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「ベター・コール・ソウル」と「ブレイキング・バッド」が地続きに!

今週のベター・コール・ソウル

ソウル
第11話はソウルがウォルターとの“最悪の始まり”が描かれる。「ベター・コール・ソウル」シーズン2より Netflixシリーズ「ベター・コール・ソウル」シーズン1~6独占配信中

 第11話「ベター・コール・ソウル」は、第10話に続きモノクロームの映像で描かれる「ブレイキング・バッド」の後日譚=現在のジーンの物語と、「ブレイキング・バッド」にソウル・グッドマンが初登場したシーズン2第8話「ソウルに電話しよう!(Better Call Soul)」と地続きになったドラマが交互に描かれた。(文・今祥枝)

※ご注意 この記事は「ベター・コール・ソウル」シーズン6についてのネタバレが含まれる内容となります。視聴後にお読みいただくことをおすすめします。

今週のベター・コール・ソウル~シーズン6第11話

 アバンタイトルはカラーパートで、「ブレイキング・バッド」シーズン2第8話で描かれた、ソウル(ボブ・オデンカーク)が拉致されたところから始まる。なぜ彼がこの状況に陥っているのかといえば、ウォルター(ブライアン・クランストン)の相棒ジェシー(アーロン・ポール)の仲間の売人でもあったバッジャー(マット・ジョーンズ)がハンク(ディーン・ノリス)率いる米麻薬取締局(DEA)のおとり捜査で捕まり、取り調べでバッジャーがDEAに証言させないために、ウォルターとジェシーが一度は自分たちの依頼を断ったソウルを脅迫するためだ。2人はソウルを砂漠へ連れて行き、掘られた穴を見せて仕事をするよう迫るのだった。

 恐怖に駆られたソウルが「あれはイグナシオ(別名ナチョ:マイケル・マンド)が勝手にやったことだ。ラロ(トニー・ダルトン)の差し金か?」とわめくシーンが「ブレイキング・バッド」シーズン2第8話にあったが、今回はその続きとして、ジェシーが「ラロの差し金かって聞いたろ? 街では聞いたことない、誰だ?」とソウルに問いかける場面が描かれた。これをもってして、2009年に放送された「ブレイキング・バッド」と「ベター・コール・ソウル」の見事な邂逅(かいこう)が果たされたと言えるだろう。テレビシリーズとして、ほとんど奇跡のような構成である。

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ウォルターとジェシー
「ブレイキング・バッド」の主人公ウォルター(左)と相棒ジェシーも登場!「ブレイキング・バッド」より AMC / Photofest / ゲッティ イメージズ

 そして、ソウルがウォルターと仕事をする道を選ぶという、“最悪の始まり”のシーンが描かれる。ソウルの弁護士事務所で、ハイゼンベルク(ウォルターの偽名)の調査結果を伝えるマイク(ジョナサン・バンクス)。高校の化学教師で、ステージ3Aの肺ガンだと言い、「俺ならかかわらない。この男は完全な素人だ。病を生き延びても捕まるか、頭を撃たれるか」と警告する。「ああいうひげの男はロクな選択をしてきていない」とソウルはつぶやくが、内心ではウォルター=ハイゼンベルクと仕事をすることを決めていたようだ。

 このカラーパートと呼応するかのように、現在のジーン(ソウル)のドラマがモノクロ映像で展開する。ジーンは、ソウルの秘書だったフランチェスカ(ティナ・パーカー)と公衆電話で話をする。これは「ベター・コール・ソウル」のシーズン4第5話「危ない橋」で、フラッシュフォワードとして描かれた、ソウルが万事休すとなり弁護士事務所を慌ててたたむシーンとリンクしている。フランチェスカとともに書類をシュレッダーにかけたソウルは、別れ際に廃れたガソリンスタンドの公衆電話に「11月12日の午後3時」に電話をするからフランチェスカにその電話に出るようにと言っていたのだった。

 ジーンからの電話でフランチェスカは、ウォルターが麻薬王であることが明るみに出た後、関係者がどうなっているのかを伝える。ソウルのボディーガードだったヒューエル(ラヴェル・クロフォード)はニューオーリンズに帰ったらしく、ジミーと対立していた検事捕ビル・オークリー(ピーター・ディセス)は今は弁護士となり、ウォルターの妻スカイラー(アンナ・ガン)はDEAと取引をし、逃げ延びたのはジェシーとソウルだけだと。ソウルが個人事務所を置いていたネイルサロンはなくなり、資金洗浄のためのレーザータグ(レーザー銃で戦う遊び場)もFBIに見つかった。海外の架空の会社に隠していた85万ドルもFBIに没収されたことなどが判明する。

フランチェスカ
ソウルの秘書だったフランチェスカも重要な役割を担っていた。「ベター・コール・ソウル」シーズン3より Netflixシリーズ「ベター・コール・ソウル」シーズン1~6独占配信中

 しかし最も重要なのは、フランチェスカの無事を確かめるためにキム(レイ・シーホーン)が電話してきたという情報だ。「ジミーは生きているのか」と聞かれたと知り、ジーンは、キムが働いているらしいフロリダ州タイタスビルのパームコースト・スプリンクラーに電話をかけ、キム・ウェクスラーを呼び出す。

 電話の向こうの誰と話しているのかはわからず声も聞こえないが、引きの画でジーンが大声でわめき、何度も受話器をたたきつけて怒りをあらわにしている姿が映し出される。この後、ジーンは再びタクシードライバーのジェフ(パット・ヒーリー)に犯罪の計画を持ちかける。バーでカモとなる男性に酒に酔わせてタクシーに送り込み、運転手のジェフが睡眠薬入りの水を渡して眠らせ、もう一人の仲間がその男性の家に忍び込んで身分証明書やクレジットカード、納税記録などを写真に撮る。個人情報窃盗犯罪という、新たな「ゲーム」の始まりだ。

 新しいワイヤレスヘッドセットと新しい Swing Master Machine (金魚運動マシーン)を購入し、娼婦と関係を持つジーンは、すっかりソウルに戻ってしまったようだ。例のキムを呼び出した時の電話の内容が引き金となったと考えられる。一方、家の車庫でジェフとやり取りするジーンを、窓越しにじっと見つめるジェフの母マリオン(キャロル・バーネット)の存在も気になるところだ。

マイク
ウォルターの仕事をソウルが受けることに否定的だったマイク。「ベター・コール・ソウル」シーズン2より Netflixシリーズ「ベター・コール・ソウル」シーズン1~6独占配信中

 ラストはカラーとモノクロの2つのシーンの対比で終わる。カラーパートでは、ソウルがウォルターが勤める J・P・ウィン高校に入っていく。この後の展開、校内でのソウルがウォルターにビジネスの話をするくだりもまた「ブレイキング・バッド」のシーズン2第8話で描かれていた。マイクの忠告を聞くことなく、ソウルが自らの手で破滅を招いてしまう決断をした決定的なシーンだ。

 一方、モノクロパートでは、カモの男性が“たちの悪い”ガンの患者だと知った仲間の一人が、彼をだますのは嫌だと言う。だが、ジーンは耳を貸さず、男性の家のガラスを割ってまでゲームを続けようとする。ウォルターと同様にガン患者であるこの男性との出会いは、再びジーンの人生を大きく変えることになるのだろうか。

 この第11話は、ソウル/ジーンにウォルターの影響力が色濃く影を落としていることがエピソードのタイトルも含めて、対比として読み取れる作りとなっている。かつてウォルター=ハイゼンベルクは完全にソウルに対して支配力を持っていた。そのウォルターにソウルが抱いていた感情は、まさにウォルターを思わせるひげをたくわえたジーンの外見にも現れているだろう。

 残り2話。焦点となるのは、やはりキムとの関係だろうか。

Netflixシリーズ「ベター・コール・ソウル」シーズン1~6独占配信中

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