芦田愛菜、難役に挑んだ理由と覚悟 「南田南弁護士は天才肌」で自閉スペクトラム症の新米弁護士に

Netflixの大ヒット韓国ドラマ「ウ・ヨンウ弁護士は天才肌」をリメイクした「南田南弁護士は天才肌」で、自閉スペクトラム症(ASD)の新米弁護士・南田南を演じる芦田愛菜。難役と真摯に向き合う繊細な役づくりから、共演者との距離を縮める独自のコミュニケーション術、そして本作に込められた心温まるメッセージまで、芦田が本作で見つけた、新たな主人公の愛すべき魅力とドラマの見どころについて明かした。
台本の行間に隠された、ヒロインの密やかな感情
芦田が演じるのは、東大法学部を首席で卒業し、司法試験にもトップで合格するなど、一見輝かしい経歴を持ちながら、自閉スペクトラム症(ASD)に対する社会の偏見の壁にはばまれ、就職活動に苦戦する主人公・南田南。南という人物を表現することは、なかなか一筋縄ではいかないという。
芦田は「南は敬語で話をします。でも日本語の敬語って、ある意味少し本音が隠れてしまうように感じるというか、すごく整った印象になるんです。でも、南はその口調が心地いいから話しているだけであって、彼女の中には必ず感情があるはず。ただ脚本の文字面から得られる情報が少ないので、どうしてこれを言ったんだろうと深く考える必要がありました」と丁寧に脚本に向き合ったという。
芦田は文字として固定された言葉の奥底にある「真実」を見つけ出す作業に没頭していた。表面的なトーンに惑わされず、一人の女性の魂を吹き込むための、緻密で静かな闘いがそこにはある。
「法律の説明も、ややもすれば事実を述べているだけのロボットみたいになってしまいます。でも、得意だからこそ誇らしく読んでいるのかなど、デスマス口調だと伝わりづらい気持ちを噛み砕くことに苦労もありつつ、やりがいを感じています」。
そんななか、圧倒的な存在感を放ったオリジナル版の主人公が持つ愛らしさは、日本版のヒロインを創り上げる上でも大きな道標となっているようだ。単なる模倣ではなく、自身のフィルターを通した新しいキャラクターを誕生させるべく、芦田は静かに意気込みを語る。
「パク・ウンビンさんが作られたウ・ヨンウは本当に可愛らしくて素敵な人間で、キャラクター自体が作品の軸になっていました。全く同じようにというわけではなく、私らしい、南らしい作品の軸となれるようなキャラクターを作るためのインスピレーションはすごくいただいています。南の世界はのびのびとあってほしいので、私自身悩むこともあるんですけど、のびのび演じられたらと思っています」。
どこか掴みどころのない弁護士が、ふと見せる無邪気な素顔。その瞬間こそが、ヒロインが持つ最大の魅力だと芦田は分析する。普段の静かな佇まいから一転、あふれ出す情熱を全身で表現する鮮やかなギャップが、視聴者の心を惹きつけてやまない仕掛けになっているのだ。
「南はクジラが大好きなんですけど、一旦クジラワールドに入るともう目を輝かせていろいろ話してくれるんです。普段のナチュラルな感じから、いきなりモードが入ったという切り替えをうまく演じられたらと思います。コミュニケーションの中で、自分の好きなものを熱心に語るのは、意外とハードルが高いことかもしれないですが、南は誰かに話したくてしょうがない。その真っ直ぐな熱量が可愛らしいと思います」。
閉ざされた扉をノックする 芦田流のコミュニケーション術
他者との関わりに葛藤を抱える主人公に対し、演じる芦田自身はどのような手法で初対面の共演者たちと絆を紡いでいるのだろうか。新しい現場に入るたびに訪れる緊張の瞬間。それを乗り越えるための秘訣は、自らの柔らかな心境を相手に差し出すという、シンプルでいて最も勇気のいる行動だった。
「初めてお会いする方とは緊張しますし、どう話しかけたらいいんだろうと思うんですけど、多分それはお互い一緒だと思うんです。なので、まず自分のことを話してみたり、一歩踏み出して話しかけてみたり。相手も同じように緊張しているんだと思うと、踏み出しやすくなりますね。先に自分を開くことが多いかもしれないです。オープンマインドで臨むようにしています」。
その前向きな姿勢は、実際の撮影現場でも確かな温もりを生み出している。ベテラン俳優陣との交流を通して、芦田は早くも居心地の良さを感じているという。
「話しかけさせていただくと、皆さんがすごく気さくに返してくださるので、私自身すごく安心して撮影現場にいられます。お父さん役の(お笑いトリオ・東京03)角田(晃広)さんには、本当に安心しきっていて何をしても自由を尊重して教えてくれるし、(高橋文哉演じる)湊人さんは話を優しく聞いてくれてだんだん心を開いていける相手だと思います」。
寄り添い合う心と心 週の始まりに届ける温かな光
難解で冷たいイメージを持たれがちな法律というルールや規範。しかし南の眼差しを通して見つめると、それは私たちの息遣いと共に生きる、体温を持った存在へと姿を変える。法廷という名の舞台で繰り広げられるのは、無機質な事象の羅列ではなく、生身の人間たちが織りなす切実なドラマなのだ。
「法律って変わっていくものです。その理由っていうのは私たちの生活や社会に影響されているからで、社会が秩序立てられていると同時に、私たち自身も法律に影響を与えうる社会の一人だと思うと、近いような気もします。だんだん状況や時代に合わせて変わっていく生ものだと思います」。
多様な人々が助け合い、時にすれ違いながらも前を向く本作。週の始まりに訪れる少しばかりの憂鬱を、優しい光で包み込むようなあたたかな時間が、そこには待っていると芦田は語る。
「人それぞれ得意なことも不得意なこともあって、苦手なことはそれが得意な誰かと一緒に歩んでいけばいいんじゃないかという、柔らかい気持ちにさせてくれる物語です。人間の心の交流があたたかく、撮影現場も本当に穏やかなので、その雰囲気をうまくお芝居に織り交ぜながら、気を張ってしまうような月曜の夜に、ちょっとほっとするような時間をお届けできたらと思います」。(取材・文:磯部正和)
「南田南弁護士は天才肌」は10月19日スタート!毎週月曜よる10時(カンテレ・フジテレビ系全国ネット)※初回15分拡大
ヘアメイク:板倉タクマ(ヌーデ)



