シネマトゥデイ

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観たいものを自由に!意表をつくディープな特集上映 渋谷の名画座とは ラジカル鈴木の味わい名画座探訪記

 僕が住んで25年になる渋谷は、都内有数の映画館の街。しかし昨今はその数はやや減少。でも、どっこいまだまだワンアンドオンリーな、コアなハコがある!

■今月の名画座「シネマヴェーラ渋谷」

シネマヴェーラ渋谷

 道玄坂から東急本店へ抜ける、クラブやラブホテルの密集したランブリング・ストリート(この名前、いまいち浸透していませんが)にある4つの映画館が入ったシネコンプレックスビルKINOHAUSの4F。ほかではなかなかやらない特集上映が中心の、まだ新しい名画座だ。

■夫婦二人三脚!名画座誕生のきっかけ

 オーナーの内藤篤さん、由美子さんご夫婦が当時都内で立て続けになくなっていた名画座を「自らやりたい」と思ったことが始まり。移転のユーロスペースと共に、この地に2006年創業。主婦でイチ映画ファンだった由美子さんは、3年ほど前から子育てと親の介護から解放され、一人でプログラムを組み、チラシの文章を書き、ゲストを決め、デザインデータまで作っている! ポスターはオフィスにある大型プリンターで印刷、外注は全くしないのだそう。

 ご主人の篤さんは音楽や映画の著作権を扱う弁護士が本業。東大在学中に蓮實重彦ゼミに通い、清水宏中川信夫監督の論文で雑誌のイメージフォーラムに入選し、著書も何冊もある方。自ら書くFacebookの投稿と、お客さんとのやりとりが軽妙で面白い。作品によっては、字幕を自ら書いている場合もあるとか。

 「夫は上映作品全てを観ています。その為に自分が観られる土・日・月曜日で全部の上映を網羅できるように番組を組んでいます(笑)」と由美子さん。まさにファミリーシアター。ほかの名画座と決定的に違うのは、オーナーご夫婦の個人的に観たいものと上映するものが、ほぼ一致しているという点。

■シネマヴェーラ渋谷のオシャレポイント:カフェもある都会的な建物

シネマヴェーラ渋谷
映写室の35mm映写機

 道玄坂側からの猥雑なエリアを通るのに抵抗があったら、オシャレな東急文化村側から向かえばすぐに着く。1Fは映画関係の書籍や資料が充実したカフェ&イベントスペース。ここで待ち合わせて、上映前まで時間を過ごすのもいい。建物は新しくてきれい。4Fに降りると、コンクリ打ちっぱなしの都会的な趣、一切無駄なもののないロビーは由美子さんの趣味。

■シネマヴェーラ渋谷のここがツボ:圧倒的な上映作品数

 こちらの最大の魅力は、その守備範囲の広さ! いい意味で節操がない。ヌーヴェルバーグ、イタリアンネオリアリズム、邦画の重鎮や新作、極道モノ、ロマンポルノ……じっくり日数をかけて特集上映する。取材時フレデリック・ワイズマンというアテネ・フランセ向きの特集やっていたのに、次は「抗争と流血 東映実録路線の時代」(笑)。往年の名画座のにおいを確実に受け継いでいる。由美子さん曰く「次回予告に全く違うものを見せるのが、わたしの喜びなんです」とのこと。納得(笑)。

 これだけレアな作品を、どうやって揃えているのでしょう。「1953年以前の作品はパブリックドメインになっていて、海外のブルーレイのDVDを買い揃えて、うちで日本語字幕を付けて上映します。字幕版の権利はうちで持って、そこは弁護士ですからね。地のハコに貸し出すこともあります。徐々に作品がたまって500本くらいのストックは既にあって、そこから次の企画を考えます」(由美子さん)。最近はヒッチコックの作品もたまってきているそうで、近々特集を組もうとお考えらしい。期待大。

■特集での仰天エピソード!

シネマヴェーラ渋谷
「実録外伝 大阪伝撃作戦」より松方弘樹、渡瀬恒彦

 一昨年の特集上映「祝・芸能生活50周年 安藤昇伝説」。安藤昇は、我が渋谷のレジェンドとして僕も大ファンなので何度も足を運んだが、昨年89才でお亡くなりに。この特集上映はまるではなむけのようで、何とも深い巡り合わせを感じた。

 由美子さんにこのときのことを振り返っていただくと、「邦画の特集で一番お客が入ったんです。安藤さんが亡くなってから追悼特集をやってくれ、というお話も多くいただいたんですが、あのとき、そのスジの本物の方々が多数いらっしゃって、警察の方まで来て大変なことになって……。改めて安藤さんの存在の特別さを思い知りましたが、残念ながら、もう2回目は無理だと思っています」と仰天エピソードが。何とも残念!

■「ハプニングも含めて、ライブとして劇場を体感しに来てほしい」

 「全ジャンルに貴賎なし」をモットーにしている内藤夫妻。由美子さんは「もちろん名画も上映するけど、これってホントに名画なの? というものでも、今辛うじてかけられる絶滅危惧種を、上映するのが使命だと思っています」と映画愛を語ってくれた。

 最後に若い映画ファンへいただいたメッセージを。「とにかく劇場で観ることがクセになる人が増えるといいなあと。昔は、画面がキズだらけだったり、雑音が激しくって、上映中にフィルムが切れちゃったり、さまざまなトラブルがあったじゃないですか。そういうハプニングも含めて、ライブとして劇場を体感しに来て欲しい。 新しい若いお客さんを増やしたいです。そうしないと、古い映画を観ようっていう文化がなくなってしまいますからね。今、名画女子なんて言われている人たちもいるようですけど、会社帰りにお一人でもぜひ寄ってみてください」。

 僕も25年の間に至近に何年も住んでいたこの界隈。少々刺激の強いもの、いかがわしいもの、全てを飲み込んで、誰にも何とも言われない場所。若者たちの、本当に自由なエリアに相応しい、スピリットを持った劇場がここにあり!

■映画館情報

シネマヴェーラ渋谷

〒150-0044 渋谷区円山町1-5 KINOHAUS(キノハウス)4F
TEL:03-3461-7703

公式サイト

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ラジカル鈴木 プロフィール

イラストレーター。映画好きが高じて、絵つきのコラム執筆を複数媒体で続けている。

ラジカル鈴木の味わい名画座探訪記バックナンバー

追悼-プリンスと4本の映画 vol.1 大ヒット作~カルト作品編

追悼-プリンスと4本の映画 vol.2 傑作ライブ映画~早過ぎたスピリチュアル映画編

ウディ・アレンのワイルドな挑戦と失敗 Vol.1

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