった。しかし、その葛藤こそが超人的な活躍をみせるイーサンの人間的な魅力であり、トムの演技力の見せどころ。本作では、仲間との絆をめぐる心をえぐるような展開が用意されている。

そして本作は、シリーズを通じて、誰かのために世界を救い続けてきたイーサンが、自らの選択とその結果に向き合う物語でもある。シリーズを追ってきたファンほど、イーサンの歩んできた道と、彼のチームが成し遂げてきたこと、そして、その結果に向き合う姿に目頭が熱くなるはずだ。信頼できる仲間たちと共に自分の信じる道を貫こうとするイーサンの姿は、善悪が不明瞭な現代社会において、善とは何かを観る者に問いかけ、心に大きな杭を打ち込んでくる。
物語の背景として、前作までの展開を知っていることが前提になる点がやや敷居を上げるかもしれないが、劇中ではその点もフォローされているため、シリーズ離脱者も楽しめるはず。『ミッション:インポッシブル』シリーズのひとつの到達点にして、トム・クルーズにとっては、これがまた新たなスタートとなるのではないかと感じさせる作品だ。(編集部・入倉功一)
映画『ミッション:インポッシブル/ファイナル・レコニング』は5月23日より全国公開 5月17日~22日まで先行上映