間違いなしの神配信映画『ヘアスプレー・ライブ!』

神配信映画

コメディー編 連載第3回(全7回)

 ここ最近ネット配信映画に名作が増えてきた。NetflixやAmazonなどのオリジナルを含め、劇場未公開映画でネット視聴できるハズレなしの鉄板映画を紹介する。今回はコメディー編として、全7作品、毎日1作品のレビューをお送りする。

ジェニファー・ハドソンアリアナ・グランデはじめ、豪華キャストによるセット内とは思えない圧巻のライブミュージカル!

マディー・ベイリオとハーヴェイ・ファイアスタイン
主演のマディー・ベイリオ(右)とハーヴェイ・ファイアスタイン。『ヘアスプレー・ライブ!』 - NBC / Photofest / ゲッティ イメージズ

『ヘアスプレー・ライブ!』NBC

上映時間:113分

監督:ケニー・レオン

キャスト:ジェニファー・ハドソン、クリスティン・チェノウェスハーヴェイ・ファイアスタイン

 米3大ネットワークの一つNBCが、2013年12月5日にライブミュージカル「サウンド・オブ・ミュージック・ライブ!」を放送した。セット内で俳優たちが生放送で歌って踊って一つの作品を視聴者に届けるライブミュージカルは、カメラワークやセット、そして豪華キャストが一体となった、舞台を収録した映像や通常のテレビ作品、コンサート形式とも異なるハイブリットな魅力に満ちている。たった1回の生放送が終われば、基本的にテレビ映画に分類されるこのライブミュージカル企画は人気を博し、NBCやFOXなど全米ネットワークの目玉企画となっている。

 日本では Amazon Prime Video のデジタル配信でレンタル・購入できる作品が複数あるが、今回紹介するのは中でも一つの作品としての完成度が高く評価あれている『ヘアスプレー・ライブ!』(2016)。1988年のジョン・ウォーターズ監督の映画『ヘアスプレー』に基づくミュージカル舞台版が2002年にブロードウェイで上演され、トニー賞に輝く大ヒットロングランとなり世界各国で上演された。さらに2007年にはアダム・シャンクマン監督のミュージカル映画版が作られたが、本作はミュージカル舞台版に沿ったものである。

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ジェニファー・ハドソン
圧巻の歌声!ジェニファー・ハドソン。『ヘアスプレー・ライブ!』 - NBC / Photofest / ゲッティ イメージズ

 1962年、黒人差別の風潮が強く残るメリーランド州ボルチモア。10代のぽっちゃり体型のトレイシーの夢は、地元のダンス番組「コーニー・コリンズ・ショー」に出演して踊ること。番組レギュラーメンバーのオーディションが開催されると知り、母親エドナの心配をよそにトレイシーは喜び勇んで会場へ。だが番組プロデューサーのベルマから、体型を理由に落とされてしまう。でも卑屈になることなく元気いっぱい、はつらつとしたポジティブオーラ全開のトレイシーは、偶然知り合ったシーウィードをはじめとする黒人生徒たちと仲良くなり、やがては前述のダンス番組における差別撤廃運動へと大きなうねりを巻き起こしていく

 冒頭、街の俯瞰(ふかん)からカメラがパン(水平方向に移動)してトレイシーの寝室へ。おなじみの「グッド・モーニング・ボルティモア」を歌いながらトレイシーが学校へ行く道すがら、通りを歩く様子は車やバイクが走っていたりと「本当に生放送なの?」と思うような大掛かりなセットに驚かされる。同時に、俳優が息を弾ませたりするなど生放送っぽさも。だからこそ舞台を間近で見ているような迫力や臨場感をたっぷりと味わうことができるのだが、「コーニー・コリンズ・ショー」には番組を観覧している観客たちが歓声をあげたりしていて、なんだか不思議な感覚もある。トニー賞受賞のケニー・レオンとエミー賞に輝くアレックス・ルジンスキーによる演出は見どこが多い。

アリアナ・グランデ
主人公トレーシーの友人を演じたアリアナ・グランデ。『ヘアスプレー・ライブ!』 - NBC / Photofest / ゲッティ イメージズ

 もっとも、そうしたあれやこれやは圧巻のパフォーマンスの数々に吹き飛んでしまう。ライブミュージカルのシリーズは各界から集結した豪華キャストが見ものだが、本作はトニー賞に輝くミュージカルスターや舞台人を筆頭に、映画やテレビでおなじみの実力派からアリアナ・グランデも登場。ベルマ役にミュージカル舞台「ウィキッド」のクリスティン・チェノウェス、ディズニーチャンネルのオリジナル映画『ディセンダント』シリーズのダヴ・キャメロンや、マシュー・モリソンザック・エフロンらが演じてきたリンク役には『ティーン・ビーチ・ムービー』(2013)のギャレット・クレイトンなど若手の才能も安定感がある。トレイシーの母エドナ役として、舞台版のオリジナルキャストで大喝采を浴びたハーヴェイ・ファイアスタインが登場し、トレードマークのだみ声をきかせてくれるのも心にくい。

 マーク・シェイマンスコット・ウィットマンによる素晴らしい楽曲の数々もまた名曲ぞろい。中でも聴かせどころとなる「I Know Where I've Been」を自慢の声量MAXで歌い上げるのは、モーターマウス役のジェニファー・ハドソン。そして何よりもパワー全開で走り切るトレイシー役のマディー・ベイリオには、心から拍手を送りたくなる。オーディションでこの役を勝ち取ったベイリオは、映画『ダンプリン』(2018)でも美声を聴かせている女優兼歌手だが、本作のそうそうたる顔ぶれの中で主役を全力で演じ切る頑張りは、トレイシーと重なり胸が熱くなる。

 ラストも大団円。ただしミュージカル映画版と舞台版はラストが異なるが、本作は舞台版と同じラストになっている。また映画版のオリジナル楽曲「Come So Far(Got So Far To Go)」は本作でも使われており、エンディングではハドソンとグランデが歌う。本作はある種の理想主義と徹底した楽観主義に貫かれているが、人種差別やボディポジティブ(外見や体型の多様性を受け入れる)、ドラァグ(女装)など、今日的なダイバーシティ(多様性)をめぐる問題意識が盛り込まれている。「ここまでよく頑張ってきたけれど、まだ先は長い」と歌う前述の楽曲で幕を降ろすことで、今もなお闘いは続いている現実をしっかりと伝えている。(今祥枝)

『ヘアスプレー・ライブ!』はAmazon Prime Videoにて配信中

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