橋本愛、「べらぼう」ラストシーンの収録振り返る 4度目の大河で初の最終回参加

横浜流星主演の大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」(NHK)が14日に最終回を迎え、主人公・蔦屋重三郎(横浜)の妻ていを演じた橋本愛が、最終回の収録を振り返った。橋本にとって大河ドラマへの出演は4度目、最終回までの収録に参加するのは初となり「長い間ずっと一緒にやってきたスタッフさん、キャストの皆さんと一緒にゴールテープを切れるという経験は本当に一生に一度あるか分からないくらい、私の中ではすごく貴重で希少な経験だなと思います」と語っている(※ネタバレあり。最終回の詳細に触れています)。
大河ドラマ第64作「べらぼう」は、江戸時代中期、貸本屋から身を興して書籍の編集・出版業を開始し、のちに江戸のメディア王として時代の寵児となった蔦屋重三郎の物語。脚本を大河ドラマ「おんな城主 直虎」やドラマ「大奥」シリーズ(NHK)などの森下佳子、語りを綾瀬はるかが務めた。
最終回(48回)「蔦重栄華乃夢噺(つたじゅうえいがのゆめばなし」では、主人公・蔦重が脚気に倒れ死にゆくさまが描かれた。臨終の場面は妻ていをはじめ、喜多川歌麿(染谷将太)、朋誠堂喜三二(尾美としのり)、北尾重政(橋本淳)、北尾政演(古川雄大)、大田南畝(桐谷健太)ら仲間たちに囲まれたにぎやかなものだった。ラストシーンについて、橋本は「蔦重さんの「戯(たわ)ける」っていう精神と「世を耕す」っていう信念と、遊びじゃないから遊びにするんだっていう、生きざまが全て詰まったようなラストシーンなので、エンタメに振り切りながらも、だからこそ感動の伝わるシーンになっているのではないかと思います。演じる側としてはハードルの高いシーンでもあったので、あの中でていさんがどんなふうに振る舞うのかな、祈りや思いがちゃんと伝わるように演じたいな、と思いました」と振り返る。
前の場面では、ていが死を前に己の生涯に思いを馳せる蔦重を「日本一のべらぼうにございました」と称えるシーンがあった。ていは「江戸はもちろん今や名も知れぬ町や村で見知らぬ人たちが黄表紙を手に取り、狂歌を楽しんでおられると聞きました。それは旦那様が築き上げ、分け与えた富ではございませぬでしょうか。その富は腹を満たすことはできません。けれど、心を満たすことはできます。心が満たされれば人は優しくなれましょう。目の前が明るくなりましょう」「次は己が誰かの心を満たそうと思うかもしれません」「さような笑いと言う名の富を旦那様は日本中に振舞ったのではございませぬでしょうか。雨の日も、風の日もたわけきられたこと、日本一のべらぼうにございました」と涙ながらに語り掛ける。
ていは蔦重をどのように見守っていたのか? との問いに、橋本は「旦那様を誰よりも誇りに思っていて、誰よりも感謝しているからこそ、いなくなってしまうのが耐えられないほどの悲しみの底にいるのに、準備は万端っていう、ていさんらしさをすごく感じました」と話す。
「最期まで自分らしく本を作り続けて死ぬんだっていう強い思い。蔦重さんが自分の病状を利用するっていうところがコミカルにも描かれていますが、きっとそれが本音の全てじゃないこともわかっていて。ていさんは生まれながらの本屋の娘なので、誰よりもその矜持(きょうじ)がわかるというか。根っからの商人であり、本や文化を生み続ける、その信念と共に最後まで旦那様を見送るんだ、添い遂げるんだっていう誇りと覚悟みたいのものと、生きることをあきらめないでほしい、やっぱり安静にしててほしいっていう気持ちが同居してて。色んな感情が激しく渦巻きながらも、二人で共に生きてきた時間を振り返りながら静かに向き合っていくっていう、色んな意味で満たされた時間でした。どうしようもなく生きてほしいと願い続けながら、死に向かう旦那様のために準備をするっていうのは、結構こたえる時間だったと思います。でも、責任を全うし、彼の不安を払拭したい、そして何よりも後悔したくないからこその準備万端でもあったのかなと思います。最後に笑って、気持ちや想いを全て伝えようという気持ちでした」
これまでの放送回で印象に残っているシーンとして6月29日放送・第25回「灰の雨降る日本橋」を挙げる橋本。
「陶朱公(とうしゅこう)のように生きればいいんじゃないですか」って言ったシーンです。飯盛さんが書いた、蔦重さんの生きざまを象徴する言葉が、まさか過去のていさんの言葉だったんだっていうのが私はすごくうれしくて。ていさんの思いも一緒に、あの世に連れていってくれるんだなと。(第25回で)「これはあなたを象徴する信念です」という気持ちでは演じていなかったので、サプライズのようでした」
そして、最終回まで見届けた視聴者に「1年間ずっと作品を見続けるってものすごいエネルギーだと思いますし、大げさじゃなく皆さんのおかげで、自分もがんばろうと思ってやってこれました。これから先、一人でも多くの方の心に「べらぼう」が生き続けるような作品になったらいいなという願いを込めて、本当に心からの感謝を伝えたいです」とメッセージを送った。(石川友里恵)


