劇場公開後すぐに家で映画が観られるように?DCヒーロー大作がVRに?アメリカの映画館事情

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 世界の映画産業の中心・アメリカの最新映画情報を現地在住ライターがお伝えする「最新! 全米HOTムービー」。今回は、アメリカの映画館事情をさくっとご紹介!(取材・文:明美・トスト/Akemi Tosto)

劇場公開後、すぐに家で映画が観られる時代へ

映画館
iStock.com / nyul

 去年にも増してVOD(ビデオ・オン・デマンド)や配信サービスが勢力を増しているが、こういったカスタマーの心理を見越してか、映画スタジオがすでに動き始めている。これまでは新作映画を劇場公開後70日~90日は個人家庭向け配給(VOD、配信サービス、DVD販売等)をしない、というのがスタジオと劇場主間の取り決めだったが、その契約がスタジオの要請で見直されつつあるのだ。

 メジャー映画スタジオ7社のうち6社は、一般家庭への映画配給時期を緩和する必要があると考えており、スタジオによって提案している緩和レベルに差があるものの、劇場公開後17日~45日後に30ドル~50ドル(3,300円~5,500円)で家庭向け配給開始、という新しい契約条項をスタジオ側から劇場主たちに提案しているのだ。劇場での“日持ち”がいい作品(たとえば『スター・ウォーズ』シリーズなど)を多数所有するディズニーは現状維持を唱えているものの、契約は恐らく前向きに改正されると予想される。劇場がこの案を受け入れた場合、早期の個人家庭向け配給で出た収益の何パーセントかを渡すと交渉しているスタジオもあるようだ。(1ドル110円計算)

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DCヒーロー大作がVRコンテンツに

VR
iStock.com / RobertoDavid

 こういった世相ではあるが、映画館だからこその強みはまだ十分存在している。巨大なスクリーンで観たいと思わせる『スター・ウォーズ』シリーズやマーベルヒーローもの、あるいはSFやアクション大作系はやはり劇場が強く、3DやIMAXの迫力はやはり映画館でしか体験できない。

 3DやIMAXに加え、ビデオゲーム業界ではすでに定着しつつあるVR(バーチャルリアリティ)も映画業界で存在感を放つようになってきている。先日には、ワーナー・ホームエンターテインメントとIMAXがタッグを組み、DCヒーロー大作を基にしたVRコンテンツをリリースすると発表したばかりだ。今冬公開の『ジャスティス・リーグ』を皮切りに、『アクアマン(原題) / Aquaman』、そしてタイトル未発表作と向こう3年にわたってVRコンテンツを作り、一定期間IMAX VRセンターで公開した後、個人家庭向けに配給していくという。IMAX VRが定着したあかつきには、映画館の遊園地化が主流の時代到来となる。

 ちなみにIMAX VRセンターは今年1月にロサンゼルスにオープンしており、今年末までにはニューヨーク、英マンチェスター、上海、そして日本にもオープン予定だ。

 資本のある大手にとっては、デジタルプロジェクションや最新のサウンドシステム、はたまたVR機器の導入は順当な経営判断だろう。だが資本の少ない中小シアターにとっては新しいテクノロジーの導入がビジネスの生死を分ける大問題に成り得る。危惧されるのは中小の映画館がどんどん減っていき、インディペンデント映画やドラマ作品の上映館が激減の一途をたどり、大作のみが映画館で上映されるというような時代が来るのではないかということだ。

 大手スタジオに臨むのは、常にリスクを回避しないでほしいということ。当初失敗すると思われていたミュージカル映画『ラ・ラ・ランド』が大ヒットを記録したのは、勇気あるフィルムメーカーたちがリスクを冒して、新鮮な映画を作ったから。アカデミー賞作品賞候補にもなった『ヒデン・フィギュアーズ(原題)』がジワジワと大ヒットとなったのは、万人のハートに触れる素晴らしい作品だと映画ファンの口コミが広がったから。この2作品のヒットは、スクリーンからヒーローが飛び出してこなくても爆発シーンがなくても、映画は大ヒットを記録できるという証だ。「安全な」作品を作りたい理由は理解できるが、このままで行くと、映画館というものの存在が違うものになってきてしまうだろう。ハリウッド大作も小粒の名作もいろいろな作品を映画館で観たい映画ファンにとって、加速する“映画館の遊園地化”は複雑な問題を提示することになりそうだ。

【今月のHOTライター】
明美・トスト / Akemi Tosto 高校よりロサンゼルス在住、CMや映画の製作助手を経て現在に至る。全米映画協会(MPAA)公認ライターとしてだけでなく、監督としても活躍中。短編作品『ボクが人間だったとき/When I Was a Human』がアカデミー賞公認配給会社ショーツ・インターナショナルより配給され、iTunesとAmazonで日本版発売中。ツイッターもよろしく!

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