「ばけばけ」新解釈で描いたトキ&銀二郎の“別れ”「ただ悲しいものにしたくない」制作統括の思い

高石あかり(高=はしごだか)が主演を務める連続テレビ小説「ばけばけ」(NHK総合・月~土、午前8時~ほか ※土曜は1週間の振り返り)の第20回(24日放送)では、ヒロイン・松野トキ(高石)と結婚相手の銀二郎(寛一郎)の“別れ”が印象的に描かれた。オンエアに合わせて、制作統括の橋爪國臣が二人のシーンに込めた思いを語った。
連続テレビ小説の第113作「ばけばけ」は、松江の没落士族の娘・小泉セツとラフカディオ・ハーン(小泉八雲)をモデルに、西洋化で急速に時代が移り変わっていく明治日本の中で埋もれていった人々をフィクションとして描く。「怪談」を愛し、外国人の夫と共に、何気ない日常の日々を歩んでいく夫婦の物語。
銀二郎のキャラクターの参考にしたのは、明治時代に士族だった因幡(旧鳥取藩)前田家の前田為二。トキのモデルとなった小泉セツに、近松門左衛門の浄瑠璃を勧め、月琴を習うことを勧めた人物としても知られている。
そんなセツと為二の別れのエピソードをトキと銀二郎に置き換えた本作では、橋爪や脚本家・ふじきみつ彦の思いもあり、二人の別れを「ただ悲しいものにしたくない」と新しい解釈が加えられた。二人のほのぼのとした日常シーンを織り交ぜることにより、銀二郎は視聴者に愛されるキャラクターとなり、別れのシーンはより一層印象的なものとなった。
橋爪は「銀二郎さんという人はとても愛されるキャラクター。撮影現場の人みんなが銀二郎ファンになっています」と出演者やスタッフの間でも銀二郎が評判になっていることを紹介。「みんな、『(トキが)このまま銀二郎と夫婦でいればいいのに……なんて勿体無いことをするんだ』って思っているくらいです」と笑顔を見せる。
二人が別れるシーンの撮影には立ち会えなかったそうだが、橋爪は「あの別れのシーンは気持ちが入っていて、とてもグッとくるシーンになっています。(現場でも)『トキと銀二郎がずっと一緒になればいい……と思ってもらえたら嬉しい』という気持ちで作っていたんです。一緒になっていれば、もっといいことがあったかもしれない。時代の中で、あの二人は結ばれなかったという寂しさを視聴者のみなさんにも感じてもらえればいいなと思いました」と別れのシーンに込めた思いを語る。
また橋爪は「性格の不一致ではなく、時代の流れの中でどうしてもそうせざるを得なかったというのが、この作品で描きたかったこと。寛一郎さんにもそういうお話をして臨んでもらいました」と述べ、寛一郎もそれを踏まえた上で別れのシーンに挑んだことを明かした。
最後に橋爪は、松野家について「現在の価値観からすると酷いところがある」とし、「情報の乏しいあの時代、他の情報を知らずに生きてきて、江戸時代の教育を引きずり、新しい選択肢を持てなかった人たちがたくさんいました。そういう時代が明治時代のあの時期もそうだったし、今もそうじゃないかなと思うんです。それを描くこと、見せることがこの作品の本質だと思っています。トキと銀二郎の別れを通じて、そういったものをみなさんにも感じてもらえれば嬉しいです」と話していた。(取材・文:名鹿祥史)


