ADVERTISEMENT

「テイルズ・オブ・ザ・ウォーキング・デッド」第1話:まさに新機軸!1話完結型の新たな「TWD」誕生

今週のウォーキング・デッド

 海外ドラマ「ウォーキング・デッド」のスピンオフ中でもユニークな、1話完結型のアンソロジー・シリーズ「テイルズ・オブ・ザ・ウォーキング・デッド」の日本配信がスタート。第1話「イーヴィーとジョー」の舞台は、ウォーカー発生から約1年後のオハイオ州~ミシガン州。本家シリーズとは一味違うドラマが展開される!(文・平沢薫)

※ご注意:本記事はネタバレを含みます。「テイルズ・オブ・ザ・ウォーキング・デッド」第1話をまだ観ていない方はご注意ください。

違う場所、時間軸…1話ごとにストーリーが完結

 このシリーズのポイントは、毎回ストーリーが完結する形式であること。エピソードごとに、アメリカ国内の違う場所、違う時間軸で、異なる人物のドラマが描かれる。登場人物は、基本的にシリーズ初登場。例外的に、本家シリーズの人物が登場する回もある、という構成だ。

 もう一つ注目なのが、脚本家。第3話と第5話は本家シリーズの脚本家だが、それ以外はエピソードごとに脚本家が違う。しかも、その脚本家たちは「ウォーキング・デッド」ユニバース初参加の顔ぶれなのだ。このように各話独立した完結するストーリーで、新顔の脚本家が担当するということは、このシリーズが目指すのは「これまでの本家シリーズにはなかった、違うテイストの物語」なのではないかと思わせる。

 そんな新たな世界が楽しみなシリーズだが、クリエイター2人は定番の顔ぶれ。まず「ウォーキング・デッド」ユニバースを統括するコンテンツ・オフィサーのスコット・M・ギンプル。もう1人は、本家シリーズのシーズン4から脚本とプロデュースに参加してきたチャニング・パウエル。どんな斬新な物語が描かれても、この2人が「ウォーキング・デッド」の基本的世界観をキープしているはずだ。

ADVERTISEMENT

常連の監督+新顔脚本家による新たなドラマ

 第1話の顔ぶれをチェックすると、監督はこのユニバースの常連、スピンオフ「フィアー・ザ・ウォーキング・デッド」シーズン5~8に参加しているロン・アンダーウッド。彼は、ケヴィン・ベーコン主演の名作SFモンスター映画『トレマーズ』(1989)の監督でもある。そして脚本家2人は、他の人気ドラマを手がける新顔たち。女子高校生たちの殺人サスペンスドラマ「プリティ・リトル・ライアーズ」のマヤ・ゴールドスミスと、DCヒーロードラマ「ARROW/アロー」「THE FLASH/フラッシュ」のベン・スコロウスキ。2人がドラマのどの部分に力を入れたのかと想像するのも楽しい。

 エピソード・タイトルになった2人の主人公を演じた俳優たちも、このユニバースに初参加。ジョー役は、ドラマ「ブルックリン・ナイン-ナイン」シーズン1~8(201~2021)、『エクスペンダブルズ3 ワールドミッション』(2014)のテリー・クルーズ。イーヴィー役は、『ザ・プレデター』(2018)、『X-MEN:アポカリプス』(2016)のオリヴィア・マン。2人のコミカルな掛け合いや、オートバイに乗りながら一緒に歌を歌ったりする陽気な姿は、これまでの「ウォーキング・デッド」にはなかった雰囲気だろう。ちなみに2人が一緒に歌う歌は、2020年に死去したカントリーミュージック界初の人気黒人歌手チャーリー・プライドの1971年の大ヒット曲「キス・アン・エンジェル・グッド・モーニン」だ。

ADVERTISEMENT

“希望”を失わない人間たちの物語

 ストーリー面の特徴は、まず、本家シリーズを知らなくてもまったく問題ないこと。とは言っても、ジョーが交信相手に会いに行くという展開を見ると、「ウォーキング・デッド」シーズン10のユージーン(ジョシュ・マクダーミット)の交信相手は善人だったが、「フィアー・ザ・ウォーキング・デッド」シーズン2のアリシア(アリシア・デブナム=ケアリー)の船からの交信は問題だったな、などと思い出したりするのは、シリーズファンの習性だ。

 しかし、なんといっても第1話の魅力は、ウォーカー発生後の世界でも、希望を失わない人間たちを描いたことだろう。ジョーは夜明けを見て「まだ美しいものはある」と言い、イーヴィーは「絶望しそうな世界にも魔法はある」と言う。実際に世界が美しいかどうかはさておき、「そう思える気持ち」を持った人間たちなのだ。彼らの思いを反映して、彼らが「美しい」と言う時、彼らの目の前に広がる空は美しい。だいたい、イーヴィーのように、ヤギを見て「食べ物だ」と思わない人物は「ウォーキング・デッド」史上初だろう。

 そんな新たな世界を描きつつ、このユニバースの定番も忘れない。生き延びることばかりに執着していたジョーは、イーヴィーに「生存に固執して、人生を生きていない」と言われ、最後にはそれを認めるようになる。「ウォーキング・デッド」の定番通り、人間が生きていくとはどういうことなのか、なぜ生きるのかを問いかける物語にもなっているのだ。

 その一方で、ジョーの通信相手サンドラ(カースティ・ブライアン)のように、心を病んでしまった人がいることを描くことも忘れない。彼女の殺人は、最初は自己防衛のためだったのだろうが、棚に飾られた腕時計の数を見ると今は常習犯になっていることが分かる。2人がサンドラの住居や備品を奪わないのは、この世界の常識からするとちょっと意外だが、あの時点ではジョーはまだ大麻の影響下にあり、イーヴィーは性格的に地下が嫌いだろうと思うと納得がいく。

 そして、心に残るのはラストシーン。2人がヤギと一緒に遮るもののない道を歩いていく光景は、これまでの「ウォーキング・デッド」にはなかった清々しさ。今だからこういう光景を描きたい、そんな製作陣の心意気が伝わってくる。今後はどんな光景を見せてくれるのか、次のエピソードが楽しみだ。

「テイルズ・オブ・ザ・ウォーキング・デッド」はU-NEXTで独占配信中

(c)2022 AMC Film Holdings LLC. All Rights Reserved.

  • mixiチェック
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • ツイート
  • シェア
ADVERTISEMENT

おすすめ映画

ADVERTISEMENT

人気の記事

ADVERTISEMENT

話題の動画

ADVERTISEMENT

最新の映画短評

ADVERTISEMENT