「仮面ライダークウガ」25周年 高寺成紀&荒川稔久&鈴村展弘が魅力を“再検証”「奇跡の出会いがあったから成立した」

24日、「さよなら丸の内TOEI」プロジェクトの一環として「超クウガ展開催記念 スタッフトーク付き上映会」が丸の内TOEIで行われ、「仮面ライダークウガ」(2000~2001)のプロデューサーである高寺成紀(高ははしごだかが正式表記)、脚本・シリーズ構成の荒川稔久、MCとして監督の鈴村展弘が出席し、25年経っても色褪せない作品の魅力を“再検証”した。
「超クウガ展」は、テレビシリーズから25年目にして、はじめて明かされるメイキングを中心に、展示やスタッフキャストによる解説で、革新的な作品であった「仮面ライダークウガ」がどのように作られたのかに迫る展覧会。高寺が展覧会のスーパーバイザーを務め、主人公・五代雄介役のオダギリジョーがナビゲーターとして音声ガイドを担当する。
イベント第一部では、「仮面ライダークウガ」テレビシリーズからEPISODE17「臨戦」が上映された。同エピソードは、「クウガ」の総集編でありながら、新規怪人として未確認生命体第25号(=メ・ガドラ・ダ)が登場し、クウガとの戦闘シーンが盛り込まれている。
上映後、高寺プロデューサーは「みなさん『クウガ』を何回も観ていただいているかもしれないですが、改めて全体を振り返るには、17話がある意味ちょどいいのではないかということで上映させていただきました」と説明。「EPISODE11『約束』とEPISODE12『恩師』を制作するにあたって、撮影がストップしたことや、諸々が積み重なって、東映がアップアップになってしまって……。新しいエピソードが作れないことになり、この総集編を作ろうということになりました」と「臨戦」誕生の背景を明かした。
「臨戦」で監督デビューを果たした鈴村監督は、「従来の総集編と違うのは、新規怪人を作って、アクションをやっていること」と語る。「セットで撮影をして、いろんなことを振り返って終わるのはよくあるパターンじゃないですか。でも、ちゃんと戦いもあって、新規怪人を出してみたいなところが『クウガ』っぽくていいですよね」
総集編となるエピソードの制作には、予算や時間を節約しなければならない。高寺プロデューサーは「怪人を出したり、新撮部分を増やしちゃいけない。なるべく減らして、コンパクトにやらなきゃいけないわけなのです。僕の記憶では、鈴村がきちんとしたエピソードにしたいと要望をしていたんじゃないかなと思います」と鈴村監督の「クウガ」に対する情熱が制作に反映されていたと明かした。
トークは、鈴村監督の師である石田秀範監督の話題になり、鈴村監督は「石田監督が無理難題を言ってきまして。『そんなものできるわけない』ということを、一つずつ解決していっていました」と回顧。その例として、未確認生命体第37号(=ゴ・ブウロ・グ)が登場したEPISODE25「彷徨」とEPISODE26「自分」を挙げ、「ブウロが一回(クウガに)打たれて落ちる時に、壊れた車があって。石田監督は『車を1台壊しておいてくれ』っていうわけですよ。会社に話をして、撮影所の駐車場で、一人で車に火をつけて、鉄球を落としてへこませて、消火栓で火を消してたんです。当時『タイムレンジャー』とかのスタッフから『クウガ』の撮影が大変すぎて、『いよいよ頭がおかしくなった』と思われていました(笑)」と裏話を披露。荒川も「クレーン車持ってきて、鉄球落としたんですよね」と反応し、鈴村監督は「まさか石田監督の一言で、自分一人でその車を作ることになるという。あれは大変でした」と振り返っていた。
イベント第2部では、「仮面ライダークウガ Blu-ray BOX2」の映像特典して収録された「検証~ドキュメント・オブ・クウガ~」が上映された。同作は、平成仮面ライダーシリーズの礎を築いた「クウガ」が、いかにして誕生したのかを、オダギリや葛山信吾(一条薫役)のキャストや、高寺プロデューサーらスタッフ陣の証言から紐解いていく作品。上映後には、同作を担当した東映ビデオの小田元浩、プロデューサーの近藤あゆみ、監督の古波津陽も登壇し、製作の裏話が語られた。
小田は、「クウガ」の特性を生かして従来とは違うアプローチで映像特典を製作したかった」と企画経緯を振り返る。「仮面ライダーを全く観たことがない方に作っていただきたかった。同じ映像業界にいながら、違う視点で『クウガ』を検証していただきたいというお話になりました」
古波津監督は「テレビのない家庭に育ったので、どの番組も観ていなかったんです。大人になってから初めて『クウガ』を観て、いろいろ衝撃がありました」と「クウガ」との出会いを回顧。「仮面ライダーってこういうものだろうという思い込みがあったのですが、『クウガ』に触れた時、思っていたものと全然違った。“仮面ライダーを装ったドラマ”みたいな感じがしました。観ていて不安定な気持ちにさせられたのが、第一印象です」と悪役グロンギの描写、グロンギを倒す主人公・五代の苦悩など、作品からにじみ出る生々しさに驚きを隠せなかったという。
作り手に対するリスペクトが沸いたという古波津監督は、「どんな人たちが作っていたのかに興味が湧いたので、それを糸口にしながら、当時どういう気持ちだったのか(を聞き出しました)」とドキュメント制作のアプローチを明かし、「特に気持ちの部分でいうと、ドラマを作った方たちの“反旗の翻し方”ですよね。今まであったものをぶち壊してやろうっていう。誰もがおっしゃっていることで、それにもものすごく興味がありました。言うのは簡単だけど、実際にやるにはものすごいエネルギーがいることじゃないですか。当時の心境は、いちファンとしても聞かせていただきました」と笑顔で振り返った。
鈴村監督は、師である石田監督の言葉を借りながら「『クウガ』のスタッフは、同じ方向に矢印が向いていたんですね。みんなが同じゴールを見据えて作品を作っていたから、こういった形で成功したんじゃないかと思っているんですよね。師の言うことを『なるほど』と思いながら聞いてはいました」とコメント。荒川も、「違うことをやってやろうと常に思っているけど、当時はそうそうできるものじゃなかった。数パーセントできればいい方。(『クウガ』は)奇跡の出会いがあったから、成立したと思います」と感慨深げに話していた。
ドキュメントを編集していく中で、古波津監督は「反旗を翻すことは目的ではなく手段だった」ことに気がついたという。「高寺さんのインタビューで、最後のセリフに現れていたので、僕はすごく衝撃を受けました。殺し合うことの無駄。助け合う方向に早く向かうといいとおっしゃっていて。そう考えると、反旗を翻すことって目的じゃなくて手段であり、そこに静かなどんでん返しをくらいました」
ドキュメントを復習した近藤プロデューサーは、「(「クウガ」は)全然古くないと思ったんです」と強調。「扱っているテーマがすごく普遍的。荒川さんが暴力をどう描くかっていうことをすごく大事にしたいと話をしていて、暴力を描かなきゃいけないけど、それに対して子供たちのフォローがあって、すごく丁寧ですよね。優しいドラマだなっていうことを改めて思いました」と話していた。
3時間のイベントは、貴重な映像上映と白熱のトークショーで大盛り上がり。客席には、石田監督と「クウガ」の世界観を構築した文芸の大石真司の姿も見られ、イベント終了間際には二人にも盛大な拍手が送られた。(取材・文:編集部・倉本拓弥)
「超クウガ展」東京会場は6月14日(土)~7月6日(日)まで東京ドームシティ Gallery AaMoで開催※休館日なし
平日:12時~20時、休日(土日):10時~20時(最終入場は閉場時間の60分前)


