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【完全ネタバレ】『プロジェクト・ヘイル・メアリー』徹底解説 小ネタ&裏話、原作にないオリジナル要素まとめ

 宇宙の彼方で力を合わせる地球人グレース(ライアン・ゴズリング)と、エイリアンのロッキーの友情を描く映画『プロジェクト・ヘイル・メアリー』が大ヒット公開中。ここでは、映画に登場するSF映画ファンが嬉しいイースターエッグや裏話、原作には無い映画オリジナルの要素を紹介する。(文・平沢薫)

※ご注意:本記事はネタバレを含みます。『プロジェクト・ヘイル・メアリー』をまだ観ていない方はご注意ください。

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【随所に詰まった名作SF映画愛】

 『プロジェクト・ヘイル・メアリー』には、1970年代や1980年代の名作SF映画の小ネタが随所に登場する。ここにも監督コンビ、フィル・ロードクリストファー・ミラーのSF映画愛が溢れている。

●スピルバーグ発案の『未知との遭遇』オマージュ

 主人公の中学校教師ライランド・グレースが、未知のエイリアンと出会い、意思疎通しようとする時にふと口ずさむメロディーは、スティーヴン・スピルバーグ監督の『未知との遭遇』(1977)に登場するフレーズ。この映画では、地球に到来した宇宙船がこの音を鳴らして、人類と意思疎通しようとする。グレースはジョークで、この音をハミングしたのだ。

なんと、このアイデアを出したのは、スピルバーグ監督自身だった。この裏話は、フィル監督&クリストファー監督が、ポッドキャスト番組「Happy Sad Confused」で語ったもの。2人が撮影開始前、スピルバーグ監督とこの映画の話をしていた時に、彼が「そうか、エイリアンは音で話すんだね、なら『未知との遭遇』の音を使ったらどうかな、面白いんじゃないか?」と言ったので、監督たちは「あなたがおっしゃるなら、それはOKってことですよね、口頭での契約も法的効力がありますよ」と答えて、使うことにしたのだそう。

●“ファントムゾーン”は『スーパーマン』が元ネタ

 ロッキーがグレースの宇宙船内で使う透明のパネルで囲った空間を作る時、グレースは透明パネルに顔を押し付けて「ファントムゾーン!」と言っておどける。これは『スーパーマン II/冒険篇』(1981)冒頭シーンのマネ。

 スーパーマンの惑星で、ゾッド将軍(テレンス・スタンプ)ら悪人3人が有罪判決を受け、ファントムゾーンに追放される時、透明の檻のような空間に閉じ込められ、顔が押し付けられたような映像が流れる。グレースはこのシーンをマネしている。

●ロッキーの長い指は『E.T.』そっくり?

 意図的ではないかもしれないが、ロッキーの長い指と、それがまっすぐではなく曲がっているところは、スピルバーグ監督の『E.T.』(1982)の宇宙から来たエイリアン=E.T.の長い指を連想させる。ロッキーは優秀なメカニックで、E.T.は子供っぽいので設定は違うが、どちらも悪意がなく、出会った地球人と仲良くなるところも似ている。

●ロッキーとエイドリアン

 グレースがエイリアンを「岩(ロック)のように見えるから」と“ロッキー”と名付け、彼の恋人の名前を、英語で“エイドリアン”と翻訳するのは、原作小説と同じ。これはシルヴェスター・スタローン主演の名作映画『ロッキー』(1976)の主人公とその恋人の名前だ。

画像は映画米公式Instagramのスクリーンショット

●ゴズリングの代表作『ラ・ラ・ランド』のポーズも

 グレースとロッキーが、宇宙船の中で地球の光景を映し出して楽しむ時の、両手を広げるポーズは、ゴズリング主演のミュージカル映画『ラ・ラ・ランド』(2016)を意識したものだろう。というのも、本作の公式Instagramが、ゴズリングとロッキーが『ラ・ラ・ランド』のポスターと同じポーズをしたパロディー画像をアップしているのだ。

 さらに注目は、ゴズリングの左手の指先のポーズ。『ラ・ラ・ランド』では左手の形がヘンだと話題になったが、このパロディーポスターではその形が修正されている。このポスターのメイキング動画も公開されており、ゴズリングはずっとこの形を修正したかったと語っている。

メリル・ストリープが声でカメオ出演

 グレースがロッキーの音声を英語に音声翻訳するとき、さまざま声を試す中で、女性の声を当てて「メリル・ストリープ、何でもできるな」と言うが、この時の声は実際にストリープ本人の声を使っている。

 実は、このセリフはゴズリングのアドリブ。このシーンの撮影時、監督コンビがゴズリングに、ストリープの声を使ったら面白いんじゃないかと提案したところ、ゴズリングがこのセリフ「メリル・ストリープ、なんでも~」と返答。そこで、このセリフを活かしつつ、ストリープのカメオ案が採用されることになった。この経緯は、監督コンビが Entertainment Weekley で証言している。

 そこで、本作のプロデューサーの一人、エイミー・パスカルが『ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書』(2017)などでストリープと仕事をしていたことから、彼女を通じてストリープに依頼し、声のカメオ出演が実現した。

●「ロッキーは、マークが嫌い」はゴズリングのアドリブ

 グレースがロッキーに、恋人がいたが、マークという男のために自分を捨てたと話すと、ロッキーが「ロッキーは、マークが嫌い」と言う。このセリフは、演じる2人が撮影現場で言ったアドリブで、マークという名前には元ネタがある。

 マークとは、この10年の間、ゴズリングのスタイリストをしているマーク・エイヴリーのこと。彼が撮影現場にいたので、ゴズリングが、グレースがロッキーに元カノの話をするシーンで、アドリブで「でも彼女は今、マークと付き合っているんだ」と言うと、ロッキーの声を担当するジェームズ・オルティスがすかさず「ロッキーは、マークが嫌い」と言い、それがハマったので本編で使われることになった。

 エイヴリー本人は「SYFY Wire」のインタビューで「こんなに素晴らしい形で自分の名前をあげてもらって嬉しいよ。これは今後、何年も語られるトリビアになるでしょう」と語り、この状況を楽しんでいる。

●4つの小型無人探査機の名前は「ビートルズ」のメンバー

 作中で言及はされないが、グレースの宇宙船に積まれた、データを地球に送るための4つの小型無人探査機に書かれた名前は、ジョン、ポール、ジョージ、リンゴ。つまり、人気ロックバンド「ビートルズ」のメンバーの名前だ。これは原作と同じ設定。映画のラスト付近、探査機が地球に向かって飛んでいくとき、ビートルズの楽曲「トゥ・オブ・アス」(1970)が流れる。

●ロッキーの宇宙船は『インターステラー』の超立方体に似ている?

 本作のレビューや感想には、クリストファー・ノーラン監督のSF映画『インターステラー』(2014)を思い出させるという意見が少なくない。それは、主人公が人類の未来を救うため遠く離れた惑星に向かう、というストーリーの共通点のせいもあるだろうが、ひょっとしたら、ロッキーの宇宙船のビジュアルのせいもあるかもしれない。

 ロッキーの宇宙船の直線の多い幾何学的な形状は、『インターステラー』で主人公クーパー(マシュー・マコノヒー)がブラックホールに突入した時に見る、五次元を三次元に翻訳したという設定の奇妙な格子状の超立方体空間を連想させるのではないだろうか。茶色系の色調も似ている。

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「原作にはない、映画オリジナル」も感動的!

 原作は上下巻の長編小説なので、映画では省略されている部分や、変更された部分は数多い。しかしその一方で、原作にはなく、映画オリジナルで加えられて、映画をさらに魅力的にしているシーンもある。その代表的なものをピックアップしてみよう。

●ストラットのカラオケシーン

 計画の責任者ストラットザンドラ・ヒュラー)がカラオケで歌うシーンは、映画のオリジナル。このシーンがあるから、ストラットが使命感だけではない、複雑な思いを抱えた人物になっている。

 実は、このシーンは原作だけでなく、脚本にも存在しなかった。撮影中のある日、ゴズリングが、ヒュラーが気分転換に鼻歌を歌っているのを聞いて感動し、映画でも歌って欲しいと懇願した。しかも、それは撮影の2日前。そこでヒュラーは、歌う曲は自分で選ぶという条件で、これを承諾。そして彼女が選んだ曲が、本編で歌う、ハリー・スタイルズの2017年のヒット曲「Sign of the Times」。彼女は歌詞もこのシーンにぴったりだと思って選んだそう。

●原作に登場しないカール

グレースの監視役だが彼と親しくなる、政府の一員らしいカールライオネル・ボイス)も映画オリジナル。原作では、グレースのラボは兵士2人が守っていて、そのうちの一人、スティーヴは荷物を運ぶのを手伝ってくれるが、それ以上は親しくならない。グレースはホームセンターへの買い物も、一人で行く。

 カールが登場するのは、グレースの性格を描くためだろう。原作はグレースの一人称で描かれているので、彼の思いもユーモア好きな性格もよくわかるが、映画では主人公が話し続けるという手法は使えない。そこで、グレースが自分の思いを話す相手として、カールが登場。彼との関係からグレースの陽気な性格もわかり、2人がホームセンターで一緒に買い物をしながら遊ぶなど楽しいシーンが増えた。

●ストラットがグレースの送信データを見る

 映画のラスト近く、地球にいるストラットが、グレースが小型無人探査機で地球に送った映像を見るが、このシーンも映画オリジナル。原作でもグレースがデータを地球に送るのは同じだが、小説は全編がグレースの一人称で描かれているので、その後の地球の状況は描かれない。地球が無事なことは、ロッキーが、地球の太陽が元の明るさに戻ったことが観測されたとグレースに報告し、それを聞いてグレースは地球が無事だと知る。

映画では、ストラットがグレースの送った映像を見て喜びの涙を流すシーンが描かれるので、観客は地球が無事なことを実感できるし、グレースが使命を達成して良かったという感動と、満足感がより強く味わえる。映画ならではの効果的な演出だ。

 このように『プロジェクト・ヘイル・メアリー』には映画製作者たちの熱い思いが盛り込まれている。2回目以降の鑑賞では、そんな部分にも着目すると、映画がもっと楽しめそうだ。

映画『プロジェクト・ヘイル・メアリー』は全国公開中

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