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ジョン・ウィック不在の物語は難しい チャド・スタエルスキ、最新作『バレリーナ』で描き方を再考

『バレリーナ:The World of John Wick』に登場するジョン・ウィック
『バレリーナ:The World of John Wick』に登場するジョン・ウィック - (R), TM & (C) 2025 Lions Gate Entertainment Inc. All Rights Reserved.

 キアヌ・リーヴスが伝説の殺し屋を演じる人気アクション映画『ジョン・ウィック』シリーズ全4作を手がけたチャド・スタエルスキ監督。シリーズ初のスピンオフ映画『バレリーナ:The World of John Wick』(全国公開中)では、製作として企画に携わっている。世界観の拡大を狙うスタエルスキが、本作におけるジョン・ウィックの描き方、“復讐の女神”として新たに描く主人公・イヴについて語った。

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 かつて裏社会で名を馳せた殺し屋ジョン・ウィックの死闘を描いてきた同シリーズ。スピンオフでは、彼の古巣である犯罪組織「ルスカ・ロマ」で育てられた女性暗殺者イヴ(アナ・デ・アルマス)を主人公に、幼少期に殺された父親の敵討ちに燃える彼女の復讐劇を活写する。

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 スタエルスキは、『ジョン・ウィック』シリーズの製作と並行して、スイスに住む暗殺者集団に関する物語を執筆していたという。第3弾『ジョン・ウィック:パラベラム』の撮影時、その物語が製作のベイジル・イヴァニクの目に留まり、本作の企画が生まれたという。

 「女性が復讐を試みるその物語には、バレリーナや、バレリーナの人形がついた宝石箱などが登場する。当時の僕は、バレエにすごく夢中になっていたから、『ジョン・ウィック:パラベラム』の物語の中に、ジョン・ウィックを訓練したルスカ・ロマと関連付けて、バレリーナが登場するシーンを入れようとしていた。イヴァニクたちは『偶然だな』という感じで、アイデアを展開させ始めた。ジョン・ウィックの世界にぴったり合うということになったんだ」

『バレリーナ』の主人公・イヴ - (R), TM & (C) 2025 Lions Gate Entertainment Inc. All Rights Reserved.

 そうして生まれたのが、ルスカ・ロマで殺しのスキルを磨いた“復讐の女神”イヴだ。「イヴは、暗殺者としての道においてはまだ新人だ。間違いを犯すこともあるが、間違いから学んで修正していく。そこで彼女が体験する感情も、彼女にとっては新しい。(本作は)彼女が『ジョン・ウィック』の世界に足を踏み入れて、その世界でどのように進化していくかを捉えている」とスタエルスキは説明し、「最初からタフな人物ではなく、タフな人物になっていく過程を見るのがこの映画の楽しいところなんだ。最初は、父と娘の物語で始まる。それから彼女は孤児になり、バレエ学校で自分の道を模索する。そこで彼女は他の孤児も助けたりするんだ」とイヴの成長過程を追う物語の醍醐味を明かした。

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 本作はスピンオフという位置づけだが、本シリーズからジョン・ウィックといったお馴染みのキャラクターが多数登場する。「ジョン・ウィックなしで、『ジョン・ウィック』とか『ジョン・ウィック』もどきの物語を作り出すのは、けっこう難しい」とスタエルスキは『ジョン・ウィック』ワールド拡大における難しさを語る。

 「『ジョン・ウィック』シリーズの素晴らしいところは、その世界の構築だ。僕は、ギリシャ神話とか、J・R・R・トールキンとかのファンタジー世界が大好きだから、自分で独自の世界を作り出していくのが好きなんだ。『ジョン・ウィック』シリーズの場合は、2時間から2時間40分の時間内でその世界を模索する。通常は、ジョン・ウィックを中心に物語が展開していくから、さまざまな世界を探究する余裕はない。でも、『バレリーナ』のようなスピンオフでは、その世界を十分探究できる。人々は、そういう映画を観たいと思うかって? 僕はそう思う。キャラクターをもっと魅力的に描けるかって? 僕は可能だと思う。『ジョン・ウィック』シリーズとは全く異質のものになる。ただ同じような物語にするならば、つまらなくなる。だから、それぞれの作品の主役に、全く別の物語を与えることを目指した」

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 ジョン・ウィックを主人公ではない形で登場させることも、シリーズにおける新たな試みだ。スタエルスキは、1作目からのキャラクターの変化に注目しつつ、本作では「ババヤガ」と恐れられていたジョン・ウィックに回帰するように、描き方を再考していった。

イヴの前に現れるジョン・ウィック - (R), TM & (C) 2025 Lions Gate Entertainment Inc. All Rights Reserved.

「ジョン・ウィックというキャラクターは、時を経る中で、より共感を呼ぶ人物になっていったと思う。観客自身が彼により感情移入していったし、ジョン自身も変わっていった。1作目を振り返ると、彼はどちらかというと自然の力のように制御不能な存在で、亡霊のように恐れられている。だから、別の視点からジョンを見られるようになったのも良かったが、本作では、1作目の視点に戻ることができる。主人公ではなく、敵役としてジョンを見られるんだ」

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 『ジョン・ウィック』シリーズのスリルあるアクションシーンは、スピンオフでも健在だ。「そのスリルは映画自体から伝わってくることもあれば、他の観客から伝わってくることもある。それが非常に重要なんだ」とスタエルスキは力説する。

 「『こいつはこれから銃を撃ちまくるぞ!』とか『なんてこった。彼の子犬を殺してしまった!』といった反応を、観客同士から感じるような効果を狙っている。大勢の人と観ていて、一瞬皆が静まり、それから一斉に悲しみの反応が出る。すると、全員がキャラクターを応援するんだ。たとえば、ジョン・ウィックが自分の子犬を埋葬する時、観客は誰一人として話すことなく、静まり返っていたはずだ。そういう反応が出た時は、映画の効果がすごくうまくいったか、失敗したかのどちらかだ。そして、ジョンが初めて敵に立ち向かっていった時は、観客も大興奮する。それを一緒に感じるのは、素晴らしい体験なんだ」

 『バレリーナ』においても、観客全員でキャラクターを応援する瞬間が用意されているという。「色も音楽も、大きなスケールで表現されているから、ぜひ映画館で観てほしい。とにかく、注目すべきはアクションだ。僕自身も皆と一緒に楽しむつもりだ。ジェットコースターにひとりで乗りたいなんて思う人はいないよね」と笑顔でアピールしていた。(編集部・倉本拓弥)

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