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ジョン・ウー独占インタビュー

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1948年中国、広州で生まれ、その後移り住んだ香港でキャリアをスタートさせたジョン・ウー監督。86年に監督した『男たちの挽歌』が大ヒット。”香港ノワール” という新たなジャンルを確立し、斬新でハードボイルドな男の世界を描いてきた。近年はハリウッド進出を果たし、『フェイス/オフ』『M:l-2』などの話題作を次々と手がけている。『ペイ・チェック/失われた記憶』


監督が大ファンだという、若かりし頃の小林旭や、高倉健などのスターが勢ぞろいした写真集を渡すと、「60年代の香港で日本映画はNo.1だった。彼らは私のアイドルだったんだ」と、一瞬取材のことも忘れ、食い入るように写真集を見つめていた監督。「これはもらってもいいのかな?」と確認し、もちろんだと答えると、子供のような笑顔を見せた。
そんな彼の最新作は、ベン・アフレック主演のSFアクション大作『ペイチェック/消された記憶』だ。コンピューター・エンジニアの男が、自らのなくした”記憶”を取り戻すため、手元に残された19個のガラクタを頼りに謎を追うというスリリングな物語が展開する。



■ 当初の主役はマット・デイモン!?



「当初主役はベンではなくて、マット・デイモンの予定だったんだよ(笑)。マットが友達のベンを紹介してくれてね。彼らは全く違うキャラクターだったんだけれど、結果的にはベンを起用して大成功だったと思っている。彼が演じたマイケルという男は完全無欠のヒーローではなくて、ごく普通のコンピューター・エンジニアなんだ。実際にチャーミングで、親しみやすいキャラクターのベンの演技は、リアルで自然だった。そんな彼が孤軍奮闘して頑張っている姿を見れば、観る側も感情移入しやすいだろ? もちろんアクションシーンも素晴らしかったよ。彼はただアクションをこなすだけではなくて、セクシーで優雅な動きも見せてくれたしね。彼には若き日のケリー・グラントを彷佛とさせる品の良さが備わっていると思うよ」


今回ヒロインを演じるのは、『キル・ビル』の血塗られた花嫁役で世間をアッと言わせたユマ・サーマンだ。二人で一緒に暮らしたことや、愛し合っていた自分の顔すら思い出せない恋人を全面的にサポートする、強くて賢い女性を熱演する。


「ユマは見ての通り、非常に美しく知的であるにも関わらず、自分のカメラ映りとかには全く無頓着なんだ。激しいアクション続きであまりにもひどい外見だったんで、私が彼女の髪の毛を直してあげようとしても、その手を”放っておいて!”と振り払うぐらい役に没頭していたんだよ」

と苦笑する。
本作はカルト的人気を誇る『マイノリティ・リポート』の、フィリップ・K・ディックのSF小説の映画化だ。



■ あきらめず努力すれば、見えてくる明るい「未来」



「元々暗くて救いのない未来を描くことの多いSFは苦手なんだけれど、脚本を読んでみて、サスペンスとして、そして人間ドラマとしての面白さに引き込まれたんだ。ポイントは”運命を変えられる”という点にある思う。たとえどんなにひどい世の中であっても、私は人々に希望を与えられるような作品を撮りたいんだ。誰だってあきらめずに努力すれば、その先には明るい未来が待っていると信じたいじゃないか」






広州から移住した香港で決して裕福ではない少年時代を過ごし、監督として長い不遇の時代をくぐり抜け、ようやくハリウッドでアメリカンドリームを実現した彼らしい言葉だ。
ハリウッドと香港の最大の違いを尋ねると「ハリウッドでの映画製作は、とてもプロフェッショナルな仕事なんだ。スケジュールも予算もきちんと管理されているし、システムが確立されている。脚本もなければ、アクションも命がけという、まるでカオスのような香港の現場とは全く違う。まぁ、大きな予算を使わせてもらうのだから、スケジュール通りに急いで撮らなければというプレッシャーはいつもついて回る。でもその分最新のVFXなどを駆使して、監督の思い描いたイメージ通りの作品が創れたりするという点は本当に素晴らしいと思うよ」と答えてくれた。


(取材・文:平野敦子)



『ペイチェック 消された記憶』は日比谷スカラ座1他にて公開


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