「豊臣兄弟!」山口馬木也、宮崎あおいと手をつないで立ち回り!柴田勝家の切ない恋振り返る

第33回より柴田勝家(山口馬木也)と市(宮崎あおい)
第33回より柴田勝家(山口馬木也)と市(宮崎あおい) - (C)NHK

 大河ドラマ「豊臣兄弟!」(NHK総合・毎週日曜午後8:00ほかで放送中)で柴田勝家を演じた山口馬木也。主演を務めたインディーズ映画『侍タイムスリッパー』(2023)が社会現象となり、大河ドラマへの出演は「北条時宗」(2001・北条顕時役)、「八重の桜」(2013・榎本武揚役)、「麒麟がくる」(2020・朝比奈親徳役)、「鎌倉殿の13人」(2022・山内首藤経俊役)に続いて5度目となる。30日放送・第33回「北庄(きたのしょう)城の別れ」では、宮崎あおい(※崎=たつさき)扮する市と共に壮絶な最期を遂げるさまを全身全霊で演じきった山口が、劇中の勝家を回顧し、「“老害”でいてやる」という言葉に込めた生きざまや、過酷な肉体改造、そして市との切なく美しい恋の裏側まで、勝家ゆかりの地を巡る旅で見つけた究極の答えとともに、激動の撮影現場を振り返った。

【画像】涙なしに見られない…市&勝家の最期

最強の「老害」として生き抜く

 大河ドラマ「豊臣兄弟!」は、豊臣秀長(仲野太賀)を主人公に据え、激動の戦国時代において豊臣秀吉・秀長兄弟がいかにして天下統一を成し遂げたのかを描き出すストーリー。本作で、織田家の重臣であり、のちに池松壮亮演じる秀吉の前に立ち塞がるのが “鬼柴田”こと柴田勝家。武骨で実直な猛将の生きざまが反響を呼んでいる。

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 信長(小栗旬)亡き後の熾烈な覇権争いにおいて、若き才能たちの前に立ちはだかる分厚い壁。激動の時代を不器用に駆け抜けた猛将の役づくりの根底には、現代社会では忌避されがちな、ある強烈なテーマが据えられていた。

 「最初、勝家をやる時に『最強の“老害”でいてやろう』と思っていたんです。僕らの時代には、上からガンガン言って、時には叱ってくれる大人たちがいたじゃないですか」

 とは言いつつ、どれほど重厚な鎧をまとおうとも、抗えない年齢の変化は容赦なく押し寄せる。かねてから思いを寄せ、夫婦となった市と囲む穏やかな食卓が、頑なだった男の心を静かに溶かし、大いなる決断へと導いていった。

市の手料理を食す勝家

 「お市様との静かな食事のシーンを経て、自分はもう最前線の人ではないんだと薄々感じ始めました。前田利家(大東駿介)に「わしは親父殿に上様の跡を継いでほしかった!」「親父殿とともに新しき世を作りとうございました」と言われた時も同じで、自分がこれまで抱えていたものを、次にバトンとして渡さなきゃいけないんだなっていう心境に、自然と変化していったんです」

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人生で初めて体を鍛える

 現代まで残っている肖像画の面影を色濃く反映したビジュアルは、凄みのある風貌で視聴者を圧倒した。武骨な男を、説得力を持って体現するため、カメラの回っていないところでも並々ならぬ努力が密かに重ねられていた。

 「動ける体にはしておかなければと思い、人生で初めて体を鍛えてみました。ただ、お市様と最後にお城から身を投げるという脚本を読んだ時、最初は全く画が見えず消化不良だったんです」

 史実として言い伝えられている切腹ではなく、炎の中で共に散るという異例の最期。見えない真実を追い求め、山口が赴いた越前・福井への旅路の果てに、霧が晴れるような決定的な瞬間が訪れる。

 「何をもって二人の心が動いていくのかが、どうしても見えなくて。でもゆかりの地を回り、勝家とお市様が一緒に眠っているお墓を目の当たりにしたんです。そのとき、脚本の行動がピンときた。そのことで身を投げるという最後の行動が鮮明になっていきました。構造自体は違うのかもしれませんが、俳優としてはその事実がすごく重要な気がしたんです」

宮崎あおいと“手つなぎ”の立ち回り

手をつなぐ勝家と市

 クライマックスとなる北庄城での死闘。そこには、これまでの時代劇の常識を覆す壮絶かつロマンチックな演出が待ち受けていた。大きな制約を課す無謀とも言える挑戦は、山口を未知の領域へと連れ出していく。

 「当初は、お市様を安全な場所に移動させ、勝家が立ち向かうという予定でした。でも監督から『勝家が自らお市様の手をつなぎ、どうしてもその手を離したくないという思いのまま、立ち回りをやってくれないか』と熱い思いをぶつけられました」

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 極限の状況下で剣を振るう中、二人の間には作られた芝居を超越した奇跡のような時間が流れる。激しい戦いの最中、魂が触れ合う瞬間に包まれたのは実に不思議な感覚だった。

 「勝家としてお市様を守っているはずなのに、つないだ手から“あ、逆に守られているな”という感覚が伝わってきたんです。すべてにおいて嘘がなかったですね」

 その真実は、何気ない日常の一コマにも如実に表れていた。山口は「お市様が生まれて初めて作ってくれた料理のシーンでも、美味しいはずがないのに、お皿に残った最後の一粒まで無意識に食べてしまっていて。気持ちが一回も離れずに進んでいけました」と、芝居というフィクションを凌駕し、本能に近い感覚が山口には宿っていたという。

才能への嫉妬を役づくりに生かす

北庄城に駆け付けた小一郎(仲野)

 天下を争う秀吉(池松壮亮)と小一郎には、物語序盤から強い敵意を持っていた勝家。こうした感情に対し、山口がとったアプローチは、人間の生々しい感情を剥き出しにするものだった。

 「池松さんと太賀さんの才能には、実は本気で嫉妬していたんです。この年齢でこんな見事な芝居ができるのかと腹が立つから、その憎たらしいという感情を役づくりに利用してやろうと(笑)」

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 しかし、同じ空気を吸い、刃を交え続けた1年という歳月は、いつしか激しい嫉妬を深い敬意へと変えていく。

 「彼らと関わっていくうちにその才能を認め、最後には素直に道を譲ることができました。仲野さんの芝居は、言葉を交わすだけで心を射抜かれたと感じるほど人を感動させるんです」

 若き才能と全力でぶつかり合えた背景には、織田信長という心から崇拝する主君のカリスマ性が、絶対的な拠り所として存在していた。

 「小栗さんの信長様は、役者としてのカリスマ性が凄まじく、あの方の下なら何の心配もいらないと最初から安心しきっていました。織田の家臣団の中では“1回は蹴られてみたい”という人が続出していたくらい、絶対的な存在でしたから」

 全身全霊で“鬼柴田”に挑んだ山口馬木也。若き才能への生々しい嫉妬すら芝居の糧にし、愛する市と永遠の絆を結んだその姿は、単なる猛将の死を超えた深い人間ドラマを生み出した。最期まで己の生きざまを貫き、潔く次世代へバトンを託した誇り高き男の散り際は、本作の名場面の一つとして、視聴者の心に長く熱く刻まれることだろう。(磯部正和)

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