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『誘拐ラプソディー』高橋克典 単独インタビュー

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『誘拐ラプソディー』高橋克典 単独インタビュー

心の底から子どもがかわいいと思えるようになった

取材・文:斉藤由紀子 写真:高野広美

思いっきり笑えてしみじみ泣ける荻原浩原作の人気小説「誘拐ラプソディー」が、俳優としても活躍する榊英雄監督の手によって映画化された。どん底人生の一発逆転を狙って、ヤクザの息子とは知らずに子どもを誘拐してしまうドジな主人公を演じたのは、昨年の2月に一児の父となった高橋克典。注目の天才子役・林遼威と息の合った芝居を繰り広げた高橋が、撮影時のエピソードから自身の子育てまで、じっくりと語ってくれた。

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産休中だったのに、強引に引っ張り出されて映画出演!

高橋克典

Q:今回演じられた、金なし、家なし、仕事なしの伊達秀吉は、ある意味、観る者の共感を誘うキャラクターですね。

秀吉は、「誰かに自分を理解してほしい、存在を認めてほしい」と願っている孤独な男で、同じような寂しさを抱えていた人質の伝助と心を通わせていく。そのプロセスがすごく好きですね。僕は昔からブルーカラーの男が主人公の映画が大好きで、秀吉のような役をずっとやってみたかったんですよ。だから、演じられて本当にうれしかったです。

Q:高橋さんのユーモラスな表情が印象的でした。かなり楽しみながら役づくりをされたのでは?

今までとは演技の方法を変えて、作り込まずにシンプルなやり方で演じました。実は、子どもが生まれてからしばらくの間、産休を取らせてもらったんです。新米パパでどうしたらいいかわからない中、ヘロヘロになって子育てをしているときにこのお話をいただいたので、落ち着いて役に取り組める状況ではなかったんです……。なんてね(笑)。

Q:なるほど、産休を返上してでも出演したい作品だったんですね。

いや、作品にほれ込んで無理をしたというよりも、榊監督に強引に引っ張り出されて無理を強いられたという感じです(笑)。でも、それが逆に良かった。もしも落ち着いた状態でオファーを受けていたら、もっと役をつくり込んだだろうし、余計な計算も働いたと思うんです。今回はそんなことは考えずに、本当に素直な気持ちで一番大事なものだけを盛り込めたような気がします。それに、テレビと違って、映画は純粋に役にハマっていけばいい。テレビだと、わざとわかりやすいように演じてしまったり、遠慮してしまったりすることも多いので、純粋に芝居に専念できたという意味でも良かったと思います。

Q:役者仲間でもある榊監督の演出は、高橋さんにとって特別なものだったのでは?

僕は榊監督を完全に信頼していました。彼は役者さんとしても素晴らしい才能を持っている方で、役者目線で演出をされるんです。それが刺激になって、自分の演技について改めて考えたり、これまでの演技のやり方を疑ってみたりした部分もありましたね。

伝助を演じた林遼威の天才ぶりとは!?

高橋克典

Q:林遼威くんが演じた伝助がとてもかわいらしくて、何度もキュンとさせられました。

そう、遼威はかわいくて才能があって頭が良くてね。人の気持ちもわかるし、本当にすごい子役です。あの子は、もっともっとチャンスを与えられて、みんなに認められる存在だと思います。

Q:秀吉と伝助とのやりとりがすごく自然でほほ笑ましかったです。遼威くんとは、かなりコミュニケーションを深めて撮影をされたのではないですか?

そうですね。一緒に歌を歌ったり、彼は英語もしゃべれるので、英語の話をしたり……。二人でいろんなことをして遊びましたけど、何をしたか忘れちゃうくらいたわいのないことでしたね(笑)。あんまり遊び過ぎて本番に支障が出ても困るので、ペース配分は見ながら遊んでいました。あと、遼威が台本を全部覚えていたので、僕がわからなくなると教えてもらったりしていました(笑)。

Q:彼は高橋さんのセリフも全部覚えていたんですか!?

僕の分だけじゃなくて、ほかの役者さんのセリフも全部覚えていたんです。その裏の気持ちまで!

Q:伝助が秀吉を思って号泣してしまう場面がありますが、あの涙も本物ですよね!

撮影したのがクランクアップの直前で、いいタイミングだったんですよ。遼威は本番に入る前から、「もう終わっちゃうね! お別れだね!」と言っていたので、演じているうちに本当に悲しくなってしまったんでしょう。まさに演技のお手本ですね。

Q:そんな遼威くんと、ご自分のお子さんを重ねてしまう瞬間はありませんでしたか?

子どもが生まれてから、想像もしていなかった感情がわき出てきて、心の底から子どもがかわいいと思えるようになりました。自分の子はもちろん、他人の子もかわいくて、以前とは子どもに対する心の開き方がまるで違う。だから、伝助を大切に思うようになる秀吉の気持ちと、自分の気持ちがうまくリンクできました。あんなにいとおしい気持ちが芽生えたのは自分でも驚きでしたが、遼威だったからそれができたとも言えます。

作り手の体温が伝わる日だまりのような作品

高橋克典

Q:子役と共演すると学ぶことが多いとおっしゃる俳優さんもいらっしゃいますが、高橋さんは本作で学んだことはありますか?

子どもは、純粋さも不純さも包み隠さず出してくるんです。そのときの気持ち一発で、余計な頭は何もないわけですよ。僕らは演技プランがありますから、どうしても頭の中で考えてしまう。そういう意味では勉強になりました。とはいえ、僕が子どものように演じられるとは思いませんけどね。天真らんまんな40代なんて気持ち悪いでしょうし(笑)。

Q:アドリブかな? と思うシーンもありましたが、実際はどうだったのでしょう?

アドリブも多少あった気がします。それに、遼威とは本当に仲良くなれたので、その空気感が画面に出ているんじゃないですかね。温度やにおいって、スクリーンには映らないものだけど、感覚としては伝わるような気がするんですよ。この作品には、演じている役者さんたちの優しさや、僕を無理やり引っ張り出した監督の情熱など、作り手の体温が込められているんです。観終わったときに、温かくて優しい気持ちになれる、小さな日だまりのような映画になったと思います。

Q:本作には、俳優の交代劇や公開延期など、いろいろなご苦労もあったと思います。晴れて劇場公開を迎える今のお気持ちは?

映画っていろんな人たちの思いがあって出来上がるものだから、公開を迎えられて本当に良かったです。遼威にとっては初めての映画だし、ほかの役者さんだって忙しい中でベストを尽くしたわけですしね。それに、僕にとっても参加して良かったと思える大好きな作品なので、今は安堵(あんど)の気持ちでいっぱいです。ストーリー的にも、主人公がヤクザと警察に追い回される先の読めない展開や、中盤から一気に加速するスピード感を楽しんでもらえると思います。決して後悔させませんので、ぜひ映画館でご覧になっていただきたいです。


終始ご機嫌な様子でインタビューに答えてくれた高橋。スチール撮影の合間も、「今はいているジーンズ、僕の友人がやっているYBI TOKYOというメーカーで作ったオーダーメイドで、すごく気に入っているんですよ!」と笑顔を振りまきつつ、「今回の映画も、このジーンズのように手作りの良さが味わえると思います!」とちゃめっ気タップリに作品の魅力をアピールしてくれた。その言葉通り、人情味あふれる本作を観れば、作り手の熱い思いがしかと伝わってくる。誘拐犯の秀吉が人質の伝助に注ぐ、ガチで愛情たっぷりのまなざしにも要チェックだ!

映画『誘拐ラプソディー』は4月3日より角川シネマ新宿ほか全国公開

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