4館→145館、異例のヒット『どうすればよかったか?』アンコール上映決定

2024年12月公開の藤野知明監督によるドキュメンタリーのアンコール上映が来年1月24日より東京・ポレポレ東中野ほか、大阪・第七藝術劇場などで行われることが明らかになった。同作の裏側に迫る同名ノンフィクションの書籍刊行を記念しての上映となる。
映画『どうすればよかったか?』は、藤野監督が統合失調症を発症した姉と両親と対話を重ねた日々を20年にわたって追ったドキュメンタリー。全国でわずか4館からスタートしながらメディア掲載や口コミの広がりにより145館で上映。興行収入は2億3000万円、動員数は16万人を突破し、ドキュメンタリーとしては異例のヒットとなった(2025年12月18日時点)。現在は劇場上映だけでなく自主上映会が全国に広がり、2025年内だけでも150回以上の上映会が開催されている。書籍では藤野監督が、映画に入れるのを断念したショッキングな家族の事実や、姉や両親と過ごした時間の中で味わった悲しみ、怒り、混乱、葛藤、喜び、希望など、映像では伝えきれなかった様々な思いをつづっている。
面倒見がよく、絵がうまくて優秀な8歳ちがいの姉。両親の影響から医師を志し、医学部に進学した彼女がある日突然、事実とは思えないことを叫び出した。統合失調症が疑われたが、医師で研究者でもある父と母はそれを認めず、精神科の受診から姉を遠ざけた。その判断に疑問を感じた弟の藤野知明(監督)は、両親に説得を試みるも解決には至らず、わだかまりを抱えながら実家を離れた。このままでは何も残らないー姉が発症したと思われる日から18年後、映像制作を学んだ藤野は帰省ごとに家族の姿を記録しはじめる。一家そろっての外出や食卓の風景にカメラを向けながら両親の話に耳を傾け、姉に声をかけつづけるが、状況はますます悪化。両親は玄関に鎖と南京錠をかけて姉を閉じ込めるようになる。
書籍化&アンコール上映にあたって藤野監督は「映画では省略したことを文字にする機会を得たので、家で何が起きていたのか、私が何を考えていたのか、まとめました。映画の中での口論の様子を見て、我が家が機能不全家族だったから姉が統合失調症になったのだろうという感想を目にしましたが、姉が発症する前、家で口論が起きることはほとんどありませんでした。激しい口論が起きたのは姉の状況に変化が起きてからのことです。映画『どうすればよかったか?』の仮題は『姉が統合失調症を発症し、考えたこと』でした。この本はまさに仮題そのままの内容になっていると思います」とコメントを寄せた。
1月25日に東京・ポレポレ東中野、1月31日に大阪・第七藝術劇場にて、藤野知明監督による舞台挨拶が行われる。書籍「どうすればよかったか?」(税込み1,650円)は2026年1月29日、文藝春秋より発売。(石川友里恵)


