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生々しい恐怖…『ザ・バットマン』など3月の5つ星映画

今月の5つ星

 新たなバットマン映画に、アカデミー賞作品賞にノミネートされたギレルモ・デル・トロ監督作とケネス・ブラナー監督作、人気ギャグ漫画を実写映画化した爆笑エンタメ、そしてピクサー最新作まで、見逃し厳禁の作品をピックアップ。これが3月の5つ星映画5作品だ!

バットマン史に名を刻む新たな凶悪ヴィラン誕生

THE BATMAN-ザ・バットマン-』3月11日公開

 DCコミックスで80年以上の人気を誇るバットマンを、『猿の惑星:聖戦記(グレート・ウォー)』のマット・リーヴス監督が実写化。ロバート・パティンソン演じる若きブルース・ウェインが、ゴッサムの権力者を狙った連続殺人事件の真相を追う。冒頭からヴィラン目線で物語がつづられ、バットマンが悪人をたこ殴りにするなど、歴代作品には見られない描写の数々が斬新だ。ヒッチコック映画やフィルム・ノワールからの影響が強くみられ、王道ヒーロー映画とは一線を画した、サスペンスフルな展開に息をのむ。

 嘘と暴力が蔓延るゴッサムの描き方は、歴代最高とも言えるほど緻密で、その街で暗躍する知能犯リドラーは、実在するのではないかと恐怖を覚えるほど生々しい。リドラーが憑依したようなポール・ダノの怪演は、バットマン映画史に名を刻むことだろう。すでにスピンオフが決定するなど、新たなバットマン・ユニバース誕生の幕開けに相応しい作品となった。(編集部・倉本拓弥)

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全ての“女の子たち”への祝福の物語

私ときどきレッサーパンダ』3月11日よりディズニープラスで独占配信

 感情が高まると巨大なレッサーパンダに変身してしまうメイを主人公にしたピクサー・アニメーション最新作。13歳という心も体も変化する思春期の女の子のハチャメチャな混乱具合を、彼女を巨大でもふもふのレッサーパンダに変化させることで表現。『Bao』でアカデミー賞短編アニメ賞を受賞した中国系カナダ人のドミー・シー監督は、大ファンだという日本のアニメの要素を取り入れてメイのめくるめく日々と感情を巧みに表し、長編デビュー作にして、自らのルーツと同じく東と西の要素を美しく融合させた新しいピクサー映画を作り上げた。周囲の期待と本当の自分、親との関係に悩む全ての思春期の子供たちにとって、本作は大きな助けになるはずだ。いつだってメイの味方の女友達、厳格だがメイへの愛情が根底にあることがわかるからこそ憎めない母親、さらには祖母、おばたちへの眼差しにも愛があふれており、全ての世代の女性たちへの讃歌にもなっている。(編集部・市川遥)

ここまでやるか!? 捨て身の役者魂

KAPPEI カッペイ』3月18日公開

 「デトロイト・メタル・シティ」の作者・若杉公徳のギャグ漫画を実写映画化した爆笑エンターテインメント。やがて訪れるという終末に備え、幼い頃から人里離れた島で修行の日々を送っていた戦士たちは、殺人拳・無戒殺風拳を習得するも、世界は滅亡しなかった……ということで突然解散を言い渡される。東京に流れ着いた主人公の勝平は、右も左もわからぬ都会に戸惑いながらも、初めての恋を経験する。

 童貞をこじらせた終末の戦士にふんするのは、主演の伊藤英明をはじめ、大貫勇輔山本耕史小澤征悦という脂の乗った大物ぞろい。原作漫画のノリといで立ちを忠実に再現し、見た目はミドルエイジながらも中身は思春期真っ盛りという役どころを、文字通り体を張って演じ切っている。笑いの連打攻撃が繰り広げられるも、戦士たちの表情に笑いは一切なく真剣そのもの。その姿がさらに笑いを誘い、爆笑のループに陥ってしまうという底知れぬ破壊力を持った作品だ。(編集部・香取亜希)

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デル・トロ印の悪夢的世界で輝く女優陣

ナイトメア・アリー』3月25日公開

 ギレルモ・デル・トロ監督が、恐ろしくも悲しい人間の業を描き出すサスペンススリラー。古典ノワール小説を基に、1940年前後のアメリカで、流れ者からショービジネスの成功者となった男が、自らの強欲によって人生を狂わせていく。ゴージャスで悪夢的な世界観を体験するだけでもスクリーンで観る価値アリだ。

 人を惹き付ける一方で、心に闇を抱えた主人公を好演したブラッドリー・クーパーも魅力的だが、何といってもケイト・ブランシェットルーニー・マーラら女優陣の息をのむ美しさと名演は必見。『怪物團』を参考にしたという、獣人(ギーク)を見せ物にする怪しげなカーニバルと、そこで身を寄せ合い生きる人々の描写には、いつものデル・トロ節が炸裂。同時に、どんな怪物よりも恐ろしい、人間の一面を浮き彫りにする物語がデル・トロの真骨頂を感じさせる。哀れみに満ちた衝撃的なラストは、現代社会への痛烈な皮肉とも取れる。(編集部・入倉功一)

少年の目線で描かれる、激動の時代のいとおしい日々

ベルファスト』3月25日公開

 ベルファスト生まれのケネス・ブラナーが、自身の少年期の思い出を投影した自伝的作品。北アイルランド紛争が新局面を迎えた1969年、人々が宗教的な帰属をめぐって分断を加速させるなか、少年バディの一夏がモノクロ映像でノスタルジックにつづられる。

 裕福ではないものの、映画を愛するバディは家族と共に楽しく暮らし、クラスの女の子とのロマンスに頭を悩ませる。そんなバディのキュートな言動はいとおしく、思わず頬が緩んでしまう。バディ役のジュード・ヒルの生き生きとした表情が素晴らしく、少年期の揺れ動く心が見事に表現されている。また、子供のあずかり知らぬところで分断していく町の混沌とした状況は、現代社会の縮図のようでもある。生活と隣り合わせに暴力がある場所で暮らすことは、バディにとって幸せなのか? そう悩む両親の気持ちも思いはからずにはいられない。ケネスの郷土愛が感じられるとともに、映画作家としての原点も垣間見ることができる珠玉の一作だ。(編集部・大内啓輔)

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