【ネタバレ解説】「ガス人間」オマージュまとめ 原作映画との共通点&違い

小栗旬、蒼井優ら豪華キャストが共演したNetflixオリジナルシリーズ「ガス人間」。自分自身をガス化できる人間が仕掛ける連続殺人事件を描いた本作は、1960年に公開された本多猪四郎監督、円谷英二特技監督による特撮映画『ガス人間第1号』をリブートしたもの。ストーリーこそ大きく異なるが、いくつもの原作オマージュが散りばめられている。ここでは、シリーズ全8話に見られるオマージュやイースターエッグをあらためて振り返ってみたい。
※ご注意:本記事はネタバレを含みます。「ガス人間」をまだ観ていない方はご注意ください。
登場人物の名前
最初にわかるオマージュが、登場人物たちの役名だ。小栗演じる刑事・岡本賢治と蒼井演じる報道記者・甲野京子という役名は、『ガス人間第1号』での三橋達也、佐多契子の役名とまったく同じ。職業も刑事、記者と同じである。
『ガス人間第1号』での京子は新聞の社会部に属する婦人記者であり、自ら車を運転する当時としては非常にアクティブな女性として設定されている。テレビのワイドショーに顔出しで出演し、報道局で陣頭指揮を執る「ガス人間」の京子と少し重なる部分がある。
佐野博士の名前
ガス人間による最初の被害者・佐野久伍教授(モーリー・ロバートソン)の名前は、『ガス人間第1号』で水野(土屋嘉男)をガス人間に改造してしまう佐野久伍博士(村上冬樹)と同じ。ガス人間が最初に殺害した相手というのも同じである。
何より謎の福祉施設ホワイトセンターでの仕事に従事し、人を人とも思わない態度で使い潰していた佐野教授と、『ガス人間第1号』で自分の研究のために多くの若者を犠牲にしていた佐野博士のエゴイスティックな思想は、ほぼ同一といっていい。
ヤクザの組の名前
ヤクザの大友三郎(中野英雄)と大友リキ(松浦祐也)親子が率いる暴力団「藤代会」は「春日組直系」。これは『ガス人間第1号』でガス人間の水野が執着するヒロイン・藤千代(八千草薫)の名前と、彼女が家元を務める日本舞踊の流派「春日組」から採られているのは間違いない。ただし、臓器売買など悪逆非道な行為を繰り返す藤代会と、芸に打ち込む藤千代の共通点はまったくないので、名前だけの小ネタだろう。
胸に手をあてるポーズ
「ガス人間」第1話の冒頭で、テレビのスタジオに入る京子が落ち着くために胸に手をあてるポーズをとる。これは『ガス人間第1号』で水野がガス人間になるときのポーズとまったく同じ。ジャケットの胸元に指先を揃えて入れるところまで同じであり、明確なオマージュである。
ポーズだけが同一かと思いきや、後に京子はガス人間(UTA)を操って復讐を実行していたことが判明する。つまり、胸に手をあてるポーズは、京子とガス人間が一心同体であることを示していたと考えることもできる。
藤川兄妹の部屋に飾られたポスター
動画配信者の藤川富士太(林遣都)&藤川華歩(広瀬すず)兄妹の部屋には、さまざまなホラー映画のビデオやDVDなどが並んでいるが、壁には『マタンゴ』(1963)、『幽霊屋敷の恐怖 血を吸う人形』(1970)、『HOUSE』(1977)などのポスターが貼られている。いずれも『ガス人間第1号』と同じく東宝のホラー・特撮映画である(『HOUSE』は東宝映像製作、東宝配給)。『ゴジラ』(1954)をはじめとする怪獣路線ではなく、大人をターゲットにしていた作品なのが共通している。
ライターでの爆発
強烈なオマージュが、ガス人間に狙われた富士太が華歩を助けるためにライターで自分の体に火を放って自爆するシーンだ。これは『ガス人間第1号』のラストで、藤千代がガス人間を葬り去るため、抱き合ったままライターで火を放って自爆するシーンへのオマージュである。火を放つ藤川富士太という名前も藤千代の名前を意識しているに違いない。
ただし、2つのシーンの意味合いは大きく異なる。藤千代の自爆は自分に狂おしいほどの愛情を注ぐガス人間を葬り去るためのもの。一方、富士太の自爆は愛する妹を助けるためのものであり、ほぼ真逆の意味合いといっていいだろう。
心中的なラスト
「ガス人間」では、京子とガス人間が同じ金庫室に入って爆発を起こして姿を消す。京子とガス人間になる前の堤田蓮は親子のような情愛で結ばれており、レンがガス人間になってから共犯者のような関係だった。
『ガス人間第1号』のラストは、前述のように藤千代がガス人間と抱き合ったまま自爆する。ガス人間になる水野は自分に偏執的な愛情を注いでおり、藤千代は水野から受け取った金で自分が望んでいた舞台を成就させた。ある意味、共犯者的な関係だと言える。いずれも「心中」のような結末だが、これも一つのオマージュなのかもしれない。
はみ出し者たちの愛の物語
『ガス人間第1号』のガス人間・水野はパイロットを志願したものの成就せず、心ならずもガス人間になってしまった男だ。藤千代は日本舞踊の家元だが零落しており、老いた鼓師(左卜全)と二人でひっそりと暮らしていた。ガス人間は彼女の望みをかなえる形で愛を届け、藤千代はそれを受け入れてともに絶命した。いわば社会のはみ出し者同士による歪んだ愛の形を描いた作品である。
「ガス人間」は、親に捨てられてホワイトセンターで育った京子と彼女を救おうとしてガス人間になってしまったレンの愛の物語といえる。富士太と華歩も社会の片隅に打ち捨てられた存在だったが、兄と妹として強い情愛を育んでいた。こちらも社会からはみ出してしまったもの同士の愛の物語だと言えるのではないだろうか。
ガスは形にはまらず、どこにでもはみ出していくもの。オマージュだけでなく、作品の根幹をしっかり押さえているからこそ、「ガス人間」は良質なリブート作になったのだろう。(文・構成:大山くまお)
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