ギャバン・インフィニティを極限までボロボロに…映画『超ギャバン』福沢博文監督が描くアクションの裏側

19日に最終話を迎えた特撮ドラマ「超宇宙刑事ギャバン インフィニティ」の集大成を飾る映画『超宇宙刑事ギャバン インフィニティ 太陽が泣いた日』。ギャバン・インフィニティに“蒸着”する銀河連邦警察捜査官・弩城怜慈(長田光平)が、全ギャバンの抹殺を目論む最強の敵・ギャバンキラー(高橋努)に立ち向かう。テレビシリーズに引き続き、映画のメガホンを取った福沢博文監督がインタビューに応じ、東映の新ヒーローブランド「PROJECT R.E.D.」初の映画となる本作の撮影秘話、見どころとなるギャバン・インフィニティとギャバンキラーの激闘の裏側を語った。(取材・文:編集部・倉本拓弥)
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「超ギャバン」としての大きな“区切り”
Q:本作は「PROJECT R.E.D.」初の劇場版となります。福沢監督が今作で掲げた目標や、自身に課した挑戦などはありますか?
福沢博文監督(以下、福沢監督):約30分という本編尺の中で、「超宇宙刑事ギャバン インフィニティ」の世界観や全体像を、映画1本でしっかりと描き切ることを意識しました。ですので、テレビシリーズをまだ観ていない方がいたら、ぜひ、この作品をきっかけに観ていただきたいと思いますし、テレビシリーズを毎週追いかけてくださった視聴者のみなさんにとっては、1つの大きな“区切り”となる作品を目指しました。
Q:映画公開日は最終話放送の翌週となり、まさに「超宇宙刑事ギャバン インフィニティ」の集大成的な作品と感じます。
福沢監督:だからこそ、物語のエンディングをどういう形で着地させるか、製作に入る前からすごく考えていました。実は、映画の撮影がテレビシリーズ最終話よりも先だったんです。結果として、最終話も映画と似た方向性の締めくくりになりましたが、映画が先にある程度決まっていたおかげで、ブレずに進められたのは良かったです。最終話を先に観て、映画館に来るファンのみなさんが、展開が似すぎて既視感を感じてしまわないよう、テレビシリーズと映画のバランス調整にはかなり気を配りました。
Q:久慈麗人プロデューサーや脚本の冨岡淳広さんとは、どのように物語を構築されたのでしょうか?
福沢監督:企画の初期段階では、時系列をどこにするか話し合いました。当時はまだテレビシリーズ最終話の脚本が上がっていなかったので、最終話よりも後の時系列は描きづらいという事情がありました。そこで、最終話直前の展開にうまく滑り込ませるようなエピソードを狙うことにしました。
タイトルにもある「太陽」は、プロデューサーチームから出たアイデアです。映画『太陽を盗んだ男』のような、ある種の重大事件が絡む物語です。宇宙刑事の物語ですから、そうした刑事ドラマとしてのサスペンス要素や事件性を絡めて展開したいという狙いです。それを受けて、冨岡さんが具体的な物語の形に落とし込んでいきました。
Q:事件の中心人物であり、“全ギャバン抹殺”を掲げる長谷誠のキャラクター像はどのように構築されたのでしょうか?
福沢監督:長谷誠のバックボーンは、冨岡さんが脚本でしっかりと組み立ててくれました。とある不幸を背負った怜慈の元先輩刑事という設定です。彼が怜慈とどう関われば、最もドラマチックになるかを話し合いました。登場人物のポジショニングを先に決めたことで、なぜ彼が不幸な道を歩み、このような事件を引き起こすに至ったのかという動機が自然と積み上がり、強烈なキャラクターが完成しました。
Q:長谷誠を演じた高橋努さんの演技はいかがでしたか?
福沢監督:こちらの意図に対する飲み込みが非常に早く、ものすごく安心感がありました。劇中では、高橋さん本人にかなり激しいアクションも演じてもらう必要があったのですが、もともと身体を動かすことに長けている方なので、全く心配ありませんでした。初日の撮影が怜慈と戦う山場のシーンだったのですが、非常に抜かりのない動きで完璧に応えてくれましたし、初日に演技を見た段階で「この人なら絶対に大丈夫」と確信しました。
Q:ギャバンキラーのビジュアルは、「宇宙刑事ギャバン」に登場するハンターキラーのオマージュではないかとSNSで話題になっています。
福沢監督:ギャバンキラーのデザインは、キャラクターデザイナーからの提案でした。「宇宙刑事ギャバン」に登場するハンターキラーのオマージュとして、片目が露出して人間の表情が見える状態のデザインはどうかと提案をいただき、「それは面白い!」と採用しました。撮影では、常に顔が出ている状態だとキャストの負担も大きいため、顔が見える演出はここぞというシーンに絞って、効果的に見せるようにしています。
ボロボロであることのカッコよさ
Q:怜慈と長谷の一騎打ちは、本作の見どころの一つです。アクションシーンの画づくりにおいて、どのようなことを心がけましたか?
福沢監督:とにかくギャバン・インフィニティをボロボロにしたいという強い思いがありました。近年の特撮作品では、ヒーローが一方的に打ちのめされたり負けたりする姿を見せるのは塩梅が難しくなっています。
しかし、1970年~1980年代の特撮を観て育ってきた私にとっては、ボロボロに傷つき、限界を迎えながらも、絶対に負けない強い心を示すヒーローの姿がカッコよく見えるんです。“ボロボロであることのカッコよさ”を、劇場版だからこそ絶対に表現したい。その結果、ギャバンキラーという強大な敵がギャバン・インフィニティを極限まで追い詰める描写にしました。
Q:ギャバン・インフィニティのコンバットスーツが、これまでにないほど損壊した姿には衝撃を受けました。
福沢監督:表現としてのカッコよさはもちろん、限界を迎えていると一発で視覚的に伝わります。今回はコンバットスーツの装甲が壊れ、蒸着者の肌が露出する状態で戦うという演出を取り入れました。スーパー戦隊シリーズでもスーツの破れなどは表現してきましたが、メカニカルなスーツの破損は、今までなかなか実現できなかった挑戦です。生身でぶつかり合うからこそ、怜慈自身が戦いの中で感じている痛みや、相手に訴えかけたい感情がダイレクトに観客に伝わるのではないかと考えました。
Q:特撮ファンにはお馴染みのマスク割れ(マスクが破損して素顔が見える演出)も登場します。主演の長田光平さん(弩城怜慈役)が、マスク割れ状態のままアクションを続けるシークエンスは息をのむ迫力でした。
福沢監督:私がこれまで手がけてきた作品の中でも、キャスト本人がマスク割れ状態でアクションをしている時間は一番長いと思います。
後半はほとんど長田くん本人にコンバットスーツを着てもらい、カットの頭から終わりまで、一連のアクションシーンをワンカットで通して演じてもらいました。せっかく本人が体を張って演じてくれているので、敵にしがみつきながら感情を剥き出しにして訴えかける「生身の表情」をカットを細かく割らずにしっかりと見せたいと考えていましたし、あの過酷な状況下でも、長田くんは一切集中を切らさずに見事に応えてくれました。
実は、長田くんと全く同じシークエンスをスーツアクターの伊藤茂騎さんにも演じてもらっています。完成版でどちらのカットを採用するかは編集の都合もありますが、私の中では、この戦いがどれほど感情を揺さぶるものなのかを、キャストとスーツアクターの2人に同じ量だけ味わってほしかった。長田くんも立ち上げ当初からスーツアクターと二人三脚でギャバン・インフィニティを表現したいと言ってくれていましたから、まさに2人の思いが1つの形として結晶したシーンになったと感じています。
Q:マスク割れの演出において、ビジュアル面などでこだわったポイントはありますか?
福沢監督:マスク割れは技術的にすごく難しいんです。役者の目の位置とマスクの覗き穴の位置が少しでもずれると、顔のバランスがおかしくなってしまいます。カメラアングルや位置については、そのズレが目立たないベストなラインを狙って撮影しました。
マスク割れの醍醐味は、マスクの無機質なデザインと、その中に隠された人間のリアルな感情との強烈な対比にあります。本作は「感情」が1つのテーマになっていますが、激しい怒りと同時に、極限状態で涙を流す怜慈の素顔が見られます。怒りに満ちたフルパワーモードのマスクの半面と、泣いている怜慈の表情。このドラマチックなコントラストは、マスク割れだからこそ描けた今作のこだわりです。
「PROJECT R.E.D.」第1弾で得た収穫
Q:別次元のギャバンたちが一堂に会するのも、劇場版ならではの大きな見どころです。演出面でこだわった配置やポイントを教えてください。
福沢監督:テレビシリーズ終盤でもキャラクターが集結する展開があったため、映画ではそれとは異なる関係性の深さを見せたいと考えました。カレル局長は普段、執務室から出てくることがなく、別次元のメンバーとはほとんど対面していません。そこに天羽琉唯たちが集まり、同じ空間に9人ほどのメンバーが一同に会する。彼らが揃ったときに「誰がどこに立っているべきか」を考えるのは、演出として非常に面白い作業でした。
写真1枚を撮るにしても、人間の性格は配置に出るんですよね。中心に行きたがる人もいれば、端っこや後列を好む人もいる。かつて「侍戦隊シンケンジャー」などでアクションを担当していた頃から、キャラクターの性格やその場の状況、心理状態によって、立ち位置は絶対に変えなければいけないと考えていました。今回も、ただ並べるのではなく、画面全体を見たときに誰がどのポジションにいるかだけで、それぞれのキャラクターのバックボーンがなんとなく伝わるようにこだわりました。
Q:「超宇宙刑事ギャバン インフィニティ」は、TV放送は最終回を迎え、映画で一つの区切りを迎えます。福沢監督にとっても「PROJECT R.E.D.」という新プロジェクトの立ち上げは大きな挑戦だったと思いますが、本作を通じて得た収穫は何でしょうか?
福沢監督:今回のプロジェクトはとにかく登場人物が多く、キャラクターが非常に魅力的です。彼らを今回限りで終わらせるのではなく、これからの展開にどう繋げていけるか。愛すべきキャラクターたちをしっかりと生み出すことができたのは、本作の大きな収穫だと感じています。琉唯さんのような大人の女性もいれば、意志の強い女性、可愛らしい女性もいるように、多種多様なキャラクターが分散して存在しています。観てくださるみなさんの中に、必ず一人か二人は「このキャラクターが好きだ!」と深く刺さる人物が見つかるはずです。ぜひお気に入りのキャラクターを見つけて、これからの彼らの歩みを追いかけてもらえたら嬉しいです。
Q:久慈プロデューサーは「ギャバンはまだまだ終わらない」と発言しております。「PROJECT R.E.D.」の今後の展開に期待することはありますか?
福沢監督:本作は、長いプロジェクトのスタートに過ぎません。かつての往年の「ギャバン」の時から愛してくださっているファンの方々もたくさんいらっしゃいます。ただ、過去の作品と全く同じ方向性で繋げてしまうと、新しいプロジェクトとして新規のスタートを切ることが難しくなってしまいます。だからこそ、これまでの伝統をリスペクトしつつ、今回はあえて新しいスタートラインとして作品を構築しました。ここを起点に、ここからまたプロジェクトがさらに大きく育っていってくれることを期待しています。
Q:最後に、これから映画を観るファンに向けてメッセージをお願いします。
福沢監督:「超宇宙刑事ギャバン インフィニティ」は、昔のシリーズとは少し異なる味付けになっているため、最初は戸惑う方もいるかもしれません。しかし、今の時代だからこその新しいアプローチやキャラクターの魅力にあふれる、絶対に楽しんでいただける作品になっています。「PROJECT R.E.D.」のさらなる展開を楽しみにしていただきつつ、まずはこの映画を大スクリーンで全力で楽しんでください。
映画『超宇宙刑事ギャバン インフィニティ 太陽が泣いた日』は全国公開中(映画『仮面ライダーゼッツ さよならのミッション』と2本立て上映)



