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戦前からバブル期まで!垣根のない名画の宝庫が神保町にあった!

ラジカル鈴木の味わい名画座探訪記

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 打ち合せで足を運ぶことの多い神保町。大手から中小まで沢山の出版社、編プロ、そして世界でも類を見ない最大の古書&書店街。学校が近かったので何時間も散策し、入り浸って今日に至る。デザイン、アート、映画、音楽、ついでにエロ、と必要な資料は大体手に入った。街全体が興味あるものの宝庫。再開発された区画には友人が勤めていた印刷会社があって遊びに行っていた。学生街であるが所以のリーズナブルでボリューミ-なB級グルメのメッカでもあり、通っていたら確実に太る(笑)。特に個性的なカレー屋が集まっていて有名、古い喫茶店も多い。その魅力は変わらない。

今月の名画座「神保町シアター」

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 2007年、全く新しい名画座がオープン。都営、東京メトロと3線の神保町駅から徒歩3分、JR御茶ノ水駅からも歩ける。三省堂書店の裏、すずらん通りを入ったレトロな雰囲気漂う裏路地に、グッドデザイン賞を取った何ともSFチックな建物が現れる。小学館と吉本興業が経営する神保町シアタービル。日時によってはロビーや外まで、2階にある「神保町花月」出演の若手芸人のファンが溢れている。

 地下にあるのが神保町シアター。外観や最新の設備とは裏腹に、昭和の邦画専門館だ。ロビーには特集に合わせた手作りの年表とフィルモグラフィー、関連記事、関連書籍の販売。全入替え制、飲食物の販売はなし。綺麗で快適な内部は3D対応シルバースクリーンを設置、ここで旧作を観るギャップがたまらない。

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格調と懐かしさ

 作品はカルトなものよりも、文芸路線、また下町ならではの大衆的娯楽映画の特集が得意。往年の女優特集は評判で、高峰秀子原節子岡田茉莉子山田五十鈴杉村春子飯田蝶子太地喜和子若尾文子倍賞千恵子……眩く輝くスターを、銀幕で観る愉み。

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ロビーに建物の模型が置かれていた。SF映画に出てくる要塞のようだ。

 かつて映画館や寄席が沢山あったという神保町。この地に本社を構える小学館の社長と、かつてこの地に東京事務所があった吉本興業が組んで興した神保町シアタービル。地下が小学館運営の映画館「神保町シアター」で、2階から上は吉本の演芸場と練習場が入っている。映画館オープン時は関連のアニメや新作がメインだったが、思うようにお客が入らず、2年目から古本街に合わせていく。レイトショーの「川本三郎編 映画の昭和雑貨店こどもたちのいた風景」が評判となり、第2弾「昭和30年代ノスタルジア」をやり、「中村登と市川崑」から日本映画の旧作にシフト。

支配人・佐藤奈穂子さんに訊く

 支配人の佐藤さんは1976年東京生まれ、山形育ち。山形の映画館でアルバイトしたのを始め、「山形国際ドキュメンタリー映画祭」のスタッフに参加したのち、ここのオープンからアルバイトで入る。「カウンターの受付や、チケットのモギリをやっていました。今は現場に足を運べない日もあるので、ちょっと寂しいなと。私モギリが大好きなんです。出来るだけ、一日に一回は顔を出して、『私にモギラせて!』って(笑)けどなかなか叶わなくて。かつて、浅草の映画館の券売の窓口なんかに、イイ感じのオバチャンがいたじゃないですが、一生あんなふうになりたかったんです(笑)」。

 特に大入りだったのは、いかにも神保町シアターらしい「芦川いづみ特集」だという。「引退して50年経っている方で、日活で、主演というよりは錚々たるスターたちの恋人や娘役をされてました。しかしアンケートではお名前が大量に書かれ、いづみさん宛に『貴女は私の初恋の方です』みたいな熱い手紙、ハガキもウチに沢山来て(笑)。母体が出版社なので、出版なら当たった企画は第2弾、第3弾とリピートするもんだ、と言われて、第3回まで催して、どの回も盛況でした。今だにリクエストが来るので、第4回もあるかもしれません」。

 ゲストで印象に残っているのは、90歳記念特集上映のときの鈴木清順監督。「かなり体調がお悪く、来られるかどうかは判らなかったのですが、松原智恵子さんがゲストの日に急きょ連絡があり、いらっしゃいました。監督の浪漫三部作は不動の人気があるんですが、日活時代のプログラムピクチャーを特集しても、傑作がいっぱいあるのにいまいち集客が伸びなくて。もっと来て欲しいので、いつか当たるんじゃないかと、時期を見てまた特集をやります!」。

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映画は時代を映し出す

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『暖簾』 森繁久彌 山田五十鈴 監督:川島雄三 1958年

 「戦後70年特別企画 1945-1946年の映画」では、お客さんの反応が興味深かったという。「あんなに焼けの原だったのに、こんなに映画作っていたんだね~、とか、あんなときに誰がこんなに映画を観ていたんだろう? とか。一方、バラックで仮の小屋を作って皆嬉しくて殺到して、扉が閉まらないくらい物凄く盛況だった、なんて話も聞きました」。

 昨年末好評だった「私をバブルに連れてって 《バブリー映画特集》」。石田純一吉川晃司斉藤由貴岡村靖幸などの1980~1990年代映画も積極的に紹介していきたいと毎年末に開催。観客は20代が多い。また、普段の特集の中にも1980年代の作品をこっそり入れたりして、お客さんの反応を見ているという。「戦前、戦後、バブルの時代も映画のあり方はあんまり変わらないのは面白いです。お客さんは男性が圧倒的に多いので、20~40代の女性には、どんな企画や傾向が人気なのか、常に考えています。次は、バブル崩壊の1990年代を、どう打ち出すかがテーマです」。

垣根をつくらず楽しんで

 「私自身、ビデオで観てたものをスクリーンで観て感動しました。逆に一度観てしまったら、またDVD等で観る気には、あまりなりません。それを若い人にもっと体験して欲しいです。古き良き"名画座"を知らない世代にも受け入れてもらえる新しい形の名画座を目指しています。若い人にとっては、'50年代の映画も'80年代の映画も未知なのは同じなので、年代に関わらず、どうやって皆さんに届けるか、垣根をつくらず楽しんでもらいたいな、と」。名画について訊くと「私は、ハッキリこれは名画、これは名画じゃないとは絶対に言いません。映画の見方は人それぞれ、千差万別です。その人にとって好きなものを、独りでDVDを観るよりも劇場で観る楽しみを、ハタ! と気づく日があるといいなと思います。そして『この映画が生涯で一番好き』って言ってもらえたら嬉しいです」と佐藤さん。

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町と映画館の幸せなカンケイ

 千代田区の真ん中にありながら下町っぽい人情が残る神保町。「古いお店も多く、近所の目もあるけど、古いのも新しいのも、顔の見えるおつき合いと言うか、町全体の繋がりが強い気がします。『おたくで映画観た後のお客がよく来てくれるよー』って声かけて頂いたり。書店さんはウチの特集に合わせた品揃えにしてくれるし、矢口書店さんや映画、演劇専門のお店にパンフレットやシナリオを買いに来るお客さんは合わせてウチに映画を観に来るし、こういうのは他のエリアでは考えられないですよね。フードや飲み物がないのは、鑑賞前後にぜひ神保町の街で腹ごしらえしたり、お茶していただきたいからなんです」。

 昨年末にはラーメン二郎・神田神保町店がロビーの窓から見える隣にオープン、次回のコースは決まった、マシマシで。臭いがちと気になるが。神保町散策はまだまだやめられない。

■映画館情報
神保町シアター
住所:東京都 千代田区 神田神保町1-23 神保町シアタービル
TEL:03-5281-5132
席数:99席
公式サイト
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「赤川次郎と現代ミステリーの世界 映画で愉しむ謎解きエンターテインメント!」2月24日~3月23日

ラジカル鈴木 プロフィール

イラストレーター。映画好きが高じて、絵つきのコラム執筆を複数媒体で続けている。

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