鈴木亮平の怪演に戦慄!『孤狼の血 LEVEL2』など8月の5つ星映画
今月の5つ星
人気カーアクションシリーズ最新作から過激描写だらけのDC映画、俳優たちの演技のぶつかり合いが熱い『孤狼の血』続編、カンヌ映画祭脚本賞受賞作、そして注目のアニメーション映画まで、見逃し厳禁の作品をピックアップ。これが8月の5つ星映画5作品だ!
20周年で限界突破!カーアクションは未知の領域へ
『ワイルド・スピード/ジェットブレイク』8月6日公開
今年で劇場初公開から20周年を迎えた『ワイルド・スピード』シリーズ。約8年ぶりにシリーズに復帰したジャスティン・リン監督が手掛ける第9弾は、過去作とのリンクが最も強い続編であると同時に、映画の醍醐味であるカーアクションを未知の領域へと引き上げた。磁力の影響で車がありえない角度で走行したり、ロケットエンジンを取り付けた車が大気圏目掛けて飛行するなど、奇想天外なアイデアに圧倒される。
奇跡の復活を遂げたハンやドミニクの弟を登場させたことで、ストーリーにも厚みが増し、家族というシリーズ共通のテーマをより深く掘り下げている。シリーズを熟知するジャスティン監督だからこそできた意外なキャラクターの再登場など、ファンをニヤリとさせる演出も秀逸。本編鑑賞後には、きっと過去作を一気見したくなるはずだ。シリーズ完結へと向かう次回作へのヒントもちりばめられており、完結3部作の序章として申し分ないスタートを切った。(編集部・倉本拓弥)
愛すべきサイテーな悪党どもが大暴れ!
『ザ・スーサイド・スクワッド “極”悪党、集結』8月13日公開
スーパーヒーローを苦しめた悪役たちが、減刑をかけた命がけのミッションに駆り出されるアクション大作。マーベル/ディズニー解雇騒動の最中に、DC/ワーナー・ブラザースから自由な制作環境を与えられたジェームズ・ガン監督が、自分だけの『特攻大作戦』を作ろうとイマジネーションを全力投下。結果として、ラストまでキャラの命を無駄使いしまくる、笑いと過激描写満載の快作が誕生した。
生ぬるいコミック映画化に唾を吐くかのように、メンバーは悪人だらけ。だからこそ、どんなヒーローよりも人間臭い悪党どもを愛さずにはいられない。はみだし者たちに向けた、ガン監督の愛が全編に詰め込まれている。ワーナー史上最大規模のセットを建設したという、リアルな戦闘シーンも迫力満点。おすすめキャラは、どこから見てもサメなキング・シャークと、水玉だらけの陰キャ悪役ポルカドットマンだ!(編集部・ 入倉功一)
鈴木亮平&村上虹郎のキャスティングの妙!
『孤狼の血 LEVEL2』8月20日公開
スマッシュヒットした白石和彌監督作『孤狼の血』(2018)の3年後を描く本作は、松坂桃李演じる刑事・日岡の前に、鈴木亮平ふんする“悪魔”的な組長・上林が立ちはだかる。鈴木が非道な上林を怪演。目が笑っていない笑顔で他を圧倒し、何をしでかすかわからない不気味な空気を漂わせる。上林による背筋が凍るような暴力描写は、この人物の底知れない恐怖をにおわせ、これまで“いい人”を演じることが多かった鈴木だからこそ、驚きと恐怖が何倍にも増す。
また、日岡のスパイとして上林に近づくチンタ役の村上虹郎の追い詰められていく演技には鬼気迫るものが。軽口を叩くお調子者のチンタが、上林を前に後戻りできない選択をしていく過程に胸が締め付けられる。主演の松坂はもちろんのこと、前作に続きキャスティングの妙が光っており、個性あふれる俳優たちの演技のぶつかり合いで生じる熱がスクリーンからひしひしと伝わってくる。(編集部・梅山富美子)
日本映画を新たなステージへと導く珠玉の179分
『ドライブ・マイ・カー』8月20日公開
世界的ベストセラー作家・村上春樹の短編小説を、『寝ても覚めても』などの濱口竜介が監督と脚本を担当して映画化したヒューマンドラマ。妻を失った舞台俳優兼演出家の家福悠介(西島秀俊)がゆっくりと自分を見つめ、再生へと向かっていく。濱口監督と共同脚本の大江崇允が紡いだ物語はオリジナリティーにあふれており、日本映画を新たなステージへと導く力強さを持っている。179分という長尺の映画だが、第74回カンヌ国際映画祭で邦画史上初となる脚本賞受賞の快挙を成し遂げた脚本は、心を動かす圧巻のラストへと引き込む。
派手な描写がない分、キャストたちの力量が問われる作品で、主演の西島はもちろん、三浦透子、岡田将生、霧島れいからキャスト陣が役として生き切っているかのような演技は圧巻。特に、「村上春樹の言葉」を自分のものにした高槻(岡田)の、家福との車の中での会話シーンはお見事。(編集部・海江田宗)
ほっこり&じんわり…小さな幸せの大切さに気付く
『岬のマヨイガ』8月27日公開
「霧のむこうのふしぎな町」などの作家・柏葉幸子の児童文学を原作にしたアニメーション。居場所を失くした17歳のユイと、声を失った8歳のひよりが、謎の老女・キワさんと出会い、岬に立つ古民家で3人暮らしを始めることから物語が展開する。地域の伝説や妖怪たちが登場し、ユイたちの生活に寄り添うすこしふしぎなストーリーで、ファンタジー要素がいっぱいだが、日常を描いた物語のようにほっこり温かい空気が心地よい。
一方で、震災の傷跡や後悔、あらゆるトラウマが人々の心に渦巻き、強大な力に集約されていく描写はおぞましくもあるが、人を受け入れ、痛みに寄り添うことの大切さ、日々の小さな幸せの積み重ねが心を癒やしていくことをそっと教えてくれる。ユイ役の芦田愛菜、キワさん役の大竹しのぶらの素朴な声の芝居によって、そうした作品のメッセージがじんわり胸にしみてくる。夏休み、家族で楽しむのにもピッタリの1作。(編集部・小山美咲)