『仮面ライダーカブト』20年ぶり新作はホームドラマ 石田秀範監督、親子関係を丁寧に描いた狙い

「仮面ライダーカブト」(2006~2007)の放送から20年、正統続編となるVシネクスト『仮面ライダーカブト 20th 天を継ぐもの』の監督を務めたのは、当時パイロット(第1話&第2話)を手がけた石田秀範だ。今回特に注力したのは「親子関係」だった。ホームドラマとして撮ったという新作の狙い、新人俳優への演出術を語った。
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多くの若手俳優を育てたベテランの手腕
石田は当時、「仮面ライダークウガ」を経て、「仮面ライダー剣(ブレイド)」「仮面ライダー響鬼」「仮面ライダーカブト」と3年連続でパイロット監督を務めており、まさに脂が乗り切っていた時期であったと言える。通常、テレビシリーズは複数の監督でローテーションを組んで撮影が行われるが、その中にあって第1話&第2話はキャスティングや世界観の構築はもちろん、プロデューサーが狙う企画意図を映像として提示しなくてはいけない重要なポジションとなる。平成&令和ライダーでは、13作品でパイロットを手掛けた田崎竜太(※崎はたつさきが正式表記)が筆頭格だが「さすがに田崎のようにはできない。あの頃は体力もあったけど、パイロットは怖いですよ」とやはり重責であったことを伝える。
また、東映の特撮ヒーロー作品は若手俳優の登竜門としての地位を築いて久しい。石田が関わった平成~令和のテレビシリーズは、現時点では「クウガ」から「仮面ライダーリバイス」までのおよそ20年。その期間、多くの俳優が巣立ち、「仮面ライダーアギト」の要潤、「仮面ライダー555(ファイズ)」の綾野剛、「仮面ライダードライブ」の竹内涼真ら、石田の洗礼を受けた者も少なくない。一方、石田本人はそれについては謙虚な姿勢を見せる。
「皆さん、そう言ってくれるんだけど、僕としては別に鍛えているつもりはないんですよ。これからの役者人生のために指導するなんて、そんなおこがましいことができるわけがない。ただただ現場で怒っているだけ。それで印象に残っているということじゃないですか? 成長するかしないかは本人次第ですから。結局、自分を磨けるのは自分なだけなんです。人に磨いてもらうなんて、それは嘘っぱちですよ。確かに彼らの背中は押したかもしれない。でも、あくまで彼らが自分で頑張った結果だと思います」
20年ぶりの「カブト」はホームドラマ
石田の最新作となる『仮面ライダーカブト 20th 天を継ぐもの』では、プロデューサーの白倉伸一郎、武部直美を筆頭に、脚本の米村正二、アクション監督の宮崎剛、撮影の倉田幸治ら、当時を知るスタッフが集結。昨今、国内外で名作の続編が多く作られているが、そこには当時のスタッフの参加が話題性や、ファンからの信頼度も含めて欠かせないものがある。この信頼は石田監督にとっても同様であり、「ホン打ちはお任せだった」と自信を持って言い切る。「もちろん自分がやりたいこと、お客さんに見せたいこと、或いは現場的に難しいことは言いましたけど、細かい部分に関しては、当時、一年間にわたって頭をひねり続けていたプロデューサーや脚本家が今回もやるわけだから、それは任せたほうがいい」
その中で、「自分がやりたいこと」について訊いてみると、「親子関係」との答えが返ってきた。「佐藤祐基と荒木飛羽くんの加賀美親子、後は……名前を見れば分かるでしょう(笑)。自分としてはそこに注力したかった」
特に加賀美親子については、日常の暮らしぶりが丁寧に描かれている。それについて石田は、「今回はホームドラマなんですよ。キャラクターが出てきてアクションもするホームドラマだと捉えて監督しました」と語る。続けて、「企画からして、今の子どもに向けた作品じゃないですからね。あくまで当時観ていた子どもたちがターゲットで、彼らも今は家庭を持ち、お子さんがいる人も少なくないでしょう。日々の暮らしの苦労もあるだろうし、そういう人たちが共感するような画を撮りたかった」と思いを込めた。
加賀美親子が住むマンションの場面は、細かい部分まで拘ったという。「そこはストーリーがどうこうではなく、日々どういう暮らしをしており、どういう親子関係なのか。そして親は子をどう思い、子は親をどう思っているのか。それを丹念に描いたつもりなので、しっかりと観てもらえればと思っています」
「これは勝てると思った」石田監督が自ら選んだ二人の若手
前述したように多くの俳優を育ててきた石田だが、今回は、加賀美結役に荒木飛羽、天堂ヒカル役に小寺結花と若手2人が抜てきされた。作品としては、ボーイミーツガールの側面も併せ持っており、この2人にかかるウエイトも大きく「こんな重要な役を誰にするかは他の人には任せられない。オーディションで自分が選びました」と強調する。
両名の起用に関しては、これが演技経験者であれば、現場で演出意図もすぐに汲み取れるだろうし、限られたスケジュールでの撮影も当然スムーズに進むわけだが、それを差し引いても起用したい理由があったという。「小寺は演技未経験。でも、あのルックスに勝るものはない。彼女なら役柄上、お客さんも納得するものがあるでしょう。オーディションで出会った瞬間、一発で決まりました」
もちろん、新人故にそれ相応の苦労があったと言うが「ヘンにこなれたというか、癖がついている若手も少なくないけど、それであれば未経験者のほうが断然いい。まっさらな分、素直に吸収してくれる。演技未経験の人は毎度のことだから、別に驚きやしない。得意分野ですよ」とさすがの余裕を見せる。小寺に対しては、それこそ手取り足取りだったというが「楽しかったですよ。いい作品ができるなと手応えがありましたね。小寺くんが決まった時点で、これは勝てると思った。勝てるというのもヘンだけど、お客さんも必ず納得してくれると思った。お客さんに芝居がヘタだと思われないように、指導するのがこちらの仕事だし、彼女も邪な気持ちは持ってないし、頑張ってくれましたよ」と手応えを語る。
そして荒木である。石田はこれまで数多くの若手俳優と接する中、「ヘンに芝居を齧って反発するような人もいるんですよ。まだまだ未熟なクセに妙な拘りのある勘違い野郎が」と苦言を呈するが、荒木は、若手ながらも10年以上のキャリアを持つ。「彼はそれなりに芸歴があるけど、悪い部分は全くなかったね。僕の話も素直に聞いてくれて有難かったですよ。でもね……やらないところもあるんですよ(笑)。いくら監督でもそれはやりたくない、というところが随所に見えました。でも、それは勘違い野郎ではなく、彼が役者だから。逆にしっかりしているなと思いました。こんなオヤジに言われても流されるだけじゃない。あの若さでそれができるのはすごい。彼はきっと伸びます」と絶賛した。
劇中、ヒカルと結の関係性を象徴するのが、2人が並走する様子をハイスピードで捉えた場面で、さながら青春映画の一場面を思わせる。ここは石田自身も力を入れた場面であり「あれは昭和だよね。ちょっと臭い」と照れ笑いを浮かべつつも、「もうちょっとやり方があったかもしれないけど、この歳になっても若い2人に憧れがあるんです」と率直な気持ちを吐露する。また、こうしたゆったりしたカットが撮れるのも、まとまった尺のあるVシネクストならではで、短いカットを積み重ねてテンポを出していくテレビとは異なる味わいを感じることができる。「それはまさにその通りで、ゆとりがあるから撮れたカットだね。ここは撮影自体もたっぷりと時間をかけましたよ」
SNSでは、すでにさまざまな感想が投稿されている『仮面ライダーカブト 20th 天を継ぐもの』。最後に、石田に改めて作品についての手応えを訊いてみた。
「今回は当時観ていたファンに向けて作った作品で、子どもの頃は無邪気に仮面ライダーを応援してくれていたと思うけど、やっぱり大人になるにつれて、いろいろと経験するわけでしょう。作品を観る人は、加賀美新や矢車想、風間大介みたいに地球を守ったりするわけじゃないけど、作品に登場する人物も僕らと同じなんですよ。実はそんなに変わらない。この作品を観て、そこに共感してもらえれば嬉しいですね。もちろん、カッコいいと思ってもらえる場面もあるけど、加賀美親子みたいに『どこの家庭もみんな一緒なんだ」とホッとできる作品。そういう意味では気軽に観てもらえればと思います。それも一回観て終わりじゃない。よく噛んでもらえればより美味しく感じてもらえるはずです」とアピールした。(取材・文:トヨタトモヒサ)
Vシネクスト『仮面ライダーカブト 20th 天を継ぐもの』は11月6日(金)より新宿バルト9ほか期間限定上映、Blu-ray&DVDは2027年2月10日(水)発売



