真矢ミキ、『踊る大捜査線』沖田仁美が人生変えた 初登場から四半世紀「大変さも見えてきた」

織田裕二が主演を務める『踊る大捜査線』シリーズの14年ぶりとなる新作映画『踊る大捜査線 N.E.W. メトロポリスを駆け抜けろ!』(全国公開中)で、レジェンドキャラクター・沖田仁美を再演した真矢ミキ。2003年公開の映画『踊る大捜査線 THE MOVIE2 レインボーブリッジを封鎖せよ!』で管理官として初登場し、現在は警察庁長官官房審議官刑事局担当として重要な役割を担う沖田を、真矢はどのように作り上げ、育ててきたのか。再始動を果たした『踊る』シリーズへの思いとともに語った。
『踊る大捜査線』の歴史の重みが詰まった最新作
真矢は「本当に内容が濃く、しかもただ濃厚なのではなくて『踊る大捜査線』の歴史の重みがふんだんに詰まっていると感じました」と最新作を観た感想を口にする。『THE MOVIE 2』で主人公・青島俊作(織田)らを邪険に扱う本庁の管理官として登場し、失脚後は青島と室井慎次(柳葉敏郎)に感化され、彼らのフォローをする側に回った沖田。「台本を読んではいますが、『そうなるのね!』という驚きが非常にあり、映像って面白いと思いました。徐々に立体化して、立方体になって、全部が見えてくる感動があります。そして、そんなふうに余韻に浸って見ていると、自分が出てきてびっくりするんです」と笑う。
今作のオファーが届いた際には「久々にお祭りが来たか」と思ったという。一方で、真矢は2024年に2部作で公開された『室井慎次 敗れざる者』『室井慎次 生き続ける者』に出演しているので、沖田としては14年ぶりではない。「本広(克行)監督や亀山(千広)プロデューサーとはその時に会わせていただいていましたから、急な話ではなかったのですが、やはり織田さんが主役で戻ってくることは大きいです。主軸の重みがバシッと決まる気がします。撮影現場で青島コートを見た時には、こみ上げてくる喜びがありました。いい意味でざわつく感じです」
沖田と青島は、これまで共演シーンこそあるものの、実は正面から対峙したことは意外と少ない。「モニター越しとかが多かったんです。今回、しっかり話す場面があって、大変緊張しました。しかも、織田さんとご一緒するシーンの直前に、松下(洸平)さん演じる桜章太郎との微妙なシークエンスがありまして……」。沖田と桜は過去に何かあったような雰囲気が漂っており、その関係性が室井を手助けしたこともある。「沖田にはそういうシーンはいらないと思っていたのですが、本広監督が『ちょっとラブ感を出してください』って。気持ちが大変なことになっていました(笑)」
桜役の松下も織田との撮影現場で緊張していたそうで、3人で会話をしてその緊張をほぐしたという。「織田さんが『俺、前は尖ってた?』とおっしゃるから、『いえいえ、あの頃からチャーミングでしたよ』と伝えました」。『THE MOVIE 2』の撮影で雨が降った際、濡れる織田に傘を差しだしたら「ゴメン、敵だから優しくしないで」と言われた有名なエピソードも松下に伝えたという。「この方はオフの段階から世界に入られてるんだなと思ったお話などをしました」
また、物語の組み立ての面白さにも感嘆している。「君塚さん(脚本・君塚良一)の頭の中はどうなっているんでしょうか。迷路のように細かく、分析と経験と新たな発想が積み重なっていますよね。ファンのみなさんは考察してくれますが、考察不能になりそうなくらい緻密です。伏線が張り巡らされすぎていて、とても頭を使います」
沖田は「形状記憶の鋼」
沖田役では鋼(はがね)感を大切にしているのだと、真矢は言う。「最初は固いだけだったかもしれないですが、いまは形状記憶のしなやかな鋼です。『踊る』に出会ってから四半世紀弱、人間としても俳優としても紆余曲折いろいろあり、少しずつ変わってきていると思うんです。沖田もあの頃は言葉を選んでなかったな、みたいに思ってもらえるキャラクターになるといいなと思って演じています。今だったら『負け犬』とかは言わないだろうなって(笑)」と沖田の変遷を語る。
「これまで生きてきた中で、1990年代にバブリーに盛り上がって、毎日を華のように生きてきた時代があって、そこからバーンとバブルが弾けて。特に沖田としては、男女雇用機会均等法とか女性として時代の変化を感じながら生き方を考えてきたと思うんです」。警察は男社会であり、沖田は相当生きづらかったのだろうと述懐する。「年齢を重ねたからこそ、沖田の大変さも見えてきた気がします。でも、善良に年を重ねていくよりも、いろいろ頭打ちになりながら、反発も受けながら、質のいい大人になっていく感覚が見せられる役は、ありがたいなと思っています」。それは、長くやらないとできないことだ。「続くということは、こんなに濃厚な内容が表現できるのかと思いました」
今作で一番印象的だったシーンは、スリーアミーゴス(北村総一朗、小野武彦、斉藤暁)の登場だといい、「やっぱりいてほしいじゃないですか。柔軟すぎる先輩方の背中を見せていただいた感じです。役ではありますけど、お3方がそろって出てくださるとパワーがあります」と感嘆。今作では共演シーンはなかったが「お体のこともあると思いますが、多少無理をしてもトライしたいと思うのは『踊る』のすごさなんだと思います。お3方には無理じゃなかったのかもしれませんが(笑)」
また、織田にも年齢を重ねたことでの変化を感じるという。「以前とは違う魅力でやってくるんです。再放送で連ドラを観たりして、確かに時は経っていると思うのですが、不思議なもので、全部の瞬間が魅力的なんです。織田さんって、本当にアップデートの人なんだと思っています。無意識なんだと思いますが、太陽のような織田さんがいらっしゃることで、私も自然と沖田になれます」
自分を鼓舞する役
今、沖田と『踊る大捜査線』は真矢自身を鼓舞する存在だ。「『踊る大捜査線 THE MOVIE 2 レインボーブリッジを封鎖せよ!』で初めて参加した時、ひるまないはずの役なのに、ひるんでいたんです。ちょっと精神やられるかもというくらい、弱っていました」。それは役の厳しさもあったが、それまでとの環境の違いも大きかった。
「宝塚歌劇団でトップ男役としてモテたりいい人の役をずっとやってきたから、人に責められびっくりしたんです。しかも女性の役(笑)。わたしがこれまで持ったことのない、責められるという札と、女性という札が2枚重なって、『出せるものがない』と思ってしまったんです。本当はもうひとひねりして、何が起きても任せてという男役の腹くくったようなところを使ったらよかったのですが、その術があの頃のわたしにはなかったんです」と振り返る。「今はどんどん図太くなってきて『ああいう役、またやらせて』という感じですが(笑)。やはり、時間をかけてできてくるんでしょうね。その意味でも、継続は面白いと思います」
自身の中で、『踊る大捜査線』は非常に大きな作品だという。「栄養素はすべて『踊る』からいただいた感じがします。こんなに多くの方が観てくださって、人生の励みにするような作品に参加させていただいたわけですから。わたしがそれを全部吸収できているかは別として、感謝が年々募ります。選んでいただけて、台本をいただいて、撮影現場に立って演じたということは、わたしの人生を大きく変えてくださいました」(取材・文:早川あゆみ)



