塚本晋也監督最新作『ネルソンさん、あなたは人を殺しましたか?』9月公開決定!“戦争加害者の傷”に切り込む衝撃作

『野火』や『ほかげ』で世界の映画ファンを唸らせてきた塚本晋也監督(「塚」は「豕」に点ありの旧字体が正式表記)の最新作『ネルソンさん、あなたは人を殺しましたか?』が9月より全国で公開されることが決定した。3月29日の「ベトナム戦争退役軍人の日」に合わせて情報が公開された。
原作は、ベトナム戦争に従軍したアレン・ネルソンのノンフィクション。差別と貧困から抜け出すために海兵隊に入隊し、1966年に最前線に送られたネルソンは、凄惨な現実の中で命を奪う経験を重ね、次第に感覚を失っていく。帰国後も戦場の記憶に縛られ、後遺症や家族関係の崩壊に苦しみ続けた彼は、来日後に自らの体験を語り続け、日本全国で1,200回以上の講演を行った人物だ。
塚本監督は『野火』の映画化に際してこの原作に出会い、“戦争加害者の傷”というテーマに真正面から挑むことを決意した。完成までの7年間、人間の暗部に向き合う苦痛と格闘し続け、戦火の絶えない現代の世界にこそ必要な物語として本作を作り上げた。
キャストには、オスカー俳優のジェフリー・ラッシュをはじめ、ロドニー・ヒックス、タチアナ・アリ、マーク・マーフィーら国際的な顔ぶれが集結。撮影はニューヨーク、タイ、ベトナム、日本と国境を越えた異例のスケールで敢行された。
戦争が人をどう変え、周囲にどういう影響を与えるかを問いかける本作は、戦争と人間を描き続けてきた塚本監督にとって集大成ともいえる作品になっている。
映画『ネルソンさん、あなたは人を殺しましたか?』は9月に TOHOシネマズ シャンテ ほかで全国公開。塚本監督のコメントは以下の通り。
塚本晋也監督コメント
大岡昇平さんの「野火」を映画化するとき、さまざまな資料、書籍を読んだが、そのとき出会った何よりも恐ろしいノンフィクションが『ネルソンさん、あなたは人を殺しましたか?』だった。アレン・ネルソンさんは、ベトナム戦争で多くの人を殺した。そして戦争後遺症に生涯悩まされ続けた。自分の犯した罪とその後の人生を包み隠さず吐露した本は、いつまでも頭から離れず強烈に自分の心に刻み付けられた。
これがもし映画になったら?と想像すると、今の世の中に絶対必要なことに思えた。戦争がどういうものか。戦争が人をどう変えるか。周囲の人にどういう影響を与えるか。
同時に、そんな恐ろしい考えは持たないようにしよう、と逃げる理由も考えた。
映画化はあまりに難しく、逃げる理由はいくらでも並べることができた。
その物語に近づこうとするたび、人間の暗部がいやというほど浮き彫りになり、苦痛を感じた。しかし、体は、この企画の実現のためにとどまることを忘れ休みなく動き続けた。果たして映画化は困難を極め、作らなければ、でも逃げたい、というせめぎ合う気持ちは7年もの間完成に到るまで続いた。
あちこちで戦火をあげている今の世界。それをますます身近に感じるようになった。これは、アレン・ネルソンというアフリカ系アメリカ人の一人の兵士を描いた真実の物語だ。
今は亡くなってしまったアレンさんを蘇らせ、人々に知ってもらうことが今の世の中にどうしても必要、という考えを捨て去ることができずに、多くの人たちの理解と協力を得て完全なものとして出来上がった。
彼の生きる姿が、皆さんの心に届くことを心から願っています。
塚本晋也


