「豊臣兄弟!」小栗旬を信長役に起用した理由 制作統括を驚かせた「脚本を超えた芝居」

仲野太賀主演による大河ドラマ「豊臣兄弟!」(NHK総合・毎週日曜午後8:00ほかで放送中)の織田信長役を演じる小栗旬(43)。主人公・小一郎(のちの豊臣秀長/仲野太賀)と兄・藤吉郎(のちの豊臣秀吉/池松壮亮)にとって絶対的な主君として描かれ、作品全体を引き締めるカリスマ的な存在感が注目を浴びているが、同役に小栗をキャスティングした理由を、制作統括の松川博敬チーフプロデューサーが語った。
大河ドラマ第65作となる本作は、戦国乱世を舞台に、「秀長が長生きしていれば豊臣家の天下は安泰だった」と言わしめた天下一の補佐役・豊臣秀長の目線で戦国時代を描くサクセスストーリー。脚本を担当するのはTBS日曜劇場「半沢直樹」「VIVANT」、連続テレビ小説「おちょやん」などの八津弘幸。
小栗にとって大河ドラマへの出演は、北条義時役で主演を務めた2022年放送の「鎌倉殿の13人」をはじめ10度目、「どうする家康」(2023年・南光坊天海役)以来3年ぶりとなる。松川CPは、信長役を小栗にオファーした理由をこう語る。
「(15日放送の)第6回で描かれたように、信長には弟(信勝)を殺して武将としてのキャリアをスタートした過去があって。その傷を抱えているという人間臭さ、弱さ。なおかつ迫力と覚悟みたいなものの両面を表現できる方というのが小栗さんにお願いした理由の一つです。これまで大河ドラマで多くの方が織田信長を演じられて、視聴者の皆さんそれぞれのイメージがあると思います。もっと超然とした感じの方とか、もっと大御所の方に演じていただく選択肢もあったかもしれませんが、本作では豊臣兄弟(秀吉・秀長)と織田兄妹(信長・市(宮崎あおい※崎=たつさき))の対比を描いていて、その前には信長と信勝の哀しい兄弟関係がある。一方で、とてもハッピーな豊臣の兄弟関係がある。実際に、小栗さんが適任だったと思います。迫力があって怖いけど、弱さと親しみやすさがにじみ出るところが、何とも小栗さんらしいところだなと思います」
なお、本作のキャスティングは「史実上の実年齢をかなり意識している」という。
「全体的に若いとよく言われていて。信長役を小栗さんにお願いしたのもかなり覚悟したことではあります。(比較的年齢が高めな)オープニングクレジットのトメが小栗さんの信長になっていて。もちろん「鎌倉殿の13人」で主演をやられた大俳優ではあるんですけど、大御所と呼ぶにはまだ若い。今回は、史実上の実年齢差をかなり意識しています。信長は秀吉の3つ年上で同世代なんですよね。後半戦、豊臣兄弟が40代とかになって石田三成など下の世代がどんどん出てきた時に、実年齢が逆転するのは少し違うと思って。そうすると、おのずと20代の俳優が多くなってくる」
15日放送の第6回では、かつては仲睦まじかった信長と弟・信勝が敵対関係へと転じる悲しいエピソードが描かれた。信長は裏切った弟を殺さざるを得ない状況となり、信長は悲痛な叫びを上げる。その際の小栗の演技を、松川CPは「脚本を超えた芝居だった」と評する。
「小栗さんのお芝居にはびっくりしましたね。なんと表現したらいいか……どこから声が出ているのかわからないぐらいの。ある意味、信長の1番深いところと、素の部分がああいう風に表現されたことで、このドラマにおける信長のキャラクターが定まったように思いました。脚本のト書きには『不意に込み上げた衝動に絶叫する』とあり、お芝居は脚本に沿ったものではありましたが、顔を真っ赤にして衝動をかみしめているような表情は脚本を読んだ印象とは全く違っていたので、脚本を超えた、予想外のお芝居だったように思います」
信勝を演じるのは、小栗の事務所の後輩でもある中沢元紀(25)。昨年放送された連続テレビ小説「あんぱん」ではやなせたかしさんをモデルにした柳井嵩(北村匠海)の弟で戦死する千尋を好演し、ブレイクした。
「昨年の4月、キャスティングを進めていたころにちょうど「あんぱん」が放送中で、中沢さんのお芝居が素晴らしいなと。最近では不憫な弟をやったら1番じゃないかって。「豊臣兄弟!」では短い出番ではあったんですけど、やはり小栗さんを先輩として慕っている中沢さんだからということで、やっていただいて本当によかったなと思います」
ところで、本作では大河ドラマ「どうする家康」と同様に信長の妻・帰蝶は登場しない。その理由について、豊臣兄弟と織田兄妹の対比を際立たせる目的があったためだと松川CPは語る。
「視聴者の皆さんからもなぜ帰蝶は登場しないのか、という声はいただいているのですが、やはり織田兄妹を立たせたいという思いがあります。そのなかで信長の孤独というものも設定としてあって。市はこの後、夫の浅井長政(中島歩)と娘の茶々・初・江という3人の娘に恵まれますけど、その時信長がさらに独りぼっちになってしまいます。でもそこに妻や子供が出てくると、少しぼやけてしまうと思ったんです。そこで、信長にとって妻たちはみなアウトオブ眼中で、市だけが信長の心の内に踏み込める。信長も本音を話せるのは市だけという設定にしました。時代考証の先生にも“本当にいいんですか?”と確認されましたが、覚悟を決めて“今回は帰蝶を登場させずにいきます”とお話させていただきました。帰蝶や側室は存在はしているはずですが、信長とそこまで深い関係ではない、ある意味ドライな夫婦関係であった、と言う風に設定しています」
なお、第4回では信長が市の前で「敦盛」(幸若舞の演目の一つ)を舞うシーンも話題を呼んだが、「もう期待通りでした」と大満足の松川CP。「視聴者の皆さんも“待ってました!”というムードでしたが、そういう“待ってました!”に応えるのも大事なことなので、今後も楽しみにしていただけたらと思います」と呼び掛けた。(編集部・石井百合子)


