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夏の大作に飽きたら、ミニシアターへ行こう!

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ライター
 塚田恭子


 映画は冬のシーンから始まっているのに、印象に残るのは、なんといっても初夏の鮮やかな新緑とすべてを美しく彩ってしまう陽光のまばゆさだ。木々のあいだから射し込む木洩れ日、そのなかで自然と戯れる少年少女の姿、彼らを見守るグレゴリオ先生、花の蜜を求めてひらひらと舞う蝶……目にも心にも、優しくて穏やか。そんな自然の風景はたしかにこの物語に欠かせない舞台であり、日常である。だが、その一方で、首都マドリッドから遠く離れたガリシアの小さな村にさえも近づきつつある政治の暴力や理不尽さを、人々を巻き込んでいったその不穏な空気を、ホセ・ルイス・クエルダ監督はもう一つの日常として描いている。それもハリウッド映画のように、安易なステレオタイプのドラマとしてではなく。だから私たちはこの作品を、切実だけど身近なものとして感じることができるのだと思う。

 驚き、不安、喜び、悲しみ、怒りなどが微妙に入り混じった人々の感情を、クエルダ監督はそれ以上でも以下でもなく映し出す。妙に大げさじゃないところがいいし、それぞれの登場人物の豊かな表情が、風景の美しさと同じくらい印象を残すのはそれゆえだろう。好きな女の子のはしゃぎ声を聞きつけて、蝶よりも彼女の元へと走っていくモンチョ少年を見つめるグレゴリオ先生。本の中で見つけた中国人そっくりの少女の前で、愛を込めてサックスを吹くモンチョの兄。変えようのない自分の運命を知りつつ、去って行く彼を静かに見つめる中国人少女。家族の安全のために共和党の党員証や新聞を焼き捨てる妻と、彼女の行為を重苦しい面持ちで受け入れる父親。彼らの表情は、言葉よりもずっとありのままの気持ちを伝えている。

 ラストシーン。モンチョはグレゴリオ先生に「アテオ、アカ」と罵声の言葉を浴びせるけれど、その表情はやはり彼自身の言葉を裏切っている。繊細で、かしこくて、好奇心旺盛な8歳の少年は大きな試練を超えて、どんな大人になっていくのだろうか。

 

『蝶の舌 』
チェック: スペイン国民文学賞を受賞したマヌエル・リバスの「僕にどうしてほしいの?」から3つの短編を合わせ、『にぎやかな森』の名匠ホセ・ルイス・クエルダが映画化。自然の中で成長する8歳の少年と家族の幸福が、やがてスペイン内戦によって悲劇を迎えるまでを丹念に描く。主人公の少年モンチョ役には、2500人の子供の中から選ばれたマヌエル・ロサノが当たり、映画初出演ながらも微妙な感情を表現している。衝撃的なクライマックスが胸にしみる。

ストーリー:1936年、スペイン、ガリシア地方の小さな村。喘息持ちのため、8歳でようやく1年生になった少年モンチョは、一見強面のグレゴリオ先生を慕うようになる。しかし、時代はスペイン内戦の悲劇へと向かっていた……。

英題: LA LENGUA DE LAS MARIPOSAS 製作年: 1999年 製作国: スペイン 日本公開: 8月4日 (シネスイッチ銀座) 上映時間: 1時間35分 配給: アスミック・エース エンタテインメント カラー/1:2.35スコープ/ドルビーデジタル?

■スタッフ■ 監督・製作総指揮: ホセ・ルイス・クエルダ 製作総指揮: フェルナンド・ボバイラ 脚本: ラファエル・アスコナ 撮影監督: ハビエル・サルモネス 衣裳: ソニア・グランデ 音楽: アレハンドロ・アメナバル
■キャスト■ フェルナンド・フェルナン・ゴメス マヌエル・ロサノ ウシア・ブランコ ゴンサロ・ウリアルテ アレクシス・デ・ロス・サントス

 


 

 

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