「ウルトラマンティガ」吉本多香美、父・黒部進からの手紙に涙 レナ隊員役から30年「私の自慢です」

「ウルトラマン前夜祭 ウルトラマン誕生」のスペシャル上映会が、ウルトラマンの日である7月10日に杉並公会堂で行われた。イベントには、「ウルトラマン」でフジ・アキコ隊員を演じた桜井浩子と、「ウルトラマンティガ」でヤナセ・レナ隊員を演じた吉本多香美が出席。昭和と平成を代表するヒロインの共演に、会場は大きな歓声と拍手に包まれた。
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1966年、「ウルトラマン」第1話(7月17日)より1週間前となる7月10日に、杉並公会堂を会場とする番組PRイベント「ウルトラマン前夜祭 ウルトラマン誕生」が公開録画中継放送された。ウルトラマンがお茶の間に初登場となったことを記念して、7月10日は「ウルトラマンの日」に制定されている。奇しくも、今年がウルトラマンシリーズ60周年、「ウルトラマンティガ」30周年という節目の年になったことから、“聖地”となる杉並公会堂で特別イベントが行われることとなった。
桜井は大勢の観客に向かって「みんながんばってるかい?」と問いかけると、吉本も「こんにちは、レナです。30年の時を経て、父(「ウルトラマン」ハヤタ・シン隊員役の黒部進)の60周年を皆さんとお祝いできるのを楽しみにしてきました」とあいさつ。「30年もたったなんて信じられない……」と語る吉本に、桜井も「あたしたちは60周年だから。半分じゃない」と笑ってみせた。
この日は、“聖地”杉並公会堂で「ウルトラマン前夜祭 ウルトラマン誕生」を桜井&吉本のオーディオコメンタリー付きで上映することに。だが、舞台裏は非常にドタバタだったとのことで、しきりに「上映はやめようよ」と笑う桜井だったが、懐かしい映像の数々に「これは撮影の合間だった」「当時、奈落のようなところがあったので、わたしたちはそこで待機していた」など貴重な裏話が続々と飛び出した。
当時、歌やコントなどてんこ盛りの演出が続き、舞台袖で待ち続けてもステージに出られず、しびれをきらしていたという科学特捜隊メンバーたち。ステージにいつ出ればいいのか分からない状況だったというが、そんな彼らに向かってキャップ(小林昭二)が「行くぞ」と呼びかけてとりあえずステージに登壇した、という裏側があったとのこと。桜井は「これをきっかけにみんながキャップについていくようになって。あれで絆が深まったね」と懐かしそうに語った。
また、撮影後の飲み会でも黒部はマイペースだったとのことで、いつの間にか飲み会の席から姿が見えなくなる黒部に、キャップが「あいつはいつもいなくなるんだよな」とボヤいていたというエピソードを披露。リアルなハヤタ隊員ぶりに、会場も笑いに包まれた。
一方の吉本は「父は芸能人でありながらも家庭が大好きで、本当にいいパパだった」と述懐。吉本が女優を志した際、芸能界の厳しさを知る黒部は猛反対したというが、娘がオーディションに受かったというニュースを聞いた瞬間に一緒にいたという桜井によると、「あんなにうれしそうな顔は見たことなかった」とのことで、誰よりも喜び、涙ぐんでいたという心温まるエピソードも明かされた。
また、ウルトラマンシリーズを語る上で欠かせない実相寺昭雄監督についてのトークも展開。吉本が「『曼荼羅』とか『悪徳の栄え』といった前衛的な代表作を見ていたので、まさかわたしがご一緒できるなんて思ってなくて感動しました」とのことで、それゆえ「ウルトラマンティガ」第37話『花』の戦闘シーンにおける、まるで歌舞伎の舞台のような演出にさすがだと思った」と尊敬の念を抱いた様子だったが、桜井は「あんなの褒めるんじゃないよ!」とピシャリ。「『怪獣墓場』の回で喪服を着ろと言われて嫌だと言ったら、キャップ(小林)に『実相寺は才能があるから言うことを聞いてやってくれ』と説得された。いまだに彼の才能なんて分からないけどね」と愛ある毒舌で故人を偲び、会場の笑いを誘った。
またウルトラマンシリーズにおける「ヒロイン像」について、桜井は「初代だから手探り。才能あるスタッフが『フジ・アキコ』を作ってくれただけ」と謙遜しつつ、「当時は自立する女性がなかなか描かれなかったから、自ら『ジェットビートルに乗せてほしい』と直訴した」と胸を張る。一方の吉本が「わたしはエースパイロットの役がもらえてうれしかった」としみじみ語ると、「それはわたしのおかげだよ。ジェットビートルだってなかなか運転させてくれなかったんだから」と自負する桜井に、会場からは惜しみない拍手が送られた。
そんな大盛り上がりのイベントの終盤、桜井の代読により、吉本の父であり、初代ウルトラマンである黒部進からの手紙が披露された。
手紙には「60年という長い年月、光が途絶えることなく続いたのは間違いなくファンの皆さんのおかげ」という感謝の言葉とともに、娘・吉本への深い愛情がつづられていた。そして「君がティガのヒロインに決まった時、誇らしく思う反面、少し心配もありました。だけど、君は立派に駆け抜けた。ヒロインとして多くの子どもたちに勇気を与えた君は、私の自慢です」
そして手紙を代読する桜井に対しても「ロコちゃん、私の言葉を美しい声で届けてくれてありがとう。科特隊のみなさんは苦楽を共にしたかけがえのない存在です」と呼びかけると、「ウルトラマンの物語はこれからもずっと続いていきます。時代が変わっても、わたしたちの物語がともに光り続けますように。ウルトラマンはいつでも君たちのそばにいます」と締めくくった。
手紙を涙声で読み上げた桜井。そして、涙ながらに聞き入っていた吉本は「父が今もここにいたらどんなにいいか」と声を詰まらせると、桜井も「今日は黒部さんと一緒に60周年を迎えられるかと思っていましたけど、ちょっと無理なようなので。お手紙を読ませていただきました。でもこれからは(吉本)多香美ちゃんが引き継いでウルトラの魂を守ってくれると思います。今後ともよろしくお願いします」と会場に呼びかけ、拍手が送られた。
吉本によると、現在86歳の黒部は、さまざまな事情から今後ファンの前に姿を見せることは難しいかもしれないと前置きしつつ、吉本がイベントに出席するにあたり「お前に頼んだぞと言われてここに来ました」と明かす。
さらに「父はハヤタであり、ウルトラマンであり……」と続けた吉本は「でも光を与えてくださったウルトラマンは永遠の存在だと思います。父と一緒にウルトラマンの歌を歌ったり、シュワッチと言ってというと言ってくれたりとか。そんな父も今日のことを喜ぶと思います。ウルトラマンは永遠の存在だと思います。これからも皆さんの心の中に常にウルトラの光が輝いていますように。世代を超えて、みんなが力強く、自分の人生を乗り越えて生きて。この人生を生きて良かったなと思うような人生を送っていただけたら」と力強く語りかけ、イベントを締めくくった。(取材・文:壬生智裕)


