時代に流されない仕立て屋の職人魂

前作「ぶどうのなみだ」の非現実的過ぎる無国籍な西洋趣味にはついていけなかったものの、今回は神戸が舞台ということもあってか、三島監督のレトロなオシャレ感覚が違和感なく作品の世界に溶け込んでいる。
物語の主軸はファストファッションの時代に逆行するような仕立て屋の職人魂。本当に良い服は流行に左右されることなく、着る人の人生に寄り添い歩んでいく。モノを大切にすることの精神を描くと共に、モノを作る側と使う側の幸福な関係を模索する作品だと言えよう。
映像的にもドラマ的にも極めて端正な映画だが、その生真面目さがどこか浮世離れした理想主義にも感じられてしまう。そこが少なからず食い足りない点だ。