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北村匠海主演×内山拓也監督『しびれ』東京フィルメックス選出、共演に宮沢りえ、永瀬正敏

映画『しびれ』劇中スチール
映画『しびれ』劇中スチール - (C) 2025「しびれ」製作委員会

 『佐々木、イン、マイマイン』の内山拓也監督の最新作で、俳優の北村匠海が主演を務める映画『しびれ』が、第26回東京フィルメックス・コンペティションに選出された。本作は、内山監督が故郷である冬の新潟を舞台に、居場所とアイデンティティを模索する少年の物語を自伝的な作品として描いた渾身の一作だ。

【画像】映画『しびれ』劇中スチール4点

 『しびれ』は、内山監督が『佐々木、イン、マイマイン』よりもずっと前から執筆を続けてきた、構想十余年のオリジナル脚本に基づいている。幼少期に暴君のような父の影響で言葉を失った少年・大地は、水商売で生計を立てる不在がちな母・亜樹と雑居ビル屋上のプレハブで貧しい生活を送っていた。やがて叔母の家に身を寄せるが、どこにも居場所を見つけられず内向的になっていった大地は、父の行方を求め生家を訪ねることを決意。これを境に、彼の運命は大きく揺らいでいく。心の貧困、誰にも見つからぬように生きる孤独の中のささやかな救い、そして憎くて愛しい母への複雑な感情の中で、大地がかすかな光を手繰り寄せ、大きな愛を知るまでの20年間が、徹底した少年の視点で綴られる。

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 孤独と怒り、そして母への複雑な愛情に揺れる青年・大地を北村が演じ、水商売で日銭を稼ぎ、世間的には育児放棄と呼ばれるような生活を送るものの、息子への慈愛が滲む繊細な母親・亜樹を宮沢りえ、幼少期の大地が言葉を失うきっかけとなる暴君のような姿から一転、時が経ち、かつての威厳が消え、悲哀に満ちた余生を送る父・大原を永瀬正敏が務める

 北村は、内山監督から「この映画で一緒に心中してくれ」と言われたエピソードを明かし、「すごく嬉しかった」と監督への強い信頼を表明。宮沢も、壮絶な役柄を演じる中で「演技の枠を超えてしまうような瞬間があった」と、作品の持つ熱量を伝えている。内山監督は、本作を「私にとって人生をやり直すための確かな基盤となった」とし、「再び人生を歩み出そうとするすべての人々に」この映画を捧げるとメッセージを送った。

 映画『しびれ』は、2025年11月21日から30日に開催される第26回東京フィルメックスで上映される予定だ。この映画祭での上映を経て、今後の劇場公開の続報に期待が高まる。キャストと監督、東京フィルメックス プログラム・ディレクターの神谷直希のコメント全文は以下の通り。(加賀美光希)

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北村匠海(大地役)

僕は一体誰を演じたのか、間違いなく誰かではあるのですが。
ただそれは感情という概念がそのまま形になったような、初めての芝居体験でした。
そして僕が抱えていたものは怒りそのものでした。
この映画で僕が決めていた事はただ一つで、監督にNOと言わない。
監督の見てきたもの、今信じているもの、過去の無くなったもの。
その全てを、北村匠海を介して表現して欲しいと心に決めていました。
この映画で一緒に心中してくれと監督は言ってくれたんです。すごく嬉しかった。
是非、楽しみにしていて欲しいです。

宮沢りえ(大地の母・亜樹役)

壮絶に、もがき、生きた亜樹という役を自分の身体に引き摺り込むのはとてつもなく苦しかったけれど、、内山監督はじめ、現場にいる皆んながこの作品に対して愛があって真剣で、その熱量に、私自身、演技の枠を超えてしまうような瞬間があって、それが怖くもあり、面白さでもありました。
この作品に出会えて良かったと思っています。

永瀬正敏(大地の父・大原役)

数日の参加でしたが、全身に"闇"と"負"と"後悔"を纏い続けました。
観ていただく方々の“アンチテーゼになれれば"との思いで、監督の願いと揺れをどう具現化するか?
その事だけを考えていた日々でした。
この作品を創る事、上映する事によって
監督の心の中の葛藤が、物語の時間軸と共に浄化され未来へ動き出します様に。
東京フィルメックスで上映していただけるとの事、感謝しています。

内山拓也(監督・原案・脚本)

小さな世界の大きな物語です。
少年の眼差しは、何を捉えているのか。
映像と生活音、自然の音が重なり合う。
ゆれる感情と共に、海、風、雨、雪。冬の新潟をフィルムに焼き付けました。
過ぎ去っていく日常の中で、息をすること、心の切なさ、恐ろしさ、時にある喜び、それらの空気を肌で感じること。
この映画を通して、見落としがちな日々の美しい断片に気づいたり、生活や人との関わりが愛おしく感じてもらえたらと願いました。
『しびれ』は私にとって人生をやり直すための確かな基盤となったように、
人生は何度でもやり直せ、手遅れなことはない、
再び人生を歩み出そうとするすべての人々に、
それでも前を向きたいと思うすべての人々に、
そして存在のない子供たちに、この映画を捧げます。

神谷直希(東京フィルメックス プログラム・ディレクター)

内山拓也の描く物語の主人公は、いつでも多くを語らない男だった。
比較的会話劇に近いかもしれない『佐々木、イン、マイマイン』の主人公でさえ、どちらかというと寡黙な男として設定されていた。
そして本作『しびれ』に至って、内山は主人公からほぼすべての言葉を奪ってしまった。
しかし、彼の作品で最も印象に残る主人公を問われたら、多くの観客が本作の主人公を挙げるのではないだろうか。
役者の顔と身体に、そして何よりも映像それ自体に多くを語らせること。
内山が何よりも「映画」を信じているからこそ、この領域に辿り着けたのだと、この作品を見て確信した。

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