自分で自分に殴られる
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今回の映画には、ジェット・リー対ジェット・リーというファンにはたまらないバトルシーンがありますが、実際に演じてみてどうでしたか? |
J |
とにかくこの映画はいろいろな面
で挑戦的な作品だった。初めてのSFアクション映画で、初めて自分と闘った映画(笑)。それに、ヒーローと悪役の両方を同じ映画で演じたのも初めてだよ。自分が自分と闘うシーンについては、正直言ってこんなに疲れるとは思わなかったね。最初は、自分で殴ってカットが変わると自分が殴られてるからとても変な感じがして何だか新鮮だった。でも、あのエンディングのバトルシーンは、通
常のクライマックスシーンの撮影にかかる時間の約2倍の4週間も費やしたうえに、俳優はぼくしかいないから全部2倍の動きが必要で、とにかく体力的にも大変だった。そしてカット毎に、その前にやった役の動きや心情を思い出さなくてはならず苦労したね。そうそう、1日に12回も衣装替えした日もあって、それだけでも疲れたよ。 |
悪役は自己中心的に演じればいいから簡単だった |
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迫力満点の大バトルシーンでは、一目でどっちがどっちか分かるように2役ともカンフーのスタイルがまったく違いますが、誰のアイデアですか? |
J |
映画は共同作業だから、善玉
のゲイブ(ガブリエルのこと)と悪玉のユーローのカンフースタイルは、みんなで意見を出し合って決めた。悪人はいつも自分勝手で、とにかく破壊することが好きという分析から、ユーローは攻撃的な型の“シンイー”を使うことに決めた。反対に、ゲイブは和を大切にする性格だから、防御型の“バグワ”で闘うことにしたんだ。もちろん、同時に自分同士で闘うことはできないから、スタントマンを相手に撮影したよ。 |
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役作りはどうしましたか? |
J |
脚本家や監督などと話し合って、それぞれどんなパーソナリティかを考えた。でも、悪役を演じるのは簡単だって分かったよ。だって、いつも自己中心的でいいんだからね。反対に善玉
は難しい。ゲイブは常に周りを気にかけ、気を遣う。「おなか減ってない?」「トイレ行った?」とか聞くような優しい面
をどうやって出していくかが難しかった。悪役は、オレ様第一でそんなことはみじんも考えないから楽だったよ。 |
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英語のセリフは、やっぱり苦労しますか? |
J |
だんだん簡単になってきたよ。アメリカに来た当初は英語のセリフの時にはとても緊張して上手く言えず失敗が多かった。ところが、最近は失敗しても「まいっか、もう一回!」って言えるようになった。だんだん面
の皮が厚くなったね(笑)。
(東洋系のレポーターには大ウケだったこの表現。ただ、西洋系のレポーターには理解できなかったようだ。というのも、直訳英語のThick,
face skinと言ったからだが、そんなリーにとても親近感を持った瞬間だった)。
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ニューヨークを舞台にジャッキーと共演プロジェクト |
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ジャッキー・チェンとの共演作など、今後の作品について教えてください |
J |
ジャッキーとは長年の友人同士で、香港でも同じビルにオフィスがあるから、実はずいぶん前から一緒に映画を作ろうって話があった。もう7年くらい前からかな。そして……詳しいことは言えないんだ。スタジオからまだOKが出てないからね。監督は向いてないことが分かったからもうやらないと思うけど、プロデューサー業は好きだから今後もいろいろ製作していこうと思っている。今度、ニューヨークが舞台の『Monk
in NY』をプロデュースするんだ。テロの影響? 若干プロットを変えたけど、今、ニューヨークでやることが大事だと思うからね、これは絶対実現させたい映画だね。 |
亜州明星から聖森明星(ハリウッドスター)へ見事成功した彼も、今年で37歳。「カンフーを始めて、なんと30周年記念だ」とおどけながらも、終始(超)真面
目に英語でインタビューに答える彼に、「シーフー(先生)、無影脚を教えてください」と切り込むスキはなかった……。