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河瀬監督らが語る日仏映画合作協定はなぜ必要なのか(6/6)

映画で何ができるのか

日本の資金調達の動き

市山尚三
ジャ・ジャンクー作品のプロデューサーであり、東京フィルメックスのディレクターでもある市山尚三。

澤田:ここからは(日本の映画関係者に向けて)日本語で話します。僕はこちらでフランス映画を作り、今まで2回ほど、日本でフランス映画を撮りに行きました。その際、合作をやる意味がどこにあるのかをいつも考えます。一番必要なのは、映画そのものがどれだけ力を持つのかということになってくると思います。今の日本映画はある時期を越えて、これから開くんじゃないかと思いますし、フランスの映画作家たちも日本で撮影をしたがっています。ようやく日本でも最近、窓口が開いてきて、国際共同製作映画支援事業という助成金ができました。ただこれも、もう少し改良していただきたいのです。

1年以内に完成作を提出しなければならないという期限付きですと、(応募条件をクリアする)作品を狭めてしまいます。申請する側も、実質80%のファイナンスが成立していないと申請できないという状況です。できればもう少し、(条件を)開げてくれると非常にやりやすい。もし可能であれば、将来日本もタックスリベートが成立できれば、海外チームも日本に行って撮影したいと思うでしょう。実際に、映画がうまく日本の観光資源を活用できるのではないかと思います。

会場の記者より:以前、深田晃司監督にインタビューをした時、日本のインディーズの作品にはなかなかお金が集まらないと嘆いていました。その後状況に変化はありましたか?

ジール:若い監督たちの間で新たな動きがあるそうですね。

市山:深田さんが発起人の一人となっている「独立映画鍋」ですね。日本はメジャーの映画会社で組織する日本映画製作者連盟のような組織はあるのですがインディペンデントの団体はなかったので、今、若い人たちが「独立映画鍋」に集って、さまざまな訴えかけを行っています。毎年、東京国際映画祭や、わたしがディレクターを務める東京フィルメックスでもシンポジウムを主催し、海外の状況も聞いてみたり、文化庁の方を招いて意見交換も行っています。先ほど国際共同製作映画支援事業の応募条件を改善すべきというもっともな提案がありましたが、国内の助成金の方は改正(単年度助成だけでなく2か年助成も可など)がありました。今後も少しずつ進歩があるのではないかと思います。

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まとめ

今回の交流会の会場には、萩生田議員をはじめ、日本映画界の大手で組織する日本映画製作者連盟の役員でもある東宝の島谷能成社長、と東映の多田憲之社長、KADOKAWAの角川歴彦会長も出席しており、まず彼らになぜ今、日仏映画協力協定がなぜ必要なのかを訴えるための機会でもあった。なぜなら、合作協定を締結させる条件としてフランス側から「ユネスコの文化多様性条約に日本が批准すること」を突きつけられており、映画業界全体で政府への働きかけをすることが必要だからだ。ちなみに、欧米の主要国は批准しているが、日本はアメリカと並んでいまだに批准に至っていない。

さらに交流会で克明になったのは、河瀬監督が語っているように、フランスの映画人のグローバルな視点を持って常に行動していることである。今、国際映画祭で快進撃を続けている『僕はイエス様が嫌い』(5月31日公開)の奥山大史監督にインタビューした際に次のようなことを語っていた。スペインのサンセバスチャン国際映画祭のニュー・ディレクターズ部門に選ばれた際、フランスを含めて世界中の海外セールス会社や映画祭などから問い合わせが多数あったが、日本からは東京フィルメックスだけだったという。国内市場にだけ目を向けている人と、海外を視野に入れて活動している人たちとではアンテナの張り巡らせ方が全く違うということを、歴然と物語るエピソードだ。

今回、日仏映画協力協定が締結されたことでCNCとユニジャパンは交流を深めていくという。今後もこうした情報や意見交換の場が多数開かれ、まずは国内の映画関係者の内向きな意識が変わることを期待したい。それがいずれ作品の質の向上へとつながるはずだ。

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