『キングダム』信VS万極戦「戦の矛盾と向き合う」 佐藤信介監督が裏側明かす

『キングダム 魂の決戦』より信(山崎賢人)VS万極(山田裕貴)戦
『キングダム 魂の決戦』より信(山崎賢人)VS万極(山田裕貴)戦 - (C)原泰久/集英社 (C)2026映画「キングダム」製作委員会

 原泰久の人気漫画を実写映画化したシリーズの第5弾『キングダム 魂の決戦』(上映中)で監督を務めた佐藤信介が、同作の見せ場となる主人公・信(山崎賢人/※「崎」は「たつさき」)と敵将・万極(山田裕貴)の激闘シーンに込めた熱い想いを明かした(※一部ネタバレあり)。

【画像】新キャラ続々!『キングダム 魂の決戦』場面写真

 七つの大国が覇権を争う紀元前の中国春秋戦国時代を舞台に、天下の大将軍になる夢を抱く主人公・信と、中華統一を目指す秦国の若き王・エイ政(吉沢亮/※エイ政のエイは、上に亡、中に口、下左から月、女、迅のつくりが正式表記)を描く本シリーズ。今回は趙・魏・楚・燕・韓・斉という秦以外の全ての国が手を組んだ“合従軍”が秦国へ侵攻。秦軍20万と合従軍50万の大軍勢が、秦の国門・函谷関(かんこくかん)で戦うことになる。

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 日本映画界で屈指のスケールで描かれる『キングダム』シリーズについて、「物語のテーマはもちろん、毎作品それぞれに、ビジュアル的にものすごく努力をしなくてはいけない巨大なテーマに向かってきたシリーズなんです」とさまざまな挑戦に取り組んできたことを語る佐藤監督。今回は「函谷関は巨大な壁のような国門で、そこを巡って大軍勢同士が戦うというのは、武者震いするほど取り組みがいがあるテーマ。世界に出しても恥ずかしくない、今まで見たことない作品を作りたいと思いました」と振り返る。

秦国に凄まじい恨みを抱く万極(山田裕貴)

 そんな『キングダム』らしい大きなテーマを持つ“合従軍編”の中でも、『魂の決戦』で描かれるのが、今回の物語的なテーマともいえる、秦国の千人将となった信と、趙国の最強の将軍の一人である万極の死闘。趙はかつての“長平の戦い”で敗れた際に、40万人の投降兵を生き埋めにした秦に凄まじい恨みを持っており、当時の数少ない生き残りの一人である万極は、「今回の物語としてのテーマを背負うキャラクター」だと佐藤監督は語る。

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 「万極は、これまでのシリーズ中で最も悪魔のように残酷・残忍な武将ではありますが、そのモンスターのような存在を生んでしまった背景には秦国が趙の兵を大虐殺した過去がある。戦にはそれぞれの国の大義や正義があるのでしょうが、個々の戦場や末端の部分ではどちらが正義かわからなくなる部分があり、そういう恩讐の連鎖の中に生まれてしまう人物像のシンボルが万極だと、今作で明らかになる。復讐心に取りつかれたまま髪が白くなるほど放浪して精神が歪んでしまった万極の叫びは、現代社会でも起きている問題や人間の本質を垣間見せるキャラクター。実は今回の『魂の決戦』は戦の矛盾を描こうとしていて、シリーズ中でも特別な作品になっていると思う。万極と対峙した信が、戦の矛盾に直面してどう向き合うのかを表明する作品になったんじゃないかなと思います」

~以下、一部映画のネタバレを含みます~

 秦の国王・エイ政は、中華を統一することで戦乱の世を終わらせたい悲願があるが、そのために戦をしているという矛盾を孕んでいる。末端のいち将兵でしかない信だが、戦に正義はないことをわかった上で、エイ政の目指す世界を信じて、万極と戦うことになる。本作のテーマが絡む信と万極の戦いをどう表現したのか?

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 「できるだけ今までの戦いの流れとは違う世界観を作りたいと思いました。例えば戦う舞台も、万極がかつて家族と共に生き埋めにされかけた穴を連想させる窪地にして、まさに地の底に落ちて戦っているように描いています。そして信はその穴に落ちた時、まるで生き埋めにされかけた少年時代の万極の視点に立ったかのような幻覚を見る。これらは映画オリジナルですが、僕らは原作を尊重しながらも、映画ならではの表現や映像的なアイデアを随所に取り入れています。今回は大人数VS大人数の大戦闘も描く一方で、信VS万極という個々の戦場のミニマムかつ精神的な末端の戦いも描いている。『魂の決戦』とは、むしろこの極小の戦いを指していて、そこと極大の戦いのバランスが、今回の肝になっているともいえますね」

 信と万極との“魂の決戦”では、予告編でも使われている信ならではのアクションも描かれる。

 「かつて親友の漂が信を“誰よりも高く飛ぶ”と評したように、信は飛ぶことが得意技なので、第1作の時からアクション監督の下村勇二さんにも、“信はとにかく飛ぶんです!”ということをアクションの特徴として話しています。僕は、『キングダム』のアクションは縦の立体的な動きを重視していますが、信は特にそうです。僕らスタッフはあくまで映画的な画作りをしているので、原作通りの画を撮っているわけはありませんが、やっぱり僕らも原先生の原作が好きだし、そのコアになるような極めつけのカットや名場面は、実写としても撮ってみたかったり、見てもらいたいという思いもある。だから信が万極に切りかかる最初の一太刀は、真正面から原作のイメージで撮っています」

 佐藤監督は「信と万極との戦いは、本作のテーマをビジュアル的にも描いた場面」だと語り、出来栄えに大きな自信が窺えた。(取材・文:天本伸一郎)

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