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胸を打たれる愛の物語!最多13ノミネートを果たした『シェイプ・オブ・ウォーター』

第90回アカデミー賞

シェイプ・オブ・ウォーター
サイレント映画のようなクラシックな美しさがある大人のファンタジー『シェイプ・オブ・ウォーター』より - (C) 2017 Twentieth Century Fox

 愛とは何か。その答えが描かれて、誰もが深くうなずかずにはいられない。数々の映画賞受賞も、アカデミー賞最多部門ノミネートも、それゆえなのではないだろうか。(文:平沢薫)

 声を発することのできないヒロインが、言葉を話さないクリーチャーに出会って愛するようになる。彼女はその理由を手話でこう表現する。「彼はわたしのことを、何か欠けたところのある不完全な存在としては見ない。彼はただ、あるがままのわたしを見る」。このヒロインが若くなく、目を見張るほどの美貌でもなく、その愛に性的行為も含まれているところが、従来のおとぎ話のヒロインとは違う。

 この愛の強さを際立たせるのが、アメリカとソ連の冷戦下という時代背景だ。2つの大国という巨大な存在が権力闘争をする時代の中で、愛が、当時の社会的立場の弱い人々の間に伝わっていく。ヒロイン・イライザ(サリー・ホーキンス)も、言葉を話せず政府の極秘研究所で深夜清掃員をする存在。そして、そんな彼女に協力するのが、同僚の黒人女性(オクタヴィア・スペンサー)と、アパートの隣人で同性愛を隠している失業中の初老男性(リチャード・ジェンキンス)、そして祖国ソ連に諜報活動を強要されるがその命令に反して自分の意思を貫こうとする生物学者(マイケル・スタールバーグ)なのだ。

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シェイプ・オブ・ウォーター
孤独なヒロイン・イライザを演じるサリー・ホーキンス(右)と隣人で画家のギルズ役のリチャード・ジェンキンス(左)『シェイプ・オブ・ウォーター』より - (C) 2017 Twentieth Century Fox

 そして、この愛のロマンチックさを増幅させているのが、モノクロのミュージカル映画の数々。ヒロインとアパートの隣人男性はいつもテレビで昔のモノクロのミュージカル映画を観ていて、2人でソファに座ってダンスの足だけ真似したりする。この習慣があるので、ヒロインがクリーチャーに自分の思いを伝えようとするとき、スクリーン上に素晴らしい魔法が起きる。

 本作はこうした誰もが胸を打たれる愛の物語なのだが、それでありながら、実はいつものギレルモ・デル・トロ監督映画でもある。この監督はクリーチャーが大好き。だから『ブレイド2』(2002)でも『デビルズ・バックボーン』(2004)でも『ヘルボーイ』(2004)シリーズでも、もちろん『パンズ・ラビリンス』(2007)でも、いつもクリーチャーはどこか愛らしい。そして、クリーチャーは純粋で、怪物は人間なのだ。

シェイプ・オブ・ウォーター
政府の極秘研究所の実験室に捕らわれている不思議な生き物とイライザの関係は? 『シェイプ・オブ・ウォーター』より - Fox Searchlight Pictures / Photofest / ゲッティ イメージズ

 本作のクリーチャーを演じる俳優も、デル・トロ映画の常連。『ヘルボーイ』シリーズの本作の役に似た水棲人役、『パンズ・ラビリンス』の牧神役などのクリーチャーを演じてきたダグ・ジョーンズ。本作のクリーチャーの設定が影響を受けている古典名作『大アマゾンの半魚人』(1954)は、監督が子供の頃から最も愛しているモンスター映画の一つなのだ。デル・トロ監督のクリーチャー愛は、本作にもしっかり貫かれている。

 また、色彩設計もデル・トロ流。この監督の映像は、デル・トロ流の青緑色とデル・トロ流の琥珀色を多用するのが定番で、中でも『パンズ・ラビリンス』『ヘルボーイ/ゴールデン・アーミー』(2009)はそれが顕著。本作でこの色彩設計がさらに極まっているのは、重要モチーフである“水”のイメージを青緑色で表現しているためだろう。画面は基本的に青緑色で、ときおり琥珀色が入り、青緑色の対極にある赤色が印象的に使われている。撮影も、監督と『ミミック』(1998)『クリムゾン・ピーク』(2016)で組んでいるダン・ローストセン。デル・トロ流のどこか暖かい映像の質感も変わっていない。

シェイプ・オブ・ウォーター
イライザを温かく支えるゼルダ役のオクタヴィア・スペンサー(右)『シェイプ・オブ・ウォーター』より - (C) 2017 Twentieth Century Fox

 そして、もうひとつ素晴らしいのは、本作のタイトルだろう。直訳すると“水の形”。監督自身も語っているが、この水とは愛のこと。水も愛も、それを取り巻く状況が変われば、それに合わせて姿を変える。だから、どこにでも、どんな形でも存在することができる。このタイトルが、物語のすべてを語っている。

圧倒的な映像美で種族を超えたラブストーリー『シェイプ・オブ・ウォーター』予告編

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