吉沢亮&横浜流星の「壮絶」な努力 ダンサー・田中泯が称える「大事件です」

「悪人」「怒り」などの吉田修一の小説を映画化する『国宝』(6月6日公開)のジャパン・プレミアが30日、映画の撮影地である京都で行われ、主演の吉沢亮をはじめ横浜流星、高畑充希、寺島しのぶ、森七菜、見上愛、田中泯、渡辺謙、李相日監督が登壇。第78回カンヌ国際映画祭で上映された際の反応や、撮影の裏側を語った。
原作者・吉田修一自身が3年の間歌舞伎の黒衣を纏い、楽屋に入った経験を血肉にして書き上げた小説に基づく本作は、任侠の一門に生まれながらも、歌舞伎役者の家に引き取られ、芸の道に人生を捧げる主人公・喜久雄の50年を描いた一代記。抗争によって父を亡くした後、上方歌舞伎の名門の当主・花井半二郎に引き取られ、歌舞伎の世界へ飛び込む喜久雄に吉沢、半二郎の実の息子として生まれながらに将来を約束された御曹司・俊介に横浜がふんする。吉田原作の『悪人』『怒り』に続いて李相日監督がメガホンをとった。
この日のイベントが行われたのは、京都の東寺。世界遺産でもあるこの地で映画のイベントが行われたのは初。雨の予報だったが奇跡的に持ち直し、吉沢は「ついに日本の皆様にこの映画を届けられる日が来たということで、そしてこの撮影の地でもある京都の世界遺産で、こんな素敵な空間で皆様にお届けできるという、本当にスペシャルな日だなと思って、すごく楽しみにしておりました」と挨拶。横浜は「不安定な天候で、自分雨男なので不安はあったんですけど、晴男・吉沢亮のおかげで晴れまして。本当に晴れの場ですので、この東寺という世界遺産で皆様にこの作品を届けられることを幸せに思います」と笑顔を見せた。
カンヌで上映された際には6分間のスタンディングオベーションに沸いたことが報じられたが、李監督は「上映中、隣が吉沢くんだったんですけど、カチカチな感じがすごく伝わってきて、もう伝道し合って、2人とも力がぐっと入ったまま3時間ぶっ通しで緊張に包まれていたんですけど、上映が終わった時のリアクションというのは……とても熱いものがありまして。特に“ビューティフル、ビューティフル”っていう言葉が耳に焼き付いて。翌日のカンヌの機関紙に、非常に好意的な長文の批評が載ったんですけど、印象的なものとしては歌舞伎の生まれではない映画の俳優たちがとてつもない大きな挑戦に挑んで、結果として非常に絶大な説得力を生み出した。そして歌舞伎の舞台の映像は絵画のような美しさ、そのようなことが書いてありまして、2025年の映画祭の中で最も美しい映画の1つであったっていう風に結ばれていたので、この歌舞伎であり、映画であり、芸術っていうものに対して、我々が向き合ってきた真摯さとか、挑んできたものに対して、そういった精神性を含めて美しいと表してくれたような気がしました」と現地での反応を喜んだ。
劇中、吹替えナシで歌舞伎シーンに臨んだ吉沢、横浜をはじめとするキャストの熱演に対して寺島は「パフォーマンスをする方たちの撮る分量がえげつないんですよ。途中タオルを投げたくなっちゃったぐらい。もうギブですって言いたいぐらい、本当に頑張っていた」と圧倒されたことを回顧。吉沢は「もう十分だろうって思った先に、まだ2倍ぐらい残ってたみたいな日々だったので、体力的にも精神的にもなかなかハードな日々ではありましたけど、どうにかなりましたね」と振り返り、横浜は「でも、こんなに妥協せず、魂をワンカットワンカット込めてくださる方もいないから幸せな環境でした」と話す。
そんな吉沢と横浜に力強い言葉を贈ったのが、ダンサーの田中泯。劇中では人間国宝で当代一の女形・万菊を演じている。「とにかく桁外れの門外漢がやってはいけないことかもしれないとドキドキするような、そういう仕事を何か月間かやってましてと、未だに僕の中ではなんか終わった気がしてないというか。いわゆる伝統と呼ばれている芸能、芸術ですね、僕は触れないで80になるまで触れてきてないんです。僕は生活の中にそういうものは全部あるだろうという風に思い込んできて、自分に言い聞かせて、そして前へ行こうっていう風にして生きてきた人間なので、どのくらいショックが大きかったかご想像できると思いますけども、ぜひ映画の中で僕の中身を想像してご覧になっていただけたらと思います」と撮影を振り返りながら、「この2人の努力はもう壮絶です。これは伝統のためにもきっとなると思います。彼ら2人の体を伝統が侵食した。これは大事件です」と賛辞を贈った。(石川友里恵)


