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『なくもんか』阿部サダヲ、瑛太 単独インタビュー

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『なくもんか』阿部サダヲ、瑛太 単独インタビュー

観た後に考えさせられる、味わい深い家族映画です

取材・文:古川祐子 写真:高野広美

映画『舞妓Haaaan!!!』の水田伸生監督、脚本の宮藤官九郎、そして主演の阿部サダヲが再結集して作り上げた映画『なくもんか』が公開される。昔懐かしい商店街を舞台に、さまざまな事情を抱えた家族の姿を、笑いあり涙ありで描くホームドラマだ。ストーリーの核となる、生き別れた兄弟を演じたのが、共に今の日本映画界に欠かせない存在である阿部と瑛太。笑顔を絶やさない究極のお人好しの兄・祐太と、空気の読めないお笑い芸人の弟・祐介という異色コンビを演じた二人にお互いの印象や共演者との秘話や、お気に入りのシーンなどを語ってもらった。

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瑛太は阿部サダヲになりたい!?

阿部サダヲ、瑛太

Q:お互いの印象を教えてください。

阿部:瑛太君とは以前ドラマで共演したことがあったんですが、そのときから独特の空気感を持った、すごく才能のある役者さんだと思っていました。今回、僕は兄役で共演しているけど、生き別れた兄弟という設定だから、実際はそんなにたくさん絡んでいないんですよね。だから、いつか普通の兄弟としてもまた共演したいですね。

瑛太:僕より先輩の俳優さんはたくさんいらっしゃいますが、中でも自分がこうなりたいと思える方が阿部サダヲさんなんです。阿部さんは、僕みたいな年下でお芝居の経験値もあまりない人間に対しても、ちゃんと対等に俳優同士として接して下さる方です。気楽に話しかけてくれるし、知り合ってすぐにすべてを信頼できる俳優さんだなと思いました。

Q:阿部さんを、人間としても役者としても尊敬している?

瑛太:はい。阿部さんが出演しているドラマや映画、舞台を観ていると、自分の場合、阿部さんにしか目がいかないんです。そして、阿部さんにしかできないことがいっぱいあると痛感させられるんです。阿部さんは……「阿部サダヲ」という存在を確立していらっしゃるんだなとすごく感じる。これからも、阿部さんと共演できるなら何の役でも構わないですね(笑)。

阿部:いやあ……うれしいですね(笑)。

Q:二人の漫才シーンは、息がぴったりでしたね。アドリブなどは入っているのですか?

阿部:ないです。漫才指導して下さった方が書かれたものをそのままやっています。でもこの漫才シーン、実は瑛太くんの撮影初日に撮ったんですよ! それまで一回もまだお芝居してなかったのに、前日に練習して、次の日にいきなり沖縄で漫才をやったので大変でしたよね。それでも、ああいう風にうまくできたのは、相手が瑛太くんだったからだと思います。

瑛太:そうですね、僕も漫才だから長セリフで大変でした。しかも実際に完成した作品を観たら、セリフをかんでしまったところがそのまま使われていたんです(笑)。

どんなひどい親でも子はかばうもの

阿部サダヲ、瑛太

Q:お二人が演じる祐太と祐介は、小さいころ父親に捨てられて生き別れた兄弟という設定です。それぞれ複雑な内面を抱えたキャラクターですが、共感するところはありますか?

阿部:僕が演じる祐太は、そんな不幸な生い立ちなのに、いつも笑顔で、バカが付くほど働き者のキャラクターなんです。生い立ちはどうであれ、やっぱり他人に好かれたいという気持ちは、誰にでもある。それは共感できますね。後は、どんなにひどい親でも、子どもはかばってしまうところもわかります。自分自身も「ダメだな、うちの親父」って感じるときがあっても、やっぱり「親父は親父だな」と思い直しますし。そういうところ、みんなもあるんじゃないかな。

瑛太:僕が演じた祐介は、身寄りがない状態でサバイバルするために、他人を笑わせることで居場所を見つけていくキャラクターです。変わった境遇で生きてきたので、何が普通なのか、善悪の基準がわからなくなっているところがあるんですよ。やがて本当は実力がないのに売れっ子芸人になって、本当の兄や父親が現れて……。いろんなことが重なって頭がゴチャゴチャになっているけど、その精神状態はわかるような気がします。自分も俳優として、自分の至らないところに気付かされたり、芝居に悩んだりした時期があったので、祐介はあのときの自分と同じ時間軸にいるように感じましたね。

竹内結子は痛くないけり方を知っている!?

阿部サダヲ、瑛太

Q:ヒロイン役の竹内結子さんは、活発で言いたい放題の女性を生き生きと演じていましたが、現場での様子はいかがでしたか。

阿部:現場では、もちろん役柄のようにギャーギャー騒ぐことはなかったですよ(笑)。それまでキレイな女性を演じる方というイメージがあったので、「~だろうがあ!」って人をけるようなキャラクターを演じているのを間近で見て新鮮でしたね。

瑛太:今思い出したんですけど、沖縄ロケのとき、テントにいたら竹内さんが来て、チョコを一個僕にくれたことがあったんですよ。

阿部:え、僕はそんなのもらってないよ(笑)。

瑛太:でも、阿部さんも通りすがりに何かを僕に渡してくれたり、手を触ってきたりしたことありましたよね? 何なんでしょう、あれは? うれしいんだけど、照れくさいような……。

阿部:瑛太君には、そういう空気があるんですよ。こう「大丈夫か?」と声をかけたくなるような、ほっとけない空気を持ってるんだよ。それでチョコもらったりして、いいじゃない(笑)!

Q:そんなお二人は、劇中で竹内さんからけりを入れられてますが、実際痛かったですか(笑)?

阿部:いや、全然痛くなかったです!

瑛太:僕も背中をけられたけど全然痛くなかったです。ちょうど気持ちいいところだったので。多分、ツボのあたりだったんだと思います(笑)。

阿部:女性は普段体に気を遣っているから、そこは痛いとか痛くないとか、多分わかっているんじゃないですかね(笑)? 竹内さんは痛くないところをけってきたので、全然大丈夫でした。

家族ですき焼きを食べるシーンが秀逸

阿部サダヲ、瑛太

Q:この映画は基本コメディーですが、心に染みるセリフも多くて、思わず泣いてしまうような場面もたくさんあります。お二人のお気に入りのシーンがありましたら教えてください。

阿部:家族ですき焼きを食べるシーンです。そこで主人公が発するセリフ「それぞれ腹に何かを抱えていても、黙って一緒に飯を食うのが家族」というのがすごく印象に残ってますね。そして最後にはそのままシリアスにもっていくんじゃなくて、いしだあゆみさん演じるお母さんが、場の空気を笑いでひっくり返してしまうのがまたいいんです。そんな風にまとめる(脚本の)宮藤さんのワザも素晴らしいと思いました。

瑛太:僕もすき焼きのシーンが印象的ですね。兄弟を捨てた父親役の伊原剛志さんが、勝手に現れて平気な顔をしてくちゃくちゃ音を立てて食べている姿を見て、演技だとわかっていても、息子としてどうしようもない感覚になったのを覚えています(笑)。

阿部:そうそう。かっこよかったよね、伊原さん(笑)!

Q:最後になりますが、この映画を楽しみにしている方たちにメッセージをお願いします。

阿部:まずは観て笑って、楽しんでいただけたらうれしいですね。でも、観た後に振り返っていろいろ考えさせられる、味わい深い映画でもあると思います。「あれっ?」と引っ掛かるところがあったら、もう一回観て確認してみてください。

瑛太:あまり先入観を持たずに、ホームドラマを観る感覚で、気軽に観ていただけたらと思います。何といっても、主演の阿部さんの存在感や、演技が本当に素晴らしいです。この映画を観たら、きっと阿部さんをもっと好きになると思いますよ!


物腰が柔らかく謙虚で、驚くほど同じ空気感をまとっていた二人。インタビューからはお互いを役者として高く評価していることや、特に瑛太の「僕は阿部サダヲさんになりたいんです!」と断言するほど、阿部に対する熱い尊敬ぶりが印象に残った。この二人をはじめとする芸達者な役者たちがスクリーンで繰り広げる悲喜劇には、家族がいる人間なら誰もが心の琴線に触れる瞬間がある。思い切り笑い泣き、観終わった後は、改めて自身の家族の存在に思いをめぐらせることになるだろう。

映画『なくもんか』は11月14日より全国東宝系にて全国公開

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