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アル・パチーノ インタビュー

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アル・パチーノ
アル・パチーノ インタビュー

『メメント』を公開前に観て 思ったのさ、これは本物だって
 もしも、ニューヨークのとあるホテルの一室で、『ゴッドファーザー』のマイケル・コルレオーネか、『スカーフェイス』のトニー・モンタナ、あるいは『ディアボロス』の悪鬼のような弁護士と2人きりで対面することになったら、どんなインタヴュアーでも全身が凍りつくことだろう。
 しかし、スクリーンで演じてきたそれらの恐ろしく危険な人物からは程遠いのが、役者アル・パチーノの素顔なのだ。控えめで、自らの大物ぶりをひけらかさない。だが、常に傍らでは屈強なボディガードが監視の目を光らせ、パチーノのスターぶりを物語っている。


 さて、30年以上の輝かしい経歴を誇るオスカー俳優パチーノはこんな話を切り出した。
「“誰が勝利について語るのか? 堪えぬくことがすべてなのだ”(注:リルケの『レクイエム』にあるパチーノのお気に入りの言葉)という言葉があるんだ。とにかくしがみつけ、そして幸運をつかみ、希望を持て、という意味なんだけど」


 昨年、パチーノ自身の希望は彼をアラスカとヴァンクーヴァーの地へと導き、そこで『インソムニア』が撮影された。デビュー作『メメント』で批評家たちを唸らせた31歳の若きイギリス人監督クリストファー・ノーランの作品に出るというパチーノの夢が実ったのだ。
「クリスが『インソムニア』の製作にあたって私に興味を示してくれたから、『メメント』を公開前に観せてもらったんだ。そして思ったのさ、これは本物だって。本当に人の心に届くものがある。役者にしろ、物書きにしろ、監督にしろ、そういう自らのやるべきことをきちんと分かってやっている人間には共通するものがある。それは私にとってすごく重要なんだ。だから引き込まれて、クリスに会ったのさ。とても好人物で物事に意欲的で驚かされたよ」


まさかアラスカとヴァンクーヴァーなんて、と思っていたんだが 結局はクリスに引き込まれたのさ
 現在、62歳のパチーノはこれまでにないほどの仕事量をこなしている。また彼は長年のパートナーである女優ビヴァリー・ダンジェロと共に、幼い子供たちの親でもある。言い換えれば、わざわざ人里離れたアラスカまで出掛けて、殺人容疑者を追う不眠症の刑事役など、断る理由は山ほどあるはずだった。

「私は映画を作りたかったわけじゃない。ちょうど2本の作品を撮り終えたばかりだったし、子供たちとの私生活もある。まさかアラスカとヴァンクーヴァーなんて、と思っていたんだが、結局はクリスに引き込まれたのさ」とパチーノは反論する。


 これまでにパチーノは名だたる巨匠たちの作品に出演してきた。F・F・コッポラ、オリヴァー・ストーン、マイケル・マン、シドニー・ルメット。そんな彼が、今回のような自分の歳の半分にも充たない若手監督との撮影に対し、何のためらいもなかったのだろうか?
「彼に疑問や不安なんて抱いたことはなかったさ。クリスにはエネルギーがある。マイケル・マンやスティーヴン・ソダーバーグといった連中と同じさ。クリスも有能なパイロットなんだ。誰しもそんなパイロットの乗客になりたがるのさ。


不眠症(インソムニア)と、良心の呵責。 こういった要素は役者にとってやりがいのあることで、手応えを感じたよ  
回、パチーノが演じるのはロサンゼルス市警の刑事ウィル・ドーマーだ。古い仲間が抱える、ある若い女性のミステリアスな殺人事件の助っ人としてアラスカに乗り込む。パチーノはこれまで『クルージング』や『ヒート』、『セルピコ』、『シー・オブ・ラブ』などで刑事役をこなしてきたが、『インソムニア』におけるウィルというキャラクターは今までと違った。伝説的な刑事だが、過去の輝かしいキャリアも、あることが明るみに出てすっかり風前の灯になっている。そして、ウィルはアラスカでの捜査中、過って人を殺してしまう。それは、あたかもアクシデントに見えるが、ウィルの中ではアクシデントではないという意識もあった。さらに、アラスカが白夜の季節だったこともあり、1週間も睡眠不足が続いていた。


「ウィルには内面の葛藤があるんだ。そこに追い討ちをかける不眠症(インソムニア)と、良心の呵責。こういった要素は役者にとってやりがいのあることで、手応えを感じたよ」
 

SFX映画やアニメヒーロー作品が続々と公開されるこの夏に幕を開けた 『インソムニア』は、秋から本格化するオスカー狙いの公開ラッシュに向けて威信をかけた作品と言える。出演者はパチーノの他、ヒラリー・スワンク、ロビン・ウィリアムズと、アカデミー賞俳優がそろう。
「ヒラリーは驚くほど美しい女性だった。『ボーイズ・ドント・クライ』の彼女を見ただけじゃ想像はつかないほどにね。もちろん、彼女は今回、セクシーさで演じているわけじゃないけどね。しかし、ヴァイタリティと存在感がある。一緒に仕事ができたなんて実に素晴らしいと思うんだ」

時代が流れれば流れるほど、観客が求める映画というのが想像もつかなくなるのさ
 また、ウィリアムズについてもパチーノはこう語る。
「彼のことは以前から知っていたけど、本当の意味で知り合えたのは今度の作品でだった。ものすごく繊細で、それはおそらく天才と呼ばれる人物に共通の要素だろう。夕食の席を共にできたのは嬉しかったよ。独自の価値観を持っていてね。その気になると、こちらがサラダを一口食べる瞬間にも笑わせるんだ」
 

 製作会社であるワーナーは、本作がいわゆるアカデミー賞に向けての公開ラッシュにぶつかることについて、自信満々だ。それは同時に、本当に映画の分かる観客が劇場に足を運ぶシーズンでもあるからだ。
「確かにそう願うよ。だけど、自分の出た作品の公開時はいつだって気が遠くなる思いなんだ。時代が流れれば流れるほど、観客が求める映画というのが想像もつかなくなるのさ」

(ジョシュア・ムーニー/訳 松浦庸夫)

 

 

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