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夏を感じる映画

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夏を感じる映画

第67回カンヌ国際映画祭グランプリを受賞したファンタジックな家族ドラマ『夏をゆく人々』の公開をきっかけに、夏に観たくなる映画を大特集。幼いころに死んだ両親と再会した中年男のひと夏の不思議な体験を描く『異人たちとの夏』、井上陽水の主題歌でもおなじみの青春映画『少年時代』、ジブリアニメ『となりのトトロ』や押井守監督の傑作『うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー』など名作を厳選!(構成・文:編集部 石井百合子)

神秘的な自然の中で養蜂を営む一家の物語は観光映画としても秀逸

『夏をゆく人々』(2014)

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夏をゆく人々
映画『夏をゆく人々』より ©2014 tempesta srl / AMKA Films Pro ductions / Pola Pandora GmbH / ZDF/ RSI Radiotelevisione svizzera SRG SSR idee Suisse

 風光明媚(めいび)なイタリア中部・トスカーナ州周辺の人里離れた土地で暮らす、養蜂一家のひと夏を追った物語。ヒロインは、4人姉妹の長女ジェルソミーナ(マリア・アレクサンドラ・ルング)。一家の中で最もミツバチに精通し、体に刺さった蜂のとげを器用に抜くことができ、父ヴォルフガング(サム・ルーウィック)の信頼も厚い。ある日、村にテレビ番組「ふしぎの国」のクルーが訪れる。その地に根付くエトルリア文化を紹介すると共に、伝統に則した家族を募集し、コンテストで優勝者を決めるというものだ。銀髪のカツラと衣装をまとった番組の人気司会者ミリー(モニカ・ベルッチ)の美しさに魅せられたジェルソミーナはコンテストへの出場を決意。さらに、盗みと放火の罪で捕らえられていた14歳の少年マルティンを更生プログラムにより一家が預かることになったことから、一家の暮らしに波風が立っていく……。

夏をゆく人々

 自分の知らない世界に憧れるジェルソミーナの切実な思い、コンテストへの出場を頑なに拒否する父親とジェルソミーナの確執、言葉を発しないミステリアスなマルティンとジェルソミーナの間に生まれる絆。養蜂業存続の危機に立たされ、変化することを強いられる一家の葛藤が、少女の視点からきめ細やかに映し出される。大金をはたいて、幼いころジェルソミーナが飼いたがっていたラクダを買って帰った父親が、自分の知らぬ間にコンテスト出場を決めたジェルソミーナに落胆するシーンからは、すれ違う二人の苦悩がヒリヒリと伝わってくる。コンテストの模様や勝敗の行方に込められたメディア批判のメッセージもさることながら、観る人によって解釈の分かれる不思議なラストが余韻を残す。

映画『夏をゆく人々』は8月22日より公開

作品情報はコチラ>

生野菜を頬張るサツキとメイを見ると無性に田舎に行きたくなる

『となりのトトロ』(1988)

となりのトトロ
「となりのトトロ」ブルーレイ 価格:6,800円+税 発売元:ウォルト・ディズニー・スタジオ・ジャパン©1988 二馬力・G

 言わずと知れた、スタジオジブリ制作、宮崎駿監督作品の中でも特に人気の高いタイトル。子供だけに見える不思議な生き物「トトロ」と、サツキ&メイ姉妹の交流を描いたぬくもりあふれるファンタジーだ。父親に連れられて都会から田舎の「お化け屋敷」と呼ばれる古い一軒家に引っ越してきた2人だが、好奇心旺盛な二人にとって緑豊かな田舎の暮らしは、毎日が冒険の日々だ。ジブリ作品にはいつもおいしそうな食事のシーンが登場するが、この作品でも、とれたての生野菜を頬張るサツキとメイの姿がきらきらと輝いて見える。

 そして、おいしいトウモロコシ(メイは“トウモコロシ”と呼んでいる)を病気の母に食べさせようと一人奔走するメイのいじらしいことといったら。一見、ほのぼのとした物語のように見えるが、母親は入院中、父親は仕事に追われ、大人に見過ごされた幼い姉妹たち、特に一家の「母親」代わりとなる長女サツキのストレスは計り知れないものがある。だからこそ、二人がピンチを迎えたときにだけ現れ、助けてくれるトトロの存在が胸に染みる。

多感な少女の初恋、試練を描く甘酸っぱい青春映画

『マイ・ガール』(1991)

マイ・ガール
「マイ・ガール」ブルーレイ 価格:2,381円+税 販売元:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント

 1970年代、アメリカの田舎町を舞台に、11歳の少女ベーダの初恋と成長を描いたひと夏の物語。本作のヒロインに抜てきされ一躍名子役として脚光を浴びたアンナ・クラムスキー、そしてマコーレー・カルキンのおそらく「最も輝いていた時代」を切り取った記念碑的作品でもある。幼いころに母を亡くし、葬儀屋を営む父親(ダン・エイクロイド)と祖母と暮らすベーダ(クラムスキー)のもとに、死体のメイクアップ係として若い女性シェリー(ジェイミー・リー・カーティス)がやって来る。トレーラー生活で、死体にもド派手な化粧をしてしまう自由奔放なシェリーに、父親はすっかり夢中になり、次第に二人は親密な仲に。それが面白くないベーダはすねて父親を困らせながら、自分は詩の先生に猛アタック。

 死んだ母親を忘れて若い女性に心奪われる父親への不満、実るはずのない恋の行方、初潮……。そんな多感な時期を迎えたべーダを優しく見守る幼なじみのトーマス(カルキン)とのいかにも子供らしい友情模様が心地よい。大きな蜂の巣を落として湖に飛び込んだり、化粧をして「大人の女」に変身したべーダをトーマスが不思議そうに眺めたり。そして、初めてのキス……。終盤、あっけなく訪れる悲劇に、これらの何げないやりとりが効いてくる。

気立てのいいヒロインと美しい水の描写に目も心も潤う

『青いパパイヤの香り』(1993)

青いパパイヤの香り
「青いパパイヤの香り ニューマスター版」DVD 価格:3,800円+税 発売元:カルチュア・パブリッシャーズ 販売元:NBCユニバーサル・エンターテイメントジャパン

 フランス育ちのベトナム人監督トラン・アン・ユンが、第46回カンヌ国際映画祭でカメラドール(新人監督賞)を獲得し、第66回アカデミー賞外国語映画賞ノミネートの快挙を成し遂げたリリカルな人間ドラマ。1951年、サイゴンの一家に下働きの使用人として雇われたヒロイン、ムイ(トラン・ヌー・イェン・ケー)の少女時代、10年後を追った物語だ。「シンデレラ」のようにいじめられるわけでもなく、セリフもほとんどない

 彼女が長年憧れていた存在で、後に新進気鋭の作曲家として成功する美青年クェン(ヴァン・ホア・ホイ)に見初められ、結婚するというごくシンプルなストーリーだが、幾度となく見返したくなる絶大な癒やし効果を持っている。毎日、掃除に料理と黙々と、流れるように家事をこなすムイを見ていると不思議と心が安らぎ、ムイがパパイヤの料理を作る際に、実を割ると白い種がホロホロと落ちてきて、それをうれしそうに触り眺める……といった、平凡な生活の一コマを切り取った映像美にうっとりさせられる。とりわけ水の描写が美しく、ムイが水浴びをするシーンには、人間離れした神秘的な雰囲気が漂う。目も心も潤う一作だ。

熱帯夜に、にぎやかに観たい悪趣味テイスト全開のスプラッタ

『ピラニア3D』(2010)

ピラニア3D
「ピラニア3D コンプリート・エディション <2枚組>」価格:5,800円+税 発売元:ブロードメディア・スタジオ 販売元:ポニーキャニオン ©2010 THE WEINSTEIN COMPANY,LLC.ALL RIGHTS RESERVED.

 おみだらざんまいの浮かれた若者たちが殺人鬼のえじきになる……というホラー映画のお約束を踏まえたスプラッタ映画だが、若者たちを襲うのは殺人鬼ではなく殺人魚! 監督は『ハイテンション』で脚光を浴びたフレンチ・スプラッタの急先鋒、アレクサンドル・アジャ。大学生たちによる“ウェット・Tシャツ・コンテスト”が開催される中、200万年前に絶滅したはずの太古の肉食淡水魚ピラニアが猛威を振るう、血みどろの惨劇が展開する。

 ドラッグでハイになった青年の下半身が骨だけになってしまったり、浮き輪で湖に浮かんでいたビキニギャルが美尻をかまれたりと若者たちがピラニアに襲われる描写はもちろん、ヨットのエンジンに髪が巻き付いて顔面の皮膚もろともはがれてしまう美女など、「こんな死に方だけはしたくない」というエログロのオンパレード。深夜に数人集まってにぎやかに観たい、えげつない&おバカな怪作だが、『リービング・ラスベガス』でオスカーにノミネートされたエリザベス・シュー『バック・トゥ・ザ・フューチャー』シリーズのクリストファー・ロイドビッグな顔ぶれが華を添えている。

作品情報はコチラ>

友を裏切った少年の思いは……ラストシーンは涙なしに観られない

『少年時代』(1990)

少年時代
「少年時代」DVD 価格:4,500円+税 発売元:小学館 販売元:東宝

 「夏が過ぎ風あざみ~」のフレーズでおなじみ、井上陽水の主題歌でも知られる本作。柏原兵三原作の小説「長い道」と、藤子不二雄Aの同名漫画を篠田正浩監督が映画化。昭和19年の戦時下、東京から富山に疎開した裕福な少年と地元の貧しい少年とのホロ苦い友情を描いた青春映画だ。家族と離れ、田舎の親戚の家に預けられた小学5年生の進二(藤田哲也)は登校早々、クラスの級長でガキ大将の武(堀岡裕二)率いるグループのいじめの標的になる。この、田舎の小学校で繰り広げられるヒエラルキーの残酷さはすさまじいものだが、学校ではのけ者にしながら学校の外では進二に優しく接する、武の矛盾した心中が切ない。帰宅後、進二が武に「少年探偵団」の物語を話すのが、二人の常だ。そして、病欠していた副級長の須藤による策略により失墜する武の壮絶な運命……。

 大阪から疎開してきた少女に「ガキ大将に取り入っている」と言われたことからムキになり、須藤グループに寝返った進二は、はたから見ればひきょうかもしれない。隣町で進二が武と敵対するグループに襲われそうになったときに身をていして助けてくれたり、写真館で記念写真を撮ったり、浜へ遊びに行ったり……。そんなひそやかな友情を育くんだ武を裏切った、進二の罪悪感が痛烈に胸に迫ってくる。陽水の主題歌が流れる中、戦争が終わり東京に帰っていく進二が汽車から目にする光景は涙なしに見られない。

毎日が学園祭の前日!奇妙な楽園を描く押井守監督の最高傑作

『うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー』(1984)

うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー
「うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー」ブルーレイ 価格:4,700円+税 発売・販売元:東宝

 高橋留美子作「うる星やつら」の劇場版オリジナル長編アニメの第2作で、全6作の中でも傑作と名高い押井守監督の代表作。ラムとあたるが通う高校で、学園祭の前日が繰り返される異常事態が発生。しかも家にたどり着けたのはラムとあたるだけで、クラスメートたちは帰ろうとしても学校に戻ってきてしまい、保健医のサクラらが調査に乗り出したところ、友引町全体が巨大な亀の背に乗って宙に浮かんでいた……という驚がくの事実に行き当たる。

 押井自身が脚本も手掛け、従来のドタバタのラブコメ要素は控えめに、「浦島太郎」を思わせるミステリー仕立てのストーリーテリングにグイグイ引き込まれる。キーパーソンは、随所に登場するチンドン屋と白い帽子&ワンピースの少女。ラムとあたるに近しい人間以外の町の住人たちは姿を消し、コンビニエンスストアの物資は尽きることなく、なぜか諸星家に都合のいい生活が続く。やがて明かされる「無限のループ」の切ない真実に加え、廃虚と化した友引町で繰り広げられる奇妙な“楽園”の世界観は圧巻。

死んだ両親と再会した中年男の恐ろしくも悲しい体験

『異人たちとの夏』(1988)

異人たちとの夏
「あの頃映画 the BEST 松竹ブルーレイ・コレクション 異人たちとの夏」価格:3,300円+税 発売・販売元:松竹 (C) 1988 松竹株式会社

 「もしも亡くなった両親に会うことができたら……?」誰しもが願うであろう切実な夢をかなえてくれる、恐ろしくも悲しい物語。原作・山田太一、脚色・市川森一、監督・大林宣彦という黄金のトリオが実現した名作だ。妻と離婚し、心がすさんだ売れっ子中年脚本家・原田(風間杜夫)が、ふらりと立ち寄った浅草の寄席で、父親によく似た人物を見掛ける。困惑する原田だが、男(片岡鶴太郎)に「じゃあ行こうか」と声を掛けられ、誘われるままにかつて住んでいた家にたどり着く。そして二人を迎えたのは、若く美しいままの母親(秋吉久美子)だった……。

 この冒頭シーンに、主人公の「まさか……」の思いが駆け巡り、一気に惹(ひ)き込まれる。物語は、懐かしい両親との再会と、同じマンションに住む美しい女性ケイ(名取裕子)との愛が並行して描かれていく。どこか寂しそうでワケありげなケイと、両親との再会により心が潤った原田。孤独を分かち合う二人の官能描写も印象的だが、彼が夢にまで見た懐かしい両親と過ごすつかの間のひとときは、見れば見るほど泣けてくる。しかし、その一方で原田は両親と会うたびに痩せ衰えていき、苦渋の決断を迫られることになる。プッチーニの名曲「私のお父様」をBGMにした衝撃的な展開に心底ゾッとさせられ、主人公が涙ながらに懺悔をしながら両親と別れるシーンの風間の名演には号泣必至。主演の風間、片岡、秋吉のハマり役のキャスティング、絶妙のアンサンブルが本作の成功のカギとなっている。また、日本の古き良き街並みを美しく映し出すことにたけた大林監督がノスタルジックに捉えた浅草の風景は必見だ。

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