是枝裕和監督、綾瀬はるかの変わらない魅力語る ジェスチャーゲームで千鳥・大悟が苦笑

是枝裕和監督が『ベイビー・ブローカー』以来、4年ぶりにオリジナル脚本を手掛けた新作映画『箱の中の羊』が公開中だ。本作では、映画では『海街diary』以来11年ぶりのタッグとなる綾瀬はるかが大悟(千鳥)と共に夫婦役で主演を務め、幼い息子を不慮の事故で亡くした建築家を演じている。是枝監督が11年前の記憶を回想しながら、数々の作品で組んできた綾瀬の魅力を語った。
綾瀬はるか、肩出し黒ドレスで登壇!大悟(千鳥)が再びエスコート『箱の中の羊』初日舞台挨拶
物語の舞台は、テクノロジーが進化し、現在よりもAIが根付いた近未来の日本。2年前に7歳の息子・翔(かける/桑木里夢※「桑」の木の上は十と草冠が正式)を亡くした建築家の音々(おとね)と工務店の二代目社長を務める健介(大悟)の甲本夫婦は、翔と同じ姿をしたヒューマノイドを迎え入れることに。再び家族の時間は動き出すかに見えたが、最新の生成AIで翔として“成長”していく彼を徐々に受け入れていく健介に対し、音々は在りし日の息子とのギャップに違和感を覚えていく。
脚本の執筆は、撮影地となる甲本夫妻の家を見つけてから始めたという是枝監督。甲本夫婦の住まいは、人とAIの共生を象徴するかのように、温もりの感じられる木材と、無機質なガラスでできている。
「家は北鎌倉にあるご夫婦の自宅をお借りしました。最初は、女性建築家の家を探していたのですが、建築家の方にヒアリングをしたところ、30代で自分のデザインの家を建てたいという夢を持つ方が多いそうで、そうした家をスタッフが見つけて来てくれました。吉祥寺や埼玉にも行きましたが、この家は特に中庭がよくて。なおかつ渡り廊下で電車の音が聞こえるので“あ、ここだな”と思ったんです。実際にあの家に暮らしているお子さんが渡り廊下に座って絵を描いているそうで。なおかつ住まわれているのが、建築家の奥さんと工務店勤務の旦那さんなので、劇中の設定とまんまなんです。実際にそうした組み合わせの夫婦が多いようです」
綾瀬とは2015年に放送されたドキュメンタリー番組「いしぶみ」(綾瀬はるかが語りを担当)やCMでも組んでおり、映画でのタッグは『海街diary』以来。吉田秋生の漫画に基づく同作では、鎌倉に暮らす四姉妹のしっかり者の長女を綾瀬が好演した。
「気持ちのいい方ですよね。『海街』の時は、現場では綾瀬さんが末っ子みたいでした。オフの時間になると“ねえねえ、何して遊ぶ”と3人(長澤まさみ、夏帆、広瀬すず)に話しかけ、みなが綾瀬さんに付き合ってくだらない遊びをするみたいな状況でした。今回は、本読み(台本の読み合わせ)、リハーサルの後に大悟さん、里夢くんとの3人の時間を作ってジェスチャーゲームをしてもらいました。“30秒ジェスチャーを見てから答える”という決まりなのに、綾瀬さんはジェスチャーが始まるとすぐ“はいはいはい”と手をあげて全然違う答えをするという連続で(笑)。大悟さんは苦笑していて、1番盛り上がって楽しそうだったのは綾瀬さんでした。だから昔と変わらないなと思いました(笑)」
しかし、撮影となるとガラリと変わり「役に対しては非常に真面目に向き合ってくれて、素晴らしかったです」と是枝監督は感心。
「劇中の母親(余貴美子)との確執、関係に関してご自分で周りの方にリサーチされていましたし、役柄の建築家の所作についても熱心に学んでいました。家の持ち主である建築家の方に、模型の作り方や図面の書き方などを指導いただいたのですが、綾瀬さんのことをとても褒めていらっしゃいました。模型の制作など、本当に上手なんです。もちろん大変な作業なのですが、綾瀬さんは絵も図工も得意らしくて。一度“手元吹き替えましょうか?”と尋ねたら、ちょっと“ん?”という顔をされて、自分でできますと。実際、プロから見ても完璧っていう感じでした」
亡き息子と同じ姿をしたヒューマノイドに芽生える複雑な思いは観る者の胸を切なくし、夫役・大悟との絶妙なコンビネーションも相まって、綾瀬の魅力が存分に引き出された一作となっている。(取材・文:編集部 石井百合子)


