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「今、私たちの学校は…」は何が面白い?Netflix世界1位の大ヒット

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今、私たちの学校は…
Netflixシリーズ「今、私たちの学校は…」独占配信中

 Netflixオリジナルの韓国ドラマ「今、私たちの学校は…」が世界中で爆発的な人気を博している。配信後3日間で視聴1億2,479万時間を記録、世界29か国で1位を獲得し、グローバルTOP10(テレビ・非英語)でも1位を独走中。「イカゲーム」第1週の視聴時間が6,319万時間だったことを考えると、「今、私たちの学校は…」の人気ぶりと世界中での韓国ドラマへの期待の高まりがよくわかる(なお、「イカゲーム」の週単位の最高累計視聴時間は5億7,176万時間)。

 「今、私たちの学校は…」は、韓国のとある地方都市の高校を舞台にしたゾンビアクションスリラー。韓国では近年、映画『新感染 ファイナル・エクスプレス』『#生きている』、ドラマ「キングダム」「Sweet Home -俺と世界の絶望-」など、ゾンビものの傑作が連打されているが、「今、私たちの学校は…」はその総決算とも言える作品だ。アッパーでキレのいいアクションと次の展開がまったく予想できないスリル、学校という限定空間から市全域、そして国全体に広がっていくスケール感など、どれも一級品。『新感染』の興奮が12時間以上、ぶっ続けで迫ってくると言えば、想像できるだろうか。少年少女が主役ということもあって青春映画の要素もあれば、韓国エンタメが得意にしている社会問題への接続、哲学的なバックグラウンドもある。もちろん、ゾンビドラマの金字塔「ウォーキング・デッド」シリーズを重ねて観る人も多いだろう。

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今、私たちの学校は…

 全速力で走って襲いかかってくるゾンビたちは、音に反応して、引き戸は開けられず、首を撃ち抜かれると機能停止するという設定を持つ。苛烈ないじめ(という名の暴力)で息子が瀕死の重傷を負わされた科学教師、イ・ビョンチャン(キム・ビョンチョル)が開発したウイルスによって発生したもの。シリーズの前半は、学校に取り残された生徒たちのサバイバルが中心で、学内食堂での大人数での争いや図書室でのアクション(本棚の上が安全地帯となる)など、CGに頼りすぎず、人海戦術と長回しを駆使して表現されたゾンビアクションは圧巻の一言。

今、私たちの学校は…

 生き残った生徒たちは、心優しいヒロインのオンジョ(パク・ジフ)、彼女の幼馴染で地味キャラのチョンサン(ユン・チャンヨン)、周囲に心を閉ざしている委員長のナムラ(チョ・イヒョン)、運動神経抜群のスヒョク(パク・ソロモン)、力持ちで勇敢なデブキャラのデス(イム・ジェヒョク)、自己中心的なお嬢様のナヨン(「イカゲーム」のイ・ユミ)など個性豊か。ゾンビの襲撃から逃れる中で、彼らの友情や恋愛、対立、孤独、家族への情愛などが描かれていく。生きるか死ぬかの瀬戸際なのに、誰が誰に告白したかが気になったりするところが高校生らしい。

 校内で彼らとは別の場所で戦う、ゾンビを容赦なく射抜くアーチェリー部のキャプテンのハリ(ハ・スンリ)、タバコ好きの不良女子のミジン(イ・ウンセム)、他人を殺すのもいとわない卑劣な不良のグィナム(ユ・インス)、グィナムに激しいいじめを受けていた女子生徒のウンジ(オ・ヘス)らがどのように合流していくかも見もの。

今、私たちの学校は…

 学校の中という限定空間でのサバイバルと同時に、学校の外である市街地や韓国社会の様子も描かれていく。潤沢な予算と規模、全12話で12時間強という尺を持つNetflixオリジナルドラマの利点を存分に生かしていると言えるだろう。未知のウイルスに対する対応については、新型コロナウイルスのパンデミック後ならではの描写も多い。学校に取り残された娘を助けようとするレスキュー隊員のソジュ(チョン・ベス)、ある使命をもって行動する心優しい刑事のジェイク(イ・ギュヒョン)などの活躍も描かれるが、やがてゾンビは街を覆い尽くし、国全体を揺るがしていく。中盤からは物語の鍵を握る、ウイルスが人間の意識を学習した進化型のゾンビも登場して、物語は加速度的に進んでいく。

 攻撃的なゾンビが覆い尽くす世界は地獄としか言いようがないが、ウイルスの生みの親であるビョンチャンは「こんな世の中は滅びてしかるべきだ」「強者が弱者を攻撃するのは、世の常です」と言い放つ。いじめに象徴されるように、強者は弱者をいつも踏みつけ、誰も助けの手を伸ばさない。甚大な災害が発生しても、強者の救助が優先されて弱者は置きざりにされる。街から逃れて助けを求める老人と幼女は、感染エリアからの人の受け入れに反対するデモ隊に生卵をぶつけられる。

今、私たちの学校は…

 学校に取り残された生徒たちのもとへ救助隊も警察もやってこないのは、修学旅行中の高校生をはじめ299人もの死者を出した大惨事、セウォル号沈没事故が下敷きになっている。この事故では、乗客の救助活動をせずに逃げ出した船長や船員の問題、非正規雇用の問題や船の検査を見逃していた政官財の癒着、まともに対応しなかった韓国政府の問題など、いくつもの社会の問題が重なっており、若者たちがその犠牲となった。ゾンビがいる世界だけでなく、この世界そのものも地獄であり、学校は地獄の縮図なのだ。

 ビョンチャンはウイルスに「ヨナス・ウイルス」と名付けていた。科学技術の危険性と現在世代が未来世代のために引き受けるべき責任を説いたドイツの哲学者、ハンス・ヨナスの名前をとったものだ。

 オンジョ、チョンサンら未来を担う若者たちは生き延びることができるのか? 大人たちは彼らを助けることができるのか? そして、この地獄のような世界はどのようになっていくのか? どんな結末を迎えるのか、最後まで目が離せないはずだ。(大山くまお)

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