スパイダーマンはなぜ日本でも愛されるのか?
スパイダーマンの魅力とは(連載第1回)
数あるアメコミヒーローの中でもダントツ人気のスパイダーマン! 今年は『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』で大活躍。来年は初のアニメ映画『スパイダーマン:スパイダーバース』、仮称『アベンジャーズ4』、『スパイダーマン:ホームカミング』の続編と3本のスパイダーマン映画が公開! 改めてその魅力に迫ります。(文:杉山すぴ豊)
スパイダーマンというのは数あるアメコミヒーローの中で日本における知名度・人気度が最も高いキャラクターだと思います。その理由はいくつか挙げられます。
その1:日本版スパイダーマン”が存在したこと
まずいわゆる“日本版スパイダーマン”が存在したことです。1970年~1971年にあの池上遼一さんが絵を担当し、舞台は東京、主人公は日本人の高校生という漫画版スパイダーマンが「月刊別冊少年マガジン」(講談社)に連載され、1978年~1979年には東映が特撮テレビドラマとして「スパイダーマン」を放送しています。
そして近年、アメコミヒーロー・スパイダーマンは一躍ブレイクするわけですが、子どものころに少年マガジン版や東映版スパイダーマンを見て育った大人たちが動員に貢献したとも考えられます。しかし“日本版スパイダーマン”はかれこれ40年以上も前の話。
その神通力がいまだに効いているとは思えません。ここで重要なことは“日本版スパイダーマン”を作ることができるぐらい、もともとスパイダーマンというキャラは“日本人に向いていた”ということです。
その2:顔すべてを覆うマスク
その秘密はマスクにあります。アメコミヒーローの中で“マスクで顔をすべて覆う”ヒーローというのは実は珍しい。
でもマスクで素顔が見えないからこそ共感できるのです。子どもはあのマスクの下に自分の顔があると想像することができる。マスクをかぶれば自分もヒーローになれる。白人のヒーローが多い中で、どんな人種の子もスパイダーマンには自分を投影できるわけです。ハンサムな白人の男であるスーパーマンというキャラを、日本人に置き換えることは難しい。
けれどマスクの下に誰が来ようがOKなスパイダーマンなら日本人という設定でも成立します。やっぱりどんな素顔でもOK! というキャラは愛されやすいのです。
その3:マッチョではない!
そしてもう一つ。スパイダーマンが華奢(きゃしゃ)な体形ということも大きな理由です。スパイダーマンの生みの親であるスタン・リーと対談した故・手塚治虫さんは、
「数あるヒーローの中で、スパイダーマンが日本人に一番ウケると思う。なぜなら筋骨隆々じゃなくて日本人みたいなヒョろっとした体形だからだ」(「Town Mook 増刊 アメリカンコミックス ポスターライブラリー」徳間書店刊より)
そうアメコミヒーロー=マッチョというイメージを壊したのがスパイダーマンだったのです。同じことを映画『アメイジング・スパイダーマン』シリーズで主人公を演じたアンドリュー・ガーフィールドが2012年、サンディエゴでのコミコン・インターナショナルで言っています。
「スパイダーマンは僕みたいなやせっぽちな子どもでもヒーローになれることを教えてくれた」
誰もがキャプテン・アメリカやマイティ・ソーのような美しくて、たくましい体をしているわけではない。そうしたコンプレックスにスパイダーマンは応えてくれたわけです。
マスクと体形で日本人も受け入れやすかった、というのがスパイダーマンが日本でも人気がある理由でしょう!?
さらに日本ではアイアンマン、デッドプールの人気も高いですが、彼らも顔をマスクで隠していますよね。あとそんなにマッチョではない。そしてスパイダーマン同様、赤ベースのコスチュームです。
日本では戦隊ものなどの影響でヒーローの色といえば赤で(笑)ここがまたスパイダーマンが日本人の琴線に触れるという説もあります。
いかがだったでしょうか? 次回は、スパイダーマン映画が新しいファンを獲得し続ける理由について、「なぜスパイダーマン映画は3回も役者を変えたのか?」をお届けします。
杉山すぴ豊(すぎやま すぴ ゆたか)プロフィール
アメキャラ系ライターの肩書でアメコミ映画についての情報をさまざまなメディア、劇場パンフレット、東京コミコン等のイベントで発信。現在「スクリーン」「ヤングアニマル嵐」でアメコミ映画の連載あり。サンディエゴ・コミコンも毎年参加している。来日したエマ・ストーンに「あなた(日本の)スパイダーマンね」と言われたことが自慢。