「ブラッサム」石橋静河、何度も救われた宇野千代の言葉 「壊れては立ち上がる」主人公に自身重ねる

「ブラッサム」石橋静河が演じる主人公・葉野珠
「ブラッサム」石橋静河が演じる主人公・葉野珠 - (C)TBS

 小説家で随筆家の宇野千代をモデルにした連続テレビ小説「ブラッサム」(NHK総合・月~土、午前8時~ほか)で、主人公・葉野珠(はの・たま)を演じる女優・石橋静河。クランクインから約半年、いよいよ9月28日より放送がスタートする。長丁場、そして膨大な撮影量という朝ドラ主演の宿命に、石橋はどんな思いで挑んでいるのだろうか。石橋は、古い価値観の残る時代に自分の生き方を模索する主人公と、表現者として壁に挑み続ける自身の姿を重ね合わせながら、日々の撮影で得たかけがえのない喜びを語った。

【画像】大河にも出演していた!「ブラッサム」ヒロインの石橋静河

圧倒的な撮影量の先に見つけた、役と向き合う贅沢な時間

(C)NHK

 「ブラッサム」は、大正から昭和にかけて活躍した作家・宇野千代をモデルにした物語。女性の生き方に多くの制限があった時代に、自らの足で人生を切り拓いていく主人公の波乱万丈な生涯を描く。石橋は、圧倒的な行動力と好奇心で困難を乗り越えていく主人公・葉野珠を演じている。

ADVERTISEMENT

 朝ドラの撮影現場は、尋常ではないペースで進行していく。2018年放送の「半分、青い。」以来、8年ぶりの出演にして座長という重責を担う石橋は、日々押し寄せる膨大なスケジュールに身を投じてきた。絶え間なく続く本番の連続は、時に心をすり減らすほどの重圧となるが、石橋はかつてないほどの成長の兆しを感じ取っていた。

 「最初はやはり撮影量の多さに圧倒されてしまったのですが、このシーンをやって、次は気持ちを新たにして次のシーンをやって……と、どんどん進めていくことは、この環境だからこそ学べることで。この経験によってどんなことを得られたのかは、やり終わってみないと分からないですが、とにかく自分が日々たくましくなっていっているのを感じています」

 長期間にわたって一人の人物の人生を生き抜くことは、俳優にとって稀有な経験となる。ドラマチックな出来事だけでなく、日常の些細な動作の中にまでキャラクターの息遣いが宿っていく過程に、石橋は大きなやりがいを見出している。

 「これだけ一人の人生の長い時間を演じることができる作品は、多分他にないと思うんです。特に私は、洗濯や縫い物をしている時間とかの何気ない瞬間がきっちりと描かれるのがすごく嬉しくて。そういうふとした瞬間で、実は普段私たちの感情って動いていたりするじゃないですか。そういう部分まで演じられるのはとても贅沢だなと感じます」

強烈な父と愛情深い母…共演者の芝居に心が震える瞬間

(C)NHK

 劇中では、珠の人格形成に多大な影響を与える家族との関係性が色濃く描かれる。中でも、渡部篤郎が演じる父・清治は、周囲を震え上がらせるほどの威圧感を持つキャラクターだ。だが、石橋はただ怯えるだけではなく、その奥にある複雑な人間らしさをすくい取ろうとカメラの前に立っていた。

 「宇野千代さんが父親について『ドストエフスキーの小説に出てくる狂人のようだった』と書かれていたんです。もちろん怖いし厳しいっていう部分はたくさんあるけれども、そこにお父さんの孤独だったり悲しそうな後ろ姿だったりを見て、もっと知りたい、何を考えているのか教えてほしいという思いが強くあると思いながら演じました。渡部さんがとても優しい目をされているので、珠がただ怖いお父さんだと拒絶するんじゃなくて、分かり合いたいっていう気持ちになるのはすごく感じられました」

ADVERTISEMENT

 一方で、封建的な家庭にあって珠の最大の理解者となるのが、国仲涼子が演じる継母・リョウだ。娘が自立への第一歩を踏み出す重要なシーンでは、相手の芝居から放たれる熱量に魂を揺さぶられたという。

 「国仲さんが爆弾を持ってきたって感じるぐらい、ものすごくパワフルなんです。珠に対する愛情の爆弾というか、『あなたは私の娘だ。全て肯定する』という母の強さに圧倒されてしまって、お芝居っていう感じがしなかったです。自然と自分も引き出されるような、本当に素晴らしい瞬間を作ってくださいました」

主人公と重なる表現者としての思い

(C)NHK

 まだ何者でもなかった少女が、少しずつ自我を目覚めさせ、激動の時代へ飛び込んでいく。周囲との軋轢に悩み、失敗や挫折を繰り返しながらも、そのたびに不屈の精神で這い上がっていく珠の姿は、石橋自身の生きる姿勢と深くリンクしている。

 「珠が何者かになる瞬間に、自分が立ち会えている感覚がすごくあって。周りからのプレッシャーで崩れて、それがさらに強くなって立ち上がって……という、何度も壊れて作ってということを繰り返しているような感覚があって。そういう珠を演じるのがどんどん楽しくなってきています」

 現状に満足することなく、常に新しい境地を追い求める俳優という職業もまた、果てしない試行錯誤の連続だ。困難に直面したとき、石橋は決して下を向くことなく、その痛みを次へのステップへと昇華させていく。

ADVERTISEMENT

 「私自身ももっと面白い表現がしたいし、面白い人になりたいって思っていくと、やっぱり壁にぶつかる瞬間があります。そこで苦しむけど、それも成長している証。自分がブレイクスルーしたと思ったらまた次の壁が現れて。自分が壁に当たっている瞬間も『これは次また成長する機会なんだ』って思うと、苦しいですけど、それが1つの喜びではあります」

珠のモデル・宇野千代が教えてくれたこと

(C)NHK

 主人公のモデルとなった宇野千代は、どれほど過酷な状況にあっても決してユーモアと前向きな心を忘れなかった女性だ。タイトルである「ブラッサム」という言葉を発すると、自然と口元が笑顔の形に開く。その響きに惹かれると語る石橋は、多忙を極める撮影現場で、モデルとなった偉人の底抜けの明るさに何度も救われてきた。

 「千代さんが骨折をして入院しているときも『ご気分はいかがですか』と聞かれて『最高です』っておっしゃっていたとか。自分をその状態に持ち上げていくっていうことがすごいことだなと思い、私も言ってみようと思って。疲れたときに、いつでもその状態を自分が選べばいいんだというのを千代さんから学びました」

 自由が制限された時代に、自らの意志で道を切り拓いた主人公の生き様は、現代を生きる人々の背中を力強く押してくれるはずだ。石橋は「自由がなかったからこそ獲得していった強さっていうことを、この作品の中でも葉野珠として伝えていきたいですし、そういう姿を見て『私ももう一歩前に勇気を持って進んでみようかな』というふうに見てもらえたらいいなと思いながら撮影しています」と物語を楽しみにしている視聴者に向けて熱いメッセージを送った。(取材・文:磯部正和)

  • mixiチェック
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • ツイート
  • シェア
  • Googleで優先するソースとして追加
ADVERTISEMENT