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『ホビット 竜に奪われた王国』マーティン・フリーマン&ベネディクト・カンバーバッチ 単独インタビュー

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『ホビット 竜に奪われた王国』マーティン・フリーマン&ベネディクト・カンバーバッチ 単独インタビュー

一緒にやるというのは、二人にとって本当に素晴らしい経験だった

取材・文:編集部 市川遥

『ロード・オブ・ザ・リング』3部作から60年前を舞台に、再びピーター・ジャクソン監督がメガホンを取った映画『ホビット』3部作。第2部となる本作では、ドワーフ王国の奪還に向かう主人公のホビット族ビルボ(マーティン・フリーマン)が、ついに邪竜スマウグ(ベネディクト・カンバーバッチ)と対面する。テレビドラマ「SHERLOCK(シャーロック)」での名コンビで知られる二人が、再共演を語った。

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相棒役から敵同士に

マーティン・フリーマン&ベネディクト・カンバーバッチ

Q:お二人はテレビドラマ「SHERLOCK(シャーロック)」では相棒役ですが、本作ではスマウグとビルボという敵同士ですね。

ベネディクト・カンバーバッチ(以下、ベネディクト):『ホビット』で僕たちが演じたのは、「SHERLOCK(シャーロック)」とは全く違うダイナミックなキャラクターだから、すでに共演しているのは変な感じだった。でも姿を変えた二人をスクリーンで見るのはとても面白いね。一緒に過ごす時間がなかったのは残念だけど、技術的にどうしても別撮りしなければならなかったから仕方ない(注:ベネディクトはモーションキャプチャーで撮影)。僕たち二人にとって、全く違うものを一緒にやるというのは本当に素晴らしい経験だったよ。

Q:映画『ホビット』の見どころは、ビルボ対ゴラム、ビルボ対スマウグなど「ビルボ対『誰か』」の会話シーンだと思います。

マーティン・フリーマン(以下、マーティン):1作目のゴラムとビルボのシーンも素晴らしい脚色だったけど、今回のスマウグのシーンも素晴らしいものになっているね。スマウグとビルボの対面シーンはかなり象徴的なくだりで、そこでは頭脳戦が展開する。ただ、ビルボにとっては、頭脳戦というよりも殺されないように必死になっているだけなんだけど。頭脳では自信に欠けるビルボだけど、多くが懸かっているから必要に迫られて戦いに臨む。本当に見応えのあるシーンだ。

Q:実際どのように撮影されたのですか?

マーティン:目線はフリで、スマウグのセリフも聞こえない。映像も音もない状態で、自分で想像して、魂と情熱を込めて演じたんだ。とはいえ、非常に技術的な側面があったのは確かだね。頭上にある目印の箱を見上げて、一歩分右にある目印の箱を見て……という具合さ。さらにピーター(・ジャクソン監督)から大声で「今、やって来たぞ! 君の頭上を飛んでいったぞ!」と指示が出たりしてね。何しろベン(ベネディクト)が一緒にいるわけでもなく、彼の声でもなくて、言語コーチのリーがセリフを読むだけ。だから基本的な舞台、一対一を演じているみたいな感じだよ。ただ全て想像の世界の中でなんだけどね。すごくいい経験なんだ。目の前に存在するものを相手に演じることと、4歳のときにやっていたみたいに目の前にないものを相手に演じること。本作ではこの二つがミックスしているんだよ。時には同じシーンに両方があったり、同じ撮影日にそれぞれが続いたり。スマウグのときは、耳鳴りがするような大きな声だな。ベンの声でもなく……僕はベンの声はよく知っているからね。それにピーターから彼の録音分を聞かされていたし。現場で実際にセリフを読んでいるのはリーだけど、ベンの声を想像しながら演じたんだ。そうすることで、臨場感が出せるから。そして演じる相手としてリーが目の前にいる。だからお互いのやり取りが自然にできるんだよね。いい方法だったと思うよ。

スマウグは絶対にやりたかった役

マーティン・フリーマン&ベネディクト・カンバーバッチ

Q:ベネディクトさんは本作(第2部)からの出演ですね。スマウグとネクロマンサー(死人遣い)の二役で出演することになった経緯を教えてください。

ベネディクト:オーディションだった。「フランケンシュタイン」というロンドンで出演していた舞台の後にオファーをくれたんだ。ピーターは「SHERLOCK(シャーロック)」で僕を知ってくれていたんだけど、スマウグを演じるには全く違うものが必要だ。スマウグ役は体を動かす演技が大事で、「フランケンシュタイン」も体を動かす作品だったから、それも僕が選ばれた理由の一つだったのかもしれないね。タイミングがちょうど良かったんだ。ピーターと会うと「別の役も試してくれ」と言われ、正直うろたえたよ。「スマウグの役は誰かベテランの俳優を使うの?」と聞くと、「いや、君も候補に入っている。でも他の役はどう?」と言われた。でも僕は「絶対にスマウグをやりたい」と訴えて、そして実現したんだよ。

Q:スマウグという役柄にどのように取り組まれたのですか?

ベネディクト:動物園の爬虫(はちゅう)類館で勉強したよ。演劇を学ぶ学校でそうするように、俳優がそうすべきようにね。あと、大切だったのは、声に個性を持たせること。ただ演じるだけではなくて、動きに合わせて声にも変化を付けるようにした。映画館で観る人たちに、僕がスマウグにどんな個性を持たせたかったのかとか、僕の要素を見いだしてほしかった。スマウグは人間的。知りたがりだし、いたずら好きだし、恐いもの知らずだし、支配的だし、難しい性格だし、怒りっぽかったり、でも時には温厚だったり。それは全て人間の感情そのものだ。

Q:ネクロマンサー役についてはどうですか?

ベネディクト:ネクロマンサー役ではある意味大胆だけどバカげた決断をした。薄気味悪くて身の毛のよだつような“黒の言葉”(注:舞台となる中つ国で使われている言葉の一つ)にするために、“黒の言葉”のセリフを逆さに読んでそれを逆再生したんだ。あれは本当に不気味だよ(笑)。キャラクターのイメージは、人のエネルギーを吸い込む邪悪なブラックホール。そうした形のないものが人間の形を取っているんだ。それを動きだけでなく、声でも表現したかった。

リアリティーとファンタジーのバランス

マーティン・フリーマン&ベネディクト・カンバーバッチ

Q:前作と比べて、ビルボはずいぶんたくましくなりましたね! ドワーフたちを助けるためにクモと戦うシーンは迫力がありました。

マーティン:クモと戦うシーンの撮影は本当に大変だったよ、僕にはね。身体的にも精神的にも疲れ果ててしまったんだ。だってビルボにとって、今まで彼の中に存在すると思っていなかった感情が出てくるんだよ。恐怖からくる殺したくなるような憤怒と憎悪。それって、ビルボにとって受け入れることが最も難しい感情なんだと思う。第1部でのゴラムとのシーンの撮影では、僕がこうだと思ってやっていたことが間違っていたことがあったんだ。僕は最初、完璧なリアリティーを追求しようと思っていたんだけど、それは明らかに僕らがやろうとしていることではなかった。だってここは中つ国だからね。でも重要なのはそのバランスだったんだ。中つ国だから非現実的でいいんだなんて思ったらいいものはできないし、観客は偽物だとすぐにわかるからね。

Q:ベネディクトさんとは現場で会うことはなかったとのことですが、ドワーフ役の俳優陣とは長い撮影期間、どのように過ごしたのですか?

マーティン:僕らはいいチームだよ。誇りに思っている。全部で14人でしょ? イアン・マッケラン(魔法使いのガンダルフ)を加えて大きなグループだった。だから、今日はあっちにいて、明日はこっちにいて……ってできるから良かったんだと思うな。それに大人だから、それぞれのプライバシーは尊重しているしね。僕らはみんな違う経験をしているけど、役者としては新人じゃないから、いつも子犬の群れみたいに集まっていなくてもいいんだよ。もっと悪口を言いたいんだけど、ないんだよな。


マーティン・フリーマン&ベネディクト・カンバーバッチ

ビルボとスマウグの緊張感あふれる会話シーンはまさしく本作のハイライト。実際に現場で一緒になることはなかったものの、「ベンの声を想像しながら演じた」と言うマーティンと、「全く違うものを一緒にやるというのは本当に素晴らしい経験だった」と振り返るベネディクトの相性はばっちりだ。経験に裏打ちされたマーティンとベネディクトの確かな演技力が、J・R・R・トールキンの豊かな世界観を一層奥の深いものにしている。

写真:(C) amanaimages, (C) 2013 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. AND METRO-GOLDWYN-MAYER PICTURES INC.

映画『ホビット 竜に奪われた王国』は2月28日より全国公開

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