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捕鯨問題の賛否を問うドキュメンタリー…『ハーブ&ドロシー』佐々木芽生監督の話題作

『ハーブ&ドロシー』シリーズの佐々木芽生監督
『ハーブ&ドロシー』シリーズの佐々木芽生監督

 ニューヨークのジャパン・ソサエティーで開催された「ジャパン・カッツ!」で上映された話題作『おクジラさま ふたつの正義の物語』について、佐々木芽生監督が7月15日(現地時間)取材に応じた。

【動画】『おクジラさま ふたつの正義の物語』予告編

 アカデミー賞受賞作『ザ・コーヴ』で取り上げられて以来、シーシェパードなど世界中の活動家や団体から非難の的となった、イルカやクジラの漁で知られる和歌山県太地町。本作は、そんな太地町の町民とシーシェパードのメンバーの両サイドを取材し、太地町とクジラの歴史をひもときながら、捕鯨問題の賛否にとらわれず、お互いの意見が共存できる可能性を探っていくドキュメンタリー。『ハーブ&ドロシー』シリーズの佐々木芽生が監督を務めた。

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 『ザ・コーヴ』で大打撃を受けた太地町の漁師や町民は、今どのように仕事をしているのか。佐々木監督によると「太地勇魚(いさな)組合があって、勇魚の人たちは9月~3月まで追い込み漁、それ以外の月は別の漁をしています。ただ、町では今の三軒町長が進める『森浦湾くじらの海』の構想があり、彼は世界一のクジラの研究施設を作ると話しています」。時代によってクジラを食す時、娯楽にする時、さらに学術研究の対象にする時もあるようだが、常に太地の町はクジラと共に生きてきたといえる。

 鶏や豚を殺すことも、クジラを保護することも、全て人間のエゴではないのかとの問いに佐々木監督は「人間と動物の関係性の違いがあって、西洋ではキリスト教とギリシア哲学に基づいた人間中心主義があると思います。神の形に似せた人間を創り、その下に動物や草木などを創造したのが聖書の創世記です。さらにギリシア哲学のアリストテレスは動物には感情はあるけれど、理性はないと言っていて、優れたものが劣ったものを支配して良いという考えもあります。これらが西洋の人間中心主義という考え方になります。でも日本は仏教と神道の考え方で、人間というのは自然界の一部で、動物も人間もみな同じという考え方です。西洋と日本では動物や自然に対する考え方が全く違うため、それが衝突して、牛や豚は良いのにクジラはダメとか、なぜクジラなどの知能の高い動物を殺すのかということになります」と回答。お互いの背景を知る大切さを訴えた。

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 シーシェパードが太地の漁師に金を払って、イルカを逃がすお願いをする映像については「これはアメリカ的な考えで、お金で解決できると思っています。一方、日本人は寄付金をもらうのに抵抗があります。ただこれは、グローバリズムとローカリズムの対立なんです。今作を描くうちに、太地や捕鯨の問題だけではなくて、もっと普遍的なテーマがあると思いました。2010年に1年間取材した後、2011年に震災があり、2014年に現場に戻ったとき、みんなは『ザ・コーヴ』を忘れていて、今さらこの話はどうなのかと思いました。でも2010年の取材を見直したとき、まだ普遍的なテーマがここにあると思いました。なぜなら、そんなグローバリズムとローカリズムの対立が、ブレグジット(英国のEU離脱)や米国の大統領選にも現れていたからです」と強調した。

 イルカとクジラの種類は現在約80種類で、実際に太地で獲られていたのは7種類、それも全て絶滅危惧ではない種類だ。「外国人はそれを知りません。実際に80種類いて、クジラとイルカは同じ鯨類です。そのクジラの中でもシロナガスクジラは絶滅危惧種ですが、太地で獲られるゴンドウクジラはたくさんいます。ただし、自然管理において日本の水産庁のやり方が海外にはあまり明確でないこともあり、それに対して海外からの不信感ができています」と問題点を指摘する佐々木監督。最後にアメリカの観客に「アメリカでは、中絶や銃規制の問題にしても賛否両論が必ずあるのに、なぜか捕鯨問題には反対しかありません。だから今作でさまざまな考え方があることを示し、見えなかった視点を提供したいのです」と言葉を残した。(取材・文・細木信宏/Nobuhiro Hosoki)

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