叶姉妹、道に100円が落ちていたら? 規格外の金銭哲学に鈴鹿央士タジタジ『藁にもすがる獣たち』

「道に100円が落ちていたら、どうしますか?」──鈴鹿央士の問いに、叶姉妹はこう答えた。「見えません」。映画『藁にもすがる獣たち』(9月25日公開)の公開記念企画として実現した鈴鹿と叶姉妹のスペシャル対談が、東映映画チャンネル(YouTube)で公開中だ。1億円をめぐる欲望の物語に、日本随一のセレブリティが返した答えは、笑えて、そして不思議と沁みるものだった。
主人公が弱小大学生YouTuberという設定にちなみ、鈴鹿はダイアン・津田篤宏、青木マッチョ、デニス、令和ロマン、高比良くるまの各チャンネルを渡り歩く“5大”YouTube横断企画を敢行。最後に伏せられていた東映映画チャンネルのシークレットゲストが、東映プロモーション史上最大級の超絶セレブ、叶姉妹だった。
鈴鹿がまず投げかけたのは、本作の出発点そのものの質問だ。「道に1億円が入ったバッグが落ちていたら?」。ところが恭子は、そもそも道を歩かないという。「姉は基本的に外は歩かないのです。基本的にドア・トゥ・ドアなので」と美香。話はいつしか「1億円をどう持ち運ぶか」へと横滑りし、姉・恭子が示した答えが秀逸だった。紙袋を二重にして5000万円ずつに2つに分ける。大事なのは持ち手が破れないこと──劇中でボストンバッグに乱雑に詰め込まれた札束を、「あんな雑に入れませんし」「揃えてきちんとブロックで」と鮮やかに一蹴してみせた。
そして冒頭の100円である。姉・恭子は普段、正面から斜め45度以上に顔を上げた姿勢で歩く、と美香が明かす。だから足元の100円は視界に入らない。「100円はもちろん、とても大切なお金。だけど見えなかったら仕方ない」。笑いを誘う答えでありながら、これは後半で明かされる彼女たちの人生哲学の伏線でもある。
「もしも今、全財産を失ったら何から始めますか?」という問いにも、恭子は動じない。元通りにするだけ、と。美香もそれに賛同する。そもそも失うことができるのか、とすら思う、と。そして流れが反転する。「私にとって一番大切なものは何だと思います?」。逆質問に鈴鹿は「お金ですか?」と答えて即座に撤回、答えを言い当てられずタイムアップ。恭子が明かした正解は、隣に座る妹・美香だった。優先順位は1番が美香、2番がお金、3番が猫。「美香さんのように優しい女性は、世界中にいないと思います」と語る姿に、対談の空気は一変する。
圧倒された鈴鹿は、いつしか本気の相談を始めていた。仕事を続けるか迷っている人に「辞めていい」と言うのが優しさとされる風潮に、自分は違和感がある。しんどくても続けてきたから今この場所にいる。あと1日頑張れば見える景色があるかもしれないのに、と。じっと聞いていた叶姉妹の答えは、あまりに意外なものだった。何も言わず、そっとチョコレートを差し上げればいい。人の人生に言葉で関わるなら、その責任を持つ覚悟が要る。持てないのなら、黙って甘いものを渡すほうが優しい──見えないものは見えないままでいい、という100円の哲学が、ここで静かに人間観へと接続される。
この日の装いは、姉・恭子がヴェルサーチのドレスにロジェ・ヴィヴィエのシューズ、ジバンシィのヘッドドレス。妹・美香はアレックス ペリーのドレスにアレキサンダー・マックイーンのシューズ、ヴェルサーチのヘッドドレスを合わせた。全身をゴールドで統一したのは「お金にまつわるお話ということなので」という理由からだという。衣装はすべて私物で、スタイリングは恭子が手がけている。「私物じゃないと、サイズも好みも絶対に合わない」──その一言もまた、彼女たちの美学を端的に物語っていた。
叶姉妹は原作小説と、先に映像化された韓国版もチェックした上で本作を鑑賞済み。日本版ならではの空気を評価し、「ラストはおそらく予想されないのでは」と太鼓判を押した。鈴鹿の演技についても、心の機微の描き方が印象深いと絶賛している。
対談後、叶姉妹は公式Instagramでオフショットを公開。実際に会った鈴鹿は「映像やお写真などで見る事よりも礼儀正しく」「クールで甘いハンサムな笑顔」だったといい、恭子は、その大きな瞳の奥の輝きに、救いようのない世界を一瞬でも癒やす力強さを見たと綴った。セリフではなく表情で魅せる演技力の素晴らしさだ、と。
1億円を拾ってしまった青年が、欲望の獣たちに囲まれていく物語。もし自分だったらどうするか──叶姉妹の答えを聞いたあとなら、その問いはきっと少しだけ違う響きを持つ。鈴鹿央士×叶姉妹のスペシャル対談は、東映映画チャンネルにて期間限定公開中だ。(編集部:下村麻美)



