「ばけばけ」清光院が繰り返し登場する理由 制作統括が明かすトキ&小谷のランデブー秘話

5日に放送された連続テレビ小説「ばけばけ」(NHK総合・月~土、午前8時~ほか ※土曜は1週間の振り返り)の第10週・第50話では、ヘブン(トミー・バストウ)の生徒・小谷(下川恭平)が、思いを寄せるトキ(高石あかり※高=はしごだか)と清光院でランデブーを満喫し、彼女に正直な気持ちを伝えた。制作統括の橋爪國臣が、二人のコミカルなランデブーを振り返りながら、清光院が繰り返しドラマに登場する意図を語った。
連続テレビ小説の第113作「ばけばけ」は、松江の没落士族の娘・小泉セツとラフカディオ・ハーン(小泉八雲)をモデルに、西洋化で急速に時代が移り変わっていく明治日本の中で埋もれていった人々をフィクションとして描く。「怪談」を愛し、外国人の夫と共に、何気ない日常の日々を歩んでいく夫婦の物語。
第50回では、トキに思いを寄せる小谷が「怪談が好きになれる場所を」と、トキと清光院へ向かう。清光院は怪談「松風」の舞台として有名で、かつて雨清水傳(堤真一)がトキを元気づけるために“ランデブー”で連れていった場所として登場した。トキは第2週でも、お見合い相手だった山根銀二郎(寛一郎)とここを訪れ、怪談の話で盛り上がり、意気投合する。第50回では、小谷がトキと一緒に訪れ、銀二郎の時とは対照的に、怪談に興味を持てないことをトキに伝え、「無理です」とトキへの思いを断り、彼女の前から去っていった。
橋爪は、清光院を繰り返しドラマの中で登場させる理由について「怪談を感じられるような場所を、物語の中に作りたいと思っていました。そこがトキのアイデンティティになっていく重要な場所にもなる。そこで、清光院を登場させています。傳の時、銀二郎の時、今回の小谷の時、3回ともすべて話がつながっています」と意図的にそうしていると強調する。
「はじめて訪れた際の傳の思いが、二度目に訪れた際には銀二郎の思いと重なります。三度目にトキは小谷と一緒にそこへ行きますが、怪談に興味のあった銀二郎と違い、小谷は怪談には興味が持てない。そこが銀二郎の時との対比にもなっているんです。同じ場所だからこそ、意味を持たせることができます」
また橋爪は、ハーンの文章に清光院の怪談が書かれているものが残っていないことにも触れ、「セツとハーンが二人で行ったのかも記録に残っていません。松江の怪談スポットをたくさん訪れているのに、清光院に行ったかどうかがわからない。行ったかもしれないし、行っていないかもしれない。松江の有名な怪談スポットなのに、ハーンは文章に残していないんです。ヘブン以外の人と訪れるという点も考え、あえてあの場所を選びました」とこだわりを話す。
トキは清光院で「(怪談が)好きです」と小谷に告げるが、小谷はそれを「(自分のことが)好きです」と勘違いし、トキに「好きだというお気持ちは嬉しいんですが……ごめんなさい」と一方的に振って去って行ってしまう。橋爪は「あの振られるシーンは、現場では『小谷はヒドい奴だな(笑)』と言いながら撮影していました(笑)。勘違いで別れるあのあっけらかんとした感じ、ジメッとしないところが、ふじき(みつ彦=脚本家)さんの味だなと思いました」と振り返っていた。(取材・文:名鹿祥史)


