『岸辺露伴』映画新作で高橋一生&飯豊まりえのアドリブシーン

荒木飛呂彦の人気コミック「ジョジョの奇妙な冒険」のスピンオフ「岸辺露伴は動かない」を実写化する映画の新作『岸辺露伴は動かない 懺悔室』(公開中)。実写シリーズならではの楽しみの一つが、高橋一生演じる主人公・岸辺露伴と、飯豊まりえ演じる担当編集・泉京香の掛け合い。足掛け5年にわたってメガホンをとった渡辺一貴監督が、露伴と京香の関係や新作で見られるアドリブの裏側を語った(※一部ネタバレあり)。
【画像】笑顔いっぱい!高橋一生&飯豊まりえ、撮りおろし<9枚>
相手を本にして生い立ちや秘密を読み、指示を書き込むこともできる特殊能力“ヘブンズ・ドアー”を備えた人気漫画家・岸辺露伴を主人公にした漫画「岸辺露伴は動かない」を実写化するシリーズの映画の新作となる本作。パリを舞台にした前作『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』(2023)に続き、本作ではイタリア・ベネチアを舞台に、取材旅行にやってきた露伴が遭遇する恐ろしい体験が描かれる。
実写シリーズの全エピソードに登場しているのが、露伴の担当編集・泉京香。コミックでは「岸辺露伴は動かない」の「富豪村」「ホットサマー・マーサ」「ブルスケッタ」など数少ない登場だが、脚本家・小林靖子が参加した実写シリーズでは露伴の相棒的なポジションを担い、今やなくてはならない存在となっている。本作でも、ある男の告白を聞いたことから「幸せの絶頂の時に絶望を味わう」呪いに見舞われていく露伴に、思わぬ気付きを与える。
「シリーズが進むにつれて、京香のそうした役割が増えてきていますよね。“私だったら生きて絶望してほしい”というセリフも、すごく重い言葉なのに京香が言うと不思議と明るく聞こえるという。しかも、京香が意図せずに言ったことが露伴にとってヒントになるというのが大切で。露伴に対してこれはこうなんじゃないですかと言うんじゃなくて、京香の回路でポロッと言ったことが露伴に対して違う回路で響いていくっていうのが面白い構造だと思います」
渡辺監督と主演・高橋の縁は、大河ドラマ「おんな城主 直虎」(2017)に始まり、ドラマ「岸辺露伴は動かない」シリーズ(2020~2024※計9エピソード)、単発ドラマ「雪国 -SNOW COUNTRY-」(2022)、映画『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』、そして本作を含めると約8年に及ぶ。そんな高橋について、本作で特に目を奪われたシーンを問うとこんな答えが返ってきた。
「毎回毎回素晴らしいですし、今回ももちろん随所で思いもしなかったお芝居をしてくださっていますが、強いて挙げるなら露伴と京香をワンカットで撮ったシーン。日が昇る直前の一番いい瞬間を狙って、もう少し本番を待とうかと思っていた時に、天空がいい状態になってきたので1発で撮ることになったんです。そこで一生さんがアドリブを入れてきて。飯豊さんもちゃんとそれを受けていて、あの瞬間でしか撮れないカットだったなと。京香が露伴にお守りを渡した時に“いらない”って言われるんだけど、イタリア語で“プレーゴ”(どうぞ)と食い下がる。あれは本番の時にしかやってないアドリブなんです。一生さんがテストの後で思いついたそうです。露伴と京香の絶妙な関係が垣間見える、素敵なシーンとなりました」
なお、本シーンでは露伴と京香が引きで映されているため、京香が露伴に渡したお守りは見えない。一体何を渡したのか、聞いてみると……。
「気になりますよね。あれは僕が現地で買ったもので、観光地で500円ぐらいで売られているようなキーホルダーです。この場面にアップで入れるのは粋じゃないと思ったので、それがどんなモノなのかは想像していただければ(笑)」
ちなみに、本作で露伴がサングラスをかけた姿を見せているが、このサングラスには露伴の祖母の形見という裏設定があるという。
「あのサングラスは『ルーヴル』で青春期の露伴のエピソードに登場した、露伴のおばあちゃん(白石加代子)がかけていたものです。形見として大切に使っているのでしょう。『ルーヴル』でもつけているシーンがいくつかありましたが、取材旅行などに行く時につけているというイメージです」
『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』では露伴が命を奪われかけた“黒い絵”を見てもピンピンしていたり、ある意味、無敵の陽のオーラで露伴を驚かせてきた京香。本作もまた、二人の名コンビぶりにワクワクさせられること必至だ。(取材・文:編集部 石井百合子)


