『国宝』吉沢亮と横浜流星の少年時代を演じているのは?

「悪人」「怒り」などの吉田修一の小説を映画化する『国宝』(公開中)で、吉沢亮、横浜流星が演じる歌舞伎役者の少年時代を演じているのが、黒川想矢(15)と越山敬達(16)。共に、過去に新人俳優賞を受賞、カンヌ映画祭にわたった経験など共通点もある才能あふれる二人に注目してみた。
『国宝』吉沢亮・横浜流星・渡辺謙・田中泯、圧巻の歌舞伎シーン<16枚>
原作者・吉田修一自身が3年の間歌舞伎の黒衣を纏い、楽屋に入った経験を血肉にして書き上げた小説に基づく本作は、任侠の一門に生まれながらも、芸の道に人生を捧げる主人公・喜久雄の50年を描いた一代記。抗争によって父を亡くした後、上方歌舞伎の名門の当主・花井半二郎に(渡辺謙)引き取られ、歌舞伎の世界へ飛び込む喜久雄に吉沢、半二郎の実の息子として将来を約束された御曹司・俊介に横浜がふんする。黒川と越山は共にオーディションで選ばれ、黒川は喜久雄、越山は俊介の少年時代を演じ、吹替えナシの歌舞伎シーンを披露している。
喜久雄は、長崎の任侠の家に生まれ、少年時代に親分だった父・立花権五郎(永瀬正敏)を目の前で殺害されるという壮絶な過去がある。黒川演じる少年時代の喜久雄が宴会の場で女形として演目を舞った際には、歌舞伎界のスター、半二郎を「こんな芸達者な芸妓が長崎にいるとは…」といわしめるほどの美貌、才能で魅了する。李相日監督は黒川の起用理由について「何かを見つめるときのまなざしの強さ、簡単に納得しそうにない複雑さを湛えた瞳に引き込まれて決めました」とオフィシャルインタビューで語っている。
黒川の出世作は、脚本家の坂元裕二が第76回カンヌ国際映画祭脚本賞を受賞した『怪物』(2023・是枝裕和監督)。メインキャストの小学5年生・麦野湊役に抜擢され、日本アカデミー賞、ブルーリボン賞、おおさかシネマフェスティバル2024などの新人賞を受賞。山本崇一朗の人気漫画を実写化したTBSドラマ「からかい上手の高木さん」(2024)では主人公・西片役(月島琉衣とW主演)を射止め、Amazon Primeドラマ「【推しの子】」(2024)ではカミキヒカル(二宮和也)の少年時代に。今後、辻村深月原作の映画『この夏の星を見る』(7月4日公開)、村上春樹の短編小説を実写化したNHKドラマの映画版画『アフター・ザ・クエイク』(10月3日公開)の公開を控える。
一方、喜久雄と同い年の俊介は、偉大な父を持つ重圧を一身に背負う御曹司。父・半二郎と親子である演目を舞い、喜久雄を圧倒。初めは喜久雄をけん制していたものの、共に父のスパルタ指導に耐えるうちにいつしか親友へ。かけがえのない絆で結ばれた喜久雄と青春を謳歌する姿にはあどけなさが残り、若さゆえのきらめきが。李監督は、越山の起用について「(黒川と)対照的に、思わず構ってしまいたくなる“甘さ”を感じさせてくれたのが、御曹司の俊介と重なった」「黒川くんと対照的な温度感が良かった」と話している。
モデル・俳優として活躍する越山は、アーティスト集団・EBiDANの研究生EBiDAN NEXTに所属。2023年8月号よりファッション雑誌「ニコ☆プチ」でレギュラーメンズモデルを務めている。俳優としては、BS-TBS連続ドラマ「天狗の台所」(2023・2024)の主人公の弟オン役がはまり役となり、映画『ぼくのお日さま』(2024・奥山大史監督)でオーディションを経て主人公に抜擢。同作は第77回カンヌ国際映画祭のある視点部門に出品され、越山は日本アカデミー賞、キネマ旬報ベスト・テン、報知映画賞などの新人賞に輝いた。
6日に行われた初日舞台挨拶には黒川、越山もそろって登壇。「越山くんと川辺で稽古をしたシーンを思い出して、いまでもそのシーン、思い出、稽古したことを思い出します」という黒川に、李監督が「どんどん歌舞伎を好きになっているのが伝わってきた」と労をねぎらう一幕も。越山は「今まで経験したことがないぐらい撮影期間中、気を張っていた」といい、父役の渡辺謙と共演シーンを「(渡辺に)“この苦しみは二人にしかわからない”っていう励ましの言葉をいただいて、その言葉に支えられて演じ切れたことがあります」と振り返っていた。(編集部・石井百合子)