フェティシズムの極致。最大の収穫はカトキハジメの廃墟バトル

森本晃司による夢幻的OPで幕を開け、森田修平『九十九』×大友克洋『火要鎮』×安藤裕章『GAMBO』×カトキハジメ『武器よさらば』で構成されたオムニバス・アニメ。4作品に通底するのは、この国の刹那の平和=安息の形だろう。『MEMORIES』(95)の熱量と毒には欠けるが、物語よりも動きよりも、モノへの偏愛に満ちている。着物、火、妖怪、メカなど素材の質感にこだわるフェティシズムこそ、日本のアニメの真骨頂という企図から、“海外映画祭向け”というキーワードはちらつく。
絵巻物という横スクロールの古典フォーマットで昭和初期の時代劇映画を再現し、禍々しい災の大スペクタクルを組み合わせた『火要鎮』は、日本的カルチャーをアニメ上で融合させ、様式化することに成功した野心的な実験作である。
収穫は『武器よさらば』だった。複数のキャメラ・アイによって恐る恐る進入する廃墟の近未来東京。無人戦車と傭兵の戦いを通し、ヴァーチャルに戦争を体感させる技に冴えを見せる。この演出で長編が観てみたい。
ジブリの「震災と零戦」の陰で、静かに同時公開された「大火と戦車」を見逃してはならない。