全編ピンボケ!ホン・サンス監督作『水の中で』キービジュアル&予告解禁

「全編ピンボケ映画」として第73回ベルリン国際映画祭で物議を醸したホン・サンス監督の話題作『水の中で』(原題:In Water)より、キービジュアル、予告編、場面写真が解禁された。
本作は、夏の終わりの済州島を舞台に、自主映画を撮るために集まった男女3人組を描く瑞々しい青春ドラマ。大学卒業後、俳優業に専念していた青年ソンモ(シン・ソクホ)は、かつての同級生ふたり(ハ・ソングク、キム・スンユン)を連れて短編映画の監督に挑むが、シナリオが書けずに煩悶する。そんな中、ひとりの女性との出会いをきっかけに、語るべき物語を見出す。
ホン・サンス監督は、2020年の『逃げた女』以降、監督・脚本・製作・撮影・編集・音楽のすべてを自ら手がける実験的なスタイルへと進化しており、本作は特に特異な一本だ。出演者の顔の判別が難しいほど焦点の甘い映像が延々と続くという表現が大きな話題を呼び、ベルリン国際映画祭では上映前に「これからかかる映画は決して映写ミスではない」と事前アナウンスが入るほどだった。
しかし、その独創的な試みは高く評価され、カイエ・デュ・シネマ誌編集部の「2024年の映画ベスト10」では『関心領域』『私たちが光と想うすべて』を抑えて第3位に選出されるなど、ホン・サンス監督の新境地を示す一本として称賛を集めた。また、「印象派の絵画のよう」という評が示すように、輪郭を失い、いくつもの色が溶け合う済州島の風景は、不思議な美しさを生み出している。
今回解禁されたキービジュアルは、海に向かうソンモの後ろ姿を捉えたもので、「ぼやけたままでいい。」というコピーが、迷いや葛藤を抱えながらも前に進もうとする青年の姿を静かに肯定するような余韻を湛えている。
本作は、ホン・サンス監督のデビュー30周年を記念した特別企画「月刊ホン・サンス」(2025年11月~2026年3月の5か月間、新作5本を月替わりで公開)の第3弾として、2026年1月10日(土)よりユーロスペースほかで全国順次公開される。


